2015/10/26

NPO、資金確保に悩む 薄れる関心、減る寄付・助成 東日本大震災5年目

2015年10月26日 朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12035079.html?rm=150


東日本大震災の被災地で生まれたNPO法人が、財政難に悩んでいる。震災後、4年間で岩手、宮城、福島の3県で739法人が新たにでき、行政サービスの届かない分野で課題の解決に取り組んできた。だが、震災への関心は薄れ、寄付や助成が減っている。支援活動を続けるため、模索が続いている。

■送迎支援、赤字1000万円見込み
宮城県石巻市郊外で暮らす女性(74)は週に3日、人工透析を受けるため約9キロ離れた病院に通う。

両足が不自由で、市内のNPO法人「移動支援Rera(レラ)」に2キロごと100円の「協力金」を支払い、車いすのまま乗れるリフト付き車両による送迎サービスを受けている。片道500円で、タクシーの約5分の1で済む。「本当に助かっています」と話す。


Reraの送迎車へ乗り込む女性=宮城県石巻市

ただ、Reraの財政は厳しい。来年度も利用できるかどうかわからない。

Reraは震災の翌月、札幌市のNPO法人が中心となって設立した。津波でマイカーを失った人の送迎を始め、全国から寄贈された車両8台で、高齢者や障害者ら自力で移動するのが難しい約400人の外出を支えている。これまでの送迎人数はのべ9万4千人を超え、新たに利用を希望する人も増えている。

しかし、2年前と比べ、寄付金は半分以下、企業などからの助成金は8割ほどに減りそうだ。送迎を担う有償ボランティアの報酬を1日3千~4千円に抑えるなど節約に努めるが、今年度は1千万円ほど赤字を見込んでいる。

このままでは年度末には繰越金も底をつく。送迎の協力金を一律700円に引き上げても、多額の赤字は解消できない。村島弘子代表(40)は「車の台数を減らすことも含め、あらゆる可能性を考えたい」。




11年から販売する手作りジャムは13年に売り上げががくっと落ちた。「被災者手作り」というだけでは売れないと考えた、佐藤賢理事長(38)はマーケティングを学び、中身や商品名を一新した。赤ちゃんのタオルやおくるみとして使える「万能布」も作って売っている。関心をもった企業の協力で、近く輸出を始められそうだ。「売り上げを安定させ、30人のお母さんを雇用できる体制を作りたい」と佐藤さんは話す。

石巻市で絵画教室や遊びを通し、震災で遊び場を失った子どもの居場所づくりに取り組むNPO法人「にじいろクレヨン」は4月、市の事業を受託した。

市に子育て支援拠点の運営計画案を示し、約480万円の委託費を受ける。事業規模の約1割だが、柴田滋紀代表(40)は「基盤があるのは大きい」という。

被災地の団体を資金以外で支える動きもある。国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」(東京)は、資金を集める力を身につけられるよう、行政との連携や寄付集めの方法を考える勉強会を12年から開いている。NPO法人「ETIC.」(東京)は団体のリーダーの「右腕」となる人材をこれまで220人派遣。人材がほしい現場と、スキルを生かしたい人を結びつけている。

NPOの資金調達に詳しい神戸大学の奥山尚子准教授(公共経済学)は、「資金にはそれぞれ特徴があり、NPOが長く活動するには、特定の財源に集中、依存しないことが重要。行政は資金の提供だけでなく、NPOが多様な財源にアプローチできる仕組みを整えることも大切だ」と話す。(茂木克信、中林加南子)

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