2015年10月26日 毎日新聞
http://mainichi.jp/shimen/news/20151026ddm004040010000c.html
東京電力福島第1原発事故による住民避難の全容を明らかにしようと、支援や調査に取り組む研究者、弁護士、ジャーナリストらが 「原発避難白書」(人文書院、3240円)を刊行した。国が正確に調べていない避難者数、打ち切りを急ぐ東電賠償の実態など、避難者の視点から原発避難と は何かを重層的に捉えた。
関西学院大災害復興制度研究所▽東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)▽福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)の3者が編集し、ジャーナリスト、研究者、弁護士、NGO関係者ら約20人が寄稿した。
復興庁は毎月、都道府県からの報告を集計して東日本大震災と原発事故による避難者数を発表している。しかし、避難者の定義や調査方法を明確にしておらず、漏れた自主避難者も多いとみられる。国による避難実態の把握は不十分だとの問題意識から、白書の編集がスタートした。
白書は国が原発事故後に被ばく限度を年間20ミリシーベルトに引き上げ、被害者の認定や賠償範囲を限定した構造を記した。その上で被害地域ごとの賠償や支援内容をまとめ、避難者16人のインタビューを収録した。避難先の都道府県ごとに避難者や民間支援の状況も載せた。
寄稿した高橋征仁・山口大教授(社会心理学)は、自主避難者に対する独自調査結果を基に「過剰な不安と無知による『放射線恐怖症』との見方は誤り だ」と書いた。白書を発案したSAFLANの河崎健一郎弁護士は「汚染は今も変わらないのに、実態に合わない国の施策が避難者を追い込んでいる。よりよい 施策を求める基礎資料にしてほしい」と話す。
発刊記念シンポジウムが11月3日午後3時から東京都千代田区九段南1の千代田会館で開かれる。無料で定員50人。
問い合わせは早稲田リーガルコモンズ法律事務所(03・6261・2880)。
【日野行介】
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