厚生労働省は、東京電力福島第1原発事故の収束作業で被ばくした後、白血病を発症した男性作業員の労災を認定した。
被ばくと白血病との因果関係は明らかではないとしながらも、労災認定基準を満たしており「作業が原因で発症した可能性が否定できない」と判断した。
原発事故後の作業による被ばくで、がんが労災認定されたのは初めてだ。因果関係の厳密な立証を申請者に求めず、労働者の立場から判断した姿勢は評価できよう。
ただ、収束作業をめぐっては被ばく線量の管理などが不十分だったとする声が多い。厚労省は業者に対し、安全管理をあらためて徹底させる必要がある。
今後増えるとみられる労災申請にも真摯(しんし)に対応するべきだ。
作業員は2011年11月~13年12月の間に1年半、複数の原発施設で勤務した。うち12年10月~13年12月は第1原発で原子炉建屋カバーの設置工事などに従事した。
白血病の労災認定は年間被ばく量が5ミリシーベルト以上で、被ばくから1年以上経過していることが基準となっている。作業員の累積被ばく量は19・8ミリシーベルト、第1原発では15・7ミリシーベルトと基準を超えていた。
認定は一歩前進ではある。
問題は、多重下請けが常態化し、実際の現場では安全管理がずさんだったとの指摘があることだ。
三つのがんを発症したとして労災申請中の札幌の男性は、線量の上限を超えないよう線量計を外して作業したこともあったと話す。放射線管理手帳に被ばく線量が記されていない人もいたという。
原発事故後、被ばくにより病気になったとして労災申請した人は、認定された男性以外にもいる。正確な被ばく線量が把握できない以上、認定の可否を杓子(しゃくし)定規に判断するのは避けるべきだ。
原発事故後の作業では約2万人が5ミリシーベルト以上被ばくした。廃炉まで30~40年かかるとされ、労災申請は今後増える可能性がある。制度を知らない人も多い。個々の作業員への周知が欠かせない。
解せないのは、白血病の労災認定基準が年間5ミリシーベルトなのに、原発作業員の年間被ばく線量の上限がその10倍の50ミリシーベルトである点だ。
厚労省は「5ミリシーベルトを超えれば白血病が発症するということではない」とする。だが、これでは労災を引き起こす可能性がある危険な労働環境の存在を、厚労省自身が認めていることになってしまう。
防護策向上を含め、作業員の健康を置き去りにしてはならない。