2015/11/11

栃木/ 高齢避難者を塩谷で支えたい 医師の尾形さん、受け入れ準備

2015年11月11日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201511/CK2015111102000195.html

東京電力福島第一原発事故を受け、塩谷町の医師尾形新一郎さん(61)が、町内で運営する高齢者向けの介護サービス付き賃貸住宅に、福島県からの避難者を積極的に受け入れる準備をしている。塩谷町は高濃度の放射性物質を含む「指定廃棄物」の処分場候補地に選ばれた問題で揺れている。尾形さんの思いを取材し、被災地の今を考えた。
(大野暢子)
「被災地の人々に自然豊かな塩谷町へ来てほしい」と語る尾形さん=塩谷町で

尾形さんは五月、指定廃棄物に関する意見交換などのために塩谷町を訪れた、福島県富岡町の安藤正純(せいじゅん)町議(60)と知り合った。福島第一原発から二十キロ圏内の富岡町は、全町民が避難指示の対象となり、帰還のめどが立っていない。尾形さんが「塩谷町で近く高齢者向け住宅を開業します」と話すと、安藤町議はこう切り出した。
「原発事故で避難した高齢者らに、十分な介護サービスが届いていません」

安藤町議は「原発事故で家族との別居を余儀なくされた高齢者が、避難先の福島県郡山市などで特別養護老人ホーム(特養)に入りたくても、待機者が多く入れない例が目立つ」と報告。有料老人ホームの数も十分ではなく、避難の心労から、要介護度が上がる人の多さも指摘されているという。

話を聞いた尾形さんは「被災地から入居者を受け入れたい」と提案。原発事故直後、福島県浪江町の特養の入居者五人を数日間受け入れた経験や、塩谷町に富岡町からの避難者がいることも、決断を後押しした。

自身の医療法人で約二百人の職員が働いていることも伝え、「入居者の家族が塩谷町へ一緒に移住する場合、本人の希望があれば、積極的に雇用して支えたい」と説明。安藤町議は「ありがたい話。富岡町以外にも知らせたい」と応じた。

尾形さんは十月、安藤町議の仲介で、郡山市にある富岡町役場の仮庁舎を訪問。高齢者住宅の資料百部を富岡町の担当者に手渡すと、「周辺の市町の福祉担当者が集まる会合でも配りたい」と歓迎された。

尾形さんは、移住希望者の相談に乗れるよう、町の空き家情報を集積する仕組みも構想中だ。ただ、指定廃棄物の処分場建設を拒否している塩谷町に対し、過去に福島県民から賛否が寄せられたこともあり、両地域の関係づくりの難しさを指摘する声もある。今回の提案にためらいはなかったのか、尾形さんに尋ねた。

「福島県の苦しみは、私たちの苦しみと比較しようもないほど大きい。ただ、塩谷のような小さな町にも被災地の力になれることはあるし、両地域に通じ合える部分もあると信じたい」

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