原発事故の作業員が白血病 初の労災認定
2015年10月20日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151020/k10010276091000.html
東京電力福島第一原子力発電所の事故の収束作業などにあたった当時30代の男性作業員が白血病を発症したことについて、厚生労働省は被ばくしたことによる労災と認定し、20日、本人に通知しました。4年前の原発事故に関連してがんの発症で労災が認められたのは初めてです。
労災が認められたのは、平成23年11月からおととし12月までの間に1年半にわたって各地の原子力発電所で働き、福島第一原発の事故の収束作業などにあたった当時30代後半の男性作業員です。
厚生労働省によりますと男性は、福島第一原発を最後に作業員をやめたあと、白血病を発症したため労災を申請したということです。白血病の労災の認定基準は、年間5ミリシーベルト以上被ばくし、1年を超えてから発症した場合と定められていて、厚生労働省の専門家による検討会で被ばくとの因果関係を分析してきました。その結果、男性はこれまでに合わせて19.8ミリシーベルト被ばくし、特に、福島第一原発での線量が15.7ミリシーベルトと最も高く、原発での作業が原因で発症した可能性が否定できないとして労災と認定し、20日、本人に通知しました。
厚生労働省によりますと、原発作業員のがんの発症ではこれまでに13件の労災が認められていますが、4年前の原発事故に関連して労災が認められたのはこれが初めてです。
労災申請 今後増える可能性
厚生労働省によりますと、福島第一原発の事故後、被ばくによる労災は今回の件以外に10件が申請されていて、このうち7件では労災は認められませんでしたが、3件は調査が続いています。福島第一原発で事故からこれまでに働いていた作業員は延べおよそ4万5000人で、年間5ミリシーベルト以上の被ばくをした人は2万1000人余りに上っていて、今後、労災の申請が増える可能性もあります。
専門家「今後も被ばく量に注意」
今回の労災認定についてチェルノブイリ原発の事故の際、被ばくの影響を調査した長崎大学の長瀧重信名誉教授は「労災の認定基準は、労働者を保護するために僅かでも被ばくをすれば、それに応じてリスクが上がるという考え方に基づいて定められていて、今回のケースは年間5ミリシーベルト以上という基準に当てはまったので認定されたのだと思う。福島第一原発での被ばく量は15.7ミリシーベルトとそれほど高くはないので、福島での被ばくが白血病の発症につながった可能性はこれまでのデータからみると低いと考えられるが、今後も、作業員の被ばく量については、十分注意していく必要がある」と話しています。
原発事故:白血病の作業員に初の労災認定
2015年10月20日 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20151021k0000m040081000c.html
厚生労働省は20日、東京電力福島第1原発事故の廃炉作業に従事し、血液のがんである白血病にかかった40代男性の労災を同日 付で認定したと発表した。第1原発事故後の作業で被ばくした作業員のがん発症で労災を認めたのは初めて。原発事故から今年8月末までに福島第1原発で働い た作業員は4万人を超えているが、廃炉の完了は見通せない状況で、被ばくに伴う労災申請が今後増加する可能性がある。
厚労省によると男性は2012年10月〜13年12月、建設会社の社員として第1原発で原子炉建屋カバーや廃棄物焼却設備の設 置工事などに従事。作業中は防護服や鉛ベストを着用していたが、体調を崩し、血液のがんである白血病と診断された。男性は別の原発を含めて約1年6カ月間 原発で作業し、累積の被ばく線量は19.8ミリシーベルト(第1原発だけでは15.7ミリシーベルト)。現在は通院治療中という。
厚労省は、白血病に関する原発労働者の労災認定基準について、1976年に「年5ミリシーベルト以上で、被ばくから発症まで1 年超経過していること」と定めた。福島労働局富岡労働基準監督署は男性の労災申請を受けて、作業内容などを調査。放射線医学の専門家らで作る厚労省の検討 会の意見を踏まえ、認定基準を満たしていると判断した。男性には医療費や休業補償が支払われる。
今回の認定について、厚労省は「被ばくと白血病の因果関係は明らかではないが、労働者補償の観点から認定した」としている。
厚労省や東京電力によると、事故後に第1原発で働いた作業員は今年8月末時点で4万4851人おり、累積の被ばく線量は平均約12ミリシーベルト。このうち約47%の2万1199人が、白血病の労災認定基準の年5ミリシーベルトを超えているという。
事故後に第1原発で働いた作業員でがんを発症し労災を申請したのは、今回認められた男性以外に7人いる。このうち3人は労災が認められず、1人が自ら申請を取り下げ、残る3人は審査中だという。
今回の認定について、東電は20日、「労災認定されたのは協力企業の作業員で、詳細をコメントできる立場ではない。今後も作業環境の改善に努める」とのコメントを出した。【古関俊樹、関谷俊介】
◇原発労働者の労災認定基準
厚生労働省は原発労働者を含む放射線業務従事者について、労働安全衛生法に基づく被ばく線量の上限(年50ミリシーベルトかつ5年100ミリシー ベルト)とは別に、放射線障害による疾病ごとの労災認定基準を設定。白血病以外のがんでは、悪性リンパ腫で「年25ミリシーベルト以上」、食道がんや胃が んは「100ミリシーベルト以上」などとしている。原発労働者の労災認定は、福島第1原発事故以外でこれまでに13人(白血病6人、悪性リンパ腫5人、多 発性骨髄腫2人)いる。
原発事故後の被曝、初の労災認定 白血病の元作業員男性
2015年10月20日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASHBJ7DNSHBJULBJ014.html
厚生労働省は20日、東京電力福島第一原発事故後の作業で被曝(ひばく)した後に白血病になった元作業員に対し、労災を認定したと発表した。原発事故への対応に伴う被曝と作業員の疾病に一定の因果関係があるとして労災が認められるのは初めて。被曝を伴う作業は長期間続き、被曝に伴う労災申請の増加が予想される。
労災が認められたのは北九州市在住の男性(41)。男性によると、2012年から13年まで、東京電力の協力企業の作業員として、3号機や4号機周辺で、構造物の設置や溶接の作業に当たり、14年1月に急性骨髄性白血病と診断された。累積の被曝線量は福島第一原発で約16ミリシーベルト、定期点検の工事で12年に約3カ月間働いた九州電力玄海原発で約4ミリだった。
男性の労災申請を受けた富岡労働基準監督署(福島県)が業務内容や被曝実態を確認し、被曝の専門家らで構成する厚労省の検討会で被曝と白血病の因果関係を検討、「業務上(業務由来)」と結論づけた。これを受け同労基署が20日付で労災と認定した。医療費と休業補償が支払われる。
1976年に定められた国の放射線業務従事者の労災認定基準では白血病の場合、年5ミリシーベルト以上被曝し、最初の被曝を伴う作業から1年超経って発症した人は、白血病を引き起こす他の要因の影響が排除できれば労災が認められる。
厚労省は20日の会見で、「今回の認定により科学的に被曝と健康影響の関係が証明されたものではない。『年5ミリ以上の被曝』は白血病を発症する境界ではない」とした。白血病の認定基準については「労災保険の精神に基づき、労働者への補償に欠けることがないよう配慮し、また、76年当時の一般公衆(住民)の被曝限度が年5ミリだった点も考慮して決まった」と説明した。福島第一原発事故の対応にあたった後、被曝と関係する病気になった人の労災申請は今回を含め8件。3件は不支給、1件は本人が取り下げ、3件は調査中で、がんの種類など詳細は明らかにされていない。
東京電力によると、事故から今年8月末までに福島第一原発で働いた約4万5千人のうち、約2万1千人は累積被曝量
が5ミリを超え、20ミリ以上も9千人を上回る。今年4月から8月末までの5カ月間に働いた約1万5千人でみても、約2200人が5ミリ超の被曝をした。現場では被曝を伴う作業が長期にわたって続き、労災申請が増える可能性がある。(大岩ゆり)
「福島で働いたこと悔いない」 被曝で労災認定の作業員
2015年10月21日 朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/ASHBN6K42HBNUGTB00H.html?rm=506
厚生労働省は20日、東京電力福島第一原発事故後の作業に従事し、白血病になった元作業員に、労災を認定したと発表した。原発事故への対応に伴う被曝(ひばく)と疾病に一定の因果関係があるとして労災が認められたのは初めて。認定された北九州市の男性(41)は朝日新聞の取材に「他の作業員が労災認定を受けられるきっかけになればうれしい」などと語った。
1976年に定められた放射線業務従事者の労災認定基準では白血病の場合、年5ミリシーベルト以上被曝し、最初の被曝を伴う作業から1年超経って発症した人は、白血病を引き起こす他の要因の影響が排除できれば労災が認められる。
厚労省は20日の会見で、「今回の認定により科学的に被曝と健康影響の関係が証明されたものではない。『年5ミリ以上の被曝』は白血病を発症する境界ではない」とした。白血病の認定基準については「労災保険の精神に基づき、労働者への補償に欠けることがないよう配慮し、また、76年当時の一般公衆(住民)の被曝限度が年5ミリだった点も考慮した」と説明した。
元作業員の男性は20日午前、労働基準監督署から労災認定の知らせを電話で受けたといい、「ほっとした」と話した。急性骨髄性白血病の診断を受けたのは2014年1月。福島第一原発から戻った約2週間後の健康診断でわかった。真っ先に3人の子どもと妻のことが頭に浮かんだ。「被曝が原因とは考えなかった」という。抗がん剤の治療で免疫力が落ち、重い感染症で一時は危篤状態に陥った。家族のために「死んでたまるか」と自らを鼓舞した。水を一口飲むだけでも吐き気がするなか体力をつけるため、みそ汁1杯を30分かけて飲んだこともあった。
現在、病状は落ち着き、検査でがん細胞が検出限界以下の「寛解」状態になったが、再発の恐れは消えず、本職の溶接の仕事に復帰できるかもわからない。それでも男性は「被災地で何か役に立てればという気持ちで福島行きを決めた。後悔はしていない」と話す。
知人からは、原発で長年働いた後に白血病になった元作業員が、勤務先から「(業務と白血病には)因果関係がない」と労災申請を断られた、という話を聞いた。「自分はラッキーだった。がんになった他の原発作業員が労災認定を受けられるきっかけになればうれしい。がんになった福島の人がもしいるのなら、ちゃんと補償を受けられるよう願っている」と語った。
福島原発「事故後作業で白血病」、初の労災認定
厚労省「因果関係の否定できず」
2015年10月20日 日本経済新聞http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG20HBA_Q5A021C1CR8000/
厚生労働省は20日、東京電力福島第1原子力発電所事故後の作業に従事し、白血病を発症した40代男性について「被曝(ひばく)と疾病の因果関係が否定できない」として労災認定したと発表した。同原発の事故後の作業を巡って、白血病を含むがんで労災認定が認められたのは初めて。
厚労省や東電などによると、労災が認められたのは40代前半の元作業員。2011年11月~13年12月の間に1年半、複数の原発で放射線業務に従事し、うち12年10月~13年12月は福島第1原発で原子炉建屋のカバーや廃棄物焼却設備の設置工事に当たっていた。作業時には防護服を着用していたという。
男性の業務全体の累積被曝量は19.8ミリシーベルトで、福島第1では15.7ミリシーベルトだった。その後、白血病を発症し、14年3月に労災申請した。現在、通院治療を続けている。
厚労省は13日に専門家による検討会を開き、国の認定基準に照らして労災に当たるとの意見で一致。20日に富岡労働基準監督署(福島県いわき市)が労災を認定した。男性には医療費全額と休業補償が支給される。
放射線被曝による白血病の労災認定基準は1976年に定められ、「被曝量が年5ミリシーベルト以上」かつ「被曝開始から1年を超えてから発症し、ウイルス感染など他の要因がない」とされている。
厚労省は「労働者補償の観点から業務以外の要因が明らかでない限り、基準を満たせば認定してきた。科学的に、年5ミリシーベルトを超えると白血病を発症するというわけではない」としている。
厚労省によると、これまでに、福島第1での作業後に被曝と関連する疾病を発症したとして、労災申請したのは今回のケースを含めて8件。うち3件は不支給となり、1件は取り下げ、3件は調査中だという。
東電によると、福島第1では現在、1日平均約7千人が働いている。年5ミリシーベルトを超える被曝をした作業員は14年度に6600人に上り、増加傾向にあるという。
原発で重大な事故が起きた際に緊急作業に当たる作業員の被曝線量の上限は100ミリシーベルトとされているが、作業員が働ける期間を長くするため、来年4月以降は250ミリシーベルトに引き上げられる。
被曝線量が累積100ミリシーベルトを超えると発がんリスクがわずかに上昇するとされる。100ミリシーベルト以下の低線量被曝が健康に与える影響はよく分かっていない。
福島第1の事故後の作業以外で、原発で働いて白血病や悪性リンパ腫などのがんを発症し、労災認定された人はこれまでに13人いる。
福島事故後被ばくで初の労災認定 白血病発症の元作業員
2015年10月21日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015102190071957.html
厚生労働省は二十日、東京電力福島第一原発事故後の作業で被ばくした後に白血病になった元作業員に、労災保険を認定した。事故収束作業に伴う白血病の発症で労災が認められたのは初めて。
厚労省によると、労災が認められたのは発症時三十代後半だった男性。建設会社の社員として二〇一一年十一月~一三年十二月、複数の原発で作業した。一二年十月以降の一年一カ月間は福島第一を担当。原子炉建屋に覆いを造ったり、使用済みの防護服などを焼却する施設を建設した。
男性は一三年十二月に福島第一を去った後に体の不調を感じ、白血病と診断され労災申請した。現在は通院治療している。
白血病の労災が認められるには、年五ミリシーベルト以上を被ばくし、作業開始から発症まで一年以上あることが基準。男性の累積被ばく線量は一九・八ミリシーベルトで、福島第一での線量は大半の一五・七ミリシーベルトを占めた。
福島県の富岡労働基準監督署は、厚労省の専門家による検討会の見解を聴いた上で、福島第一での被ばくが白血病の大きな原因になった可能性があると判断した。男性には医療費や休業補償が支払われる。
厚労省は「労災認定は補償が欠けることがないよう配慮した行政上の判断で、科学的に被ばくと健康影響の因果関係を証明したわけではない」としている。
事故前に全国の原発で白血病や悪性リンパ腫などの労災を認められた作業員は十三人。福島第一の収束作業で白血病も含むがんを発症したとする申請は八件。今回の男性を除く七件の内訳は三件が不支給、一件が取り下げ、三件が調査中。
福島第一原発での作業をし、白血病となった男性が初めて労災認定されたことに、作業員からは「認められてよかった」との声が上がったが、収束作業の現場が被ばくとの闘いであることは変わりない。他のがんなどの労災認定には高いハードルが設けられていることなど、作業員を取り巻く環境は課題が山積している。
白血病の認定条件の一つは「年五ミリシーベルト以上の被ばく」。東電のまとめによると、事故発生後、福島第一での作業に関わって累積で五ミリシーベルト以上被ばくした人は二万人強いる。二〇一一年度だけで一万人以上が五ミリシーベルト超被ばくしていることなどから、「累積五ミリシーベルト以上」の二万人強の多くが、「年五ミリシーベルト以上」という条件に当てはまるとみられる。
仮に白血病になった場合、救済の道が開けたことは安心材料になる。ただ、胃がんなどでは明確な基準が定まっておらず、一〇〇ミリシーベルト以上の被ばくが認定の一つの目安とされるなど、白血病に比べ厳しい運用がされている。
技術者の作業員は「がんになるのでは、と不安になることもある。どうすれば認定されるのか、決めてほしい」と話した。別の作業員も「福島第一で命をかけて働いている。(国は)家族のためにも救済側に立ってほしい」と訴えた。
胃など三カ所のがんになった元作業員は、高線量の作業をしたが、記録上の線量が一〇〇ミリシーベルトに満たないなどとして労災が認められなかった。この男性を含め、線量計を低線量の場所に置いて作業していたと証言した作業員は少なくない。その場合、実際の被ばく線量は記録より高くなる。
現場では、がれきが除去されるなどして当初よりは線量が下がった。現在はタンク増設や敷地内の舗装が中心のため、作業員の被ばく線量も全般的には低めで推移している。
だが今後、廃炉作業は原子炉へと近づく。ベテラン作業員は「来年はもっと高線量の作業が増える。がんになる人が増えたら、福島第一に来なくなる人が出てくるかもしれない」と懸念した。 (片山夏子)
<東電の広報担当者の話> 作業員の労災申請や認定状況について当社はコメントする立場にない。今後も作業環境改善に取り組み、被ばく管理を徹底していく。
(東京新聞)
福島原発「白血病」作業員に労災認定の波紋 海外では「巨額訴訟への道開く」と大注目
2015/10/21
厚生労働省は2015月10月20日、東京電力福島第1原発の事故後の作業に従事し、後に白血病を発病した元作業員の男性(41)に対して、労災を認定したと発表した。業務と発病との関係が否定できないというのがその理由だ。
厚生労働省は、労災認定で「科学的に被ばくと健康影響の因果関係が証明されたものではない」とも説明しているが、すでに国外では「日本政府は福島原発に関連したがんの最初の事例を確認した」などとして大きな注目を集めている。
福島第1原発で15.7ミリシーベルト
厚労省の発表によると、男性は2011年11月~13年12月の間に1年6か月にわたって複数の原発で作業員として働き、そのうち12年10月~13年12月の期間で1年1か月にわたって福島第1原発で原子炉建屋を覆うカバーの取り付けなどに携わった。累積の被ばく線量は19.8ミリシーベルトで、そのうち第1原発で被ばくしたのは15.7ミリシーベルトだった。
厚労省の発表では、
「がんに対する約100ミリシーベルト以下の低線量の被ばくの影響は他の要因に隠れてしまうほど小さく、健康リスクの明らかな増加を証明することは難しいと国際的に認知されている」
と、100ミリシーベルト以下の被ばくと、がんとの関連は証明が難しいとする従来の立場を「前置き」しながら、労災認定のプロセスについて
「労働者への補償の観点から、労災の認定基準を定め、これに合致すれば、医学検討会の協議を経たうえで、業務以外の要因が明らかでない限り、労災として認定することとしている」
と説明。この白血病の「認定基準」は1976年に定められ、(1)年に5ミリシーベルト以上の被ばく(2)被ばく開始後1年以上経過してから発症、という2つの条件を定めている。この男性が2条件を満たし、原発での作業以外の要因が見当たらないとして労災認定に至ったことになる。
労災認定でも、厚労省「科学的に被ばくと健康影響の因果関係が証明されたものではない」
一方で厚労省は
「白血病の労災認定基準は、年間5ミリシーベルト以上の放射線被ばくをすれば発症するという境界を表すものではなく、労災認定されたことをもって、科学的に被ばくと健康影響の因果関係が証明されたものではない」
とも説明している。
要するに、
――認定基準を満たし、原発作業以外の積極的な要因は見当たらないので労災認定したが、だからと言って被ばくと健康影響の因果関係が証明されたわけではない――
と言いたいようだが、分かりにくい説明だ。
国外でもこの労災認定のニュースは大きく報じられている。特に、今後作業員の発病が増えるリスクを指摘するものが多い。AP通信は
「この男性の被ばく量は、広く知られている原発作業員の制限値を下回っていたため、今回の事例は、今後発生するがんの事例の警告になり得る」
と報じている。作業員の年間の被ばく限度は50ミリシーベルトだ。
CNNは、
「これは国際原子力機関(IAEA)にとって大きな打撃になる。IAEAは15年9月に、事故による放射線被ばくが原因の識別可能な健康への影響はないだろうと言っていた」
とするグリーンピースのコメントを引用。米国のABCテレビは労災については触れず、
「日本政府は福島原発に関連したがんの最初の事例を確認した」
として、
「専門家は、今回の件が巨額訴訟への道を開くことになるだろうと指摘している」
と報じた。
原発事故を理由に一部の日本水産物を輸入禁止にしている韓国では、共同通信を引用しながら淡々と伝えているメディアがほとんどだ。
原発被ばく労災 安全管理徹底が重要だ
10月22日 北海道新聞社説
厚生労働省は、東京電力福島第1原発事故の収束作業で被ばくした後、白血病を発症した男性作業員の労災を認定した。
被ばくと白血病との因果関係は明らかではないとしながらも、労災認定基準を満たしており「作業が原因で発症した可能性が否定できない」と判断した。
原発事故後の作業による被ばくで、がんが労災認定されたのは初めてだ。因果関係の厳密な立証を申請者に求めず、労働者の立場から判断した姿勢は評価できよう。
ただ、収束作業をめぐっては被ばく線量の管理などが不十分だったとする声が多い。厚労省は業者に対し、安全管理をあらためて徹底させる必要がある。
今後増えるとみられる労災申請にも真摯(しんし)に対応するべきだ。
作業員は2011年11月~13年12月の間に1年半、複数の原発施設で勤務した。うち12年10月~13年12月は第1原発で原子炉建屋カバーの設置工事などに従事した。
白血病の労災認定は年間被ばく量が5ミリシーベルト以上で、被ばくから1年以上経過していることが基準となっている。作業員の累積被ばく量は19・8ミリシーベルト、第1原発では15・7ミリシーベルトと基準を超えていた。
認定は一歩前進ではある。
問題は、多重下請けが常態化し、実際の現場では安全管理がずさんだったとの指摘があることだ。
三つのがんを発症したとして労災申請中の札幌の男性は、線量の上限を超えないよう線量計を外して作業したこともあったと話す。放射線管理手帳に被ばく線量が記されていない人もいたという。
原発事故後、被ばくにより病気になったとして労災申請した人は、認定された男性以外にもいる。正確な被ばく線量が把握できない以上、認定の可否を杓子(しゃくし)定規に判断するのは避けるべきだ。
原発事故後の作業では約2万人が5ミリシーベルト以上被ばくした。廃炉まで30~40年かかるとされ、労災申請は今後増える可能性がある。制度を知らない人も多い。個々の作業員への周知が欠かせない。
解せないのは、白血病の労災認定基準が年間5ミリシーベルトなのに、原発作業員の年間被ばく線量の上限がその10倍の50ミリシーベルトである点だ。
厚労省は「5ミリシーベルトを超えれば白血病が発症するということではない」とする。だが、これでは労災を引き起こす可能性がある危険な労働環境の存在を、厚労省自身が認めていることになってしまう。
防護策向上を含め、作業員の健康を置き去りにしてはならない。
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