2015/10/26

福島第1原発事故 救援4割、被ばく上限 1ミリシーベルト以上 3000人調査

2015年10月26日 毎日新聞
http://mainichi.jp/shimen/news/20151026ddm001040199000c.html


 



東京電力福島第1原発事故の際、原発周辺で住民の救援活動などに従事した自衛隊員や警察官、消防隊員約3000人のうち、4割 弱が約20日間で一般住民の線量上限(年1ミリシーベルト)以上被ばくしていたことが政府の調査で分かった。警察官らについては緊急時は積算で「100ミ リシーベルト」が上限と定められており、全員がこれ以下にとどまった。一方、警察官と同様に現場で避難誘導を指示する市町村職員などの地方公務員や、バス 運転手については一般と同じ線量が限度として適用されており、今回の結果が被ばく対策に影響を与える可能性がある。【酒造唯】

原発敷地内で事故対応した作業員らの被ばく線量は公表されているが、周辺の被ばく線量の全容が明らかになるのは初めて。政府は26日に、地方公務員などの被ばく対策を検討する作業部会を開き、この調査結果を今後の被ばく低減対策に活用する方針だ。

調査対象は、事故翌日の2011年3月12日から同31日の間に、住民の避難指示が出された原発の半径20キロ圏内で避難誘導 や救助捜索、けが人の搬送などに携わった自衛隊員約2800人と、警察官・消防隊員約170人。全員が全面マスクや防護服を着用していたとして内部被ばく はゼロと想定し、個人線量計のデータ(外部被ばく)だけを集計した。

その結果、自衛隊員の62%は1ミリシーベルト未満だった一方、1ミリシーベルト以上は38%で、最高は10・8ミリシーベルトだった。警察官・ 消防隊員は12%が1ミリシーベルト以上で、最高は2・2ミリシーベルトだった。これらを合わせると36%が1ミリシーベルト以上被ばくしていたことにな る。省令などでは、警察官や消防隊員らについて緊急時は「100ミリシーベルト」が上限とされているが、これを上回った人はいなかった。

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■解説
◇避難体制の空白生まない対策を
福島事故で、周辺住民の救援活動に従事した自衛隊員らのうち、4割弱が一般の被ばく上限(年1ミリシーベルト)以上で被ばくしていた実態は、原発の避難体制の「空白」をあぶり出した。

地元市町村職員などの地方公務員や、バス運転手は自衛隊員らと同様、住民の避難誘導に欠かせない存在にもかかわらず、緊急時も一般住民と同じ「1ミリシーベルト」が適用されている。

再稼働した九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)で、同県と住民避難に携わるバス会社は、運転手の被ばく上限を「1ミリシーベルト」とする協定を交わしているが、この制限で活動不能になれば住民避難の足かせになりかねない。

政府は、放射線量の高い場所での活動を自衛隊や警察官らが担い、地方公務員らは低い場所で活動するなどの「役割分担」で、1ミリシーベルト未満に抑えることは可能と説明する。

しかし、福島事故が示したように線量の予測は不可能。風向きなどの自然環境で線量は常に変わりうる。政府は新基準を満たした原発については順次再稼働させる方針だが、被ばく低減策の徹底を進めるべきだ。

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■ことば
 ◇被ばく線量限度
放射線から人体を守るため、国は国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告を採用し、一般の人については年間1ミリシーベルトを線量限度としてい る。原発作業員については平時は「年50ミリシーベルト」「5年間100ミリシーベルト」、緊急時は積算で「100ミリシーベルト」(来春「250ミリ シーベルト」へ引き上げ予定)を上限としている。

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