2015/11/14

社説(11/14):被災避難者調査/孤独解消へ心のケア充実を

2015年11月14日 河北新報
http://sp.kahoku.co.jp/editorial/20151114_01.html

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故により、山形県内に移り住んでいる避難者が年々孤独感を募らせている実態が、山形県のアンケートで明らかになった。避難生活が長期化する中、交流の場の提供など心のケアの重要性が一層増している。

心身の不調に関する設問(複数回答)で、「孤独を感じる」が25.4%に上った。「疲れやすく体がだるい」「イライラする」など、具体的不調11の選択肢のうち、回を重ねる度に増加する唯一の項目となった。全体では約8割の避難者が不調を訴えた。

孤独感は日常的に会話し、コミュニケーションを取る家族、友人らの存在と深く関わる。アンケートでは相談相手の有無も質問。「山形県内にいる」は51.7%にとどまり、15.7%が「相談したいがいない」と回答した。

県内で希望する相談相手は、行政機関の窓口(11.4%)が最も多く、臨床心理士、医師、友人・知人が続いた。前回に比べて友人や家族より行政への期待が高まっている数字は、孤独感の深刻さを示しているといえる。

調査は病院や高齢者福祉施設に入所する一部避難者を除き、1291世帯に質問票を郵送し445世帯(34.5%)から回答を得た。2011年から毎年実施しており、5回目となる。避難する前の居住地は福島県87.6%、宮城県10.3%だった。

山形県は調査後の10月末、市町村やNPOなどの支援団体で組織するネットワークの意見交換会を開いた。

講師を務めた福島大の教員は、避難者に心身の疲労が蓄積し、自殺者が増える傾向を指摘した。交流、自治、生きがい、居場所、情報などをキーワードに、避難者の命を守るためには支援者が想像力を高める必要性を強調した。

震災と原発事故から4年8カ月が経過した。
国は「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針改定を決め、避難指示区域以外は「新たに避難する状況にない」と明記した。自主避難に関する支援を縮小する一方、古里への帰還や避難先などでの定住支援に軸足を移す。

福島県は自主避難者に対する借り上げ住宅の提供を2017年3月に終了することを決定。宮城県も仮設住宅の入居期間について、災害公営住宅が完成しないなどの要件を満たした場合に限り、一部自治体が世帯ごとに判断する「特定延長」を導入した。

アンケートは一連の方針転換後初の調査となった。「困っていること、不安なこと」に、生活資金に次いで住居が挙がったのは当然だろう。

山形への定住希望者は、質問形式がやや異なるものの、前回比で4.3ポイント増えて28.3%となり、帰還の20.7%を上回った。

復興庁によると、岩手、宮城、福島の被災3県の避難者は10月現在、約19万人いる。県外への避難者は福島県だけで4万4094人に上る。

避難先での定住か帰還か。重い選択を迫られる中でストレスが高まることは容易に想像できる。じっくり悩みを聞く、きめ細かな相談態勢の構築を急ぐべきだ。

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