2015/11/24

「農産物検査」周知足りず 出荷制限品目流通、新たな風評懸念/福島

2015年11月24日 福島民友
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20151124-030402.php

県は10月下旬からの約3週間で、国や県が出荷制限などを指示している福島、広野2市町のユズ、県の放射性物質検査を受けていない豆類が販売された事案を計6件発表した。安全な県産農産物を消費者に提供する上で、検査制度に対する認識の不備が露呈した。いずれも食品に含まれる放射性セシウムの基準値(1キロ当たり100ベクレル)を下回っていたが、出荷制限品目などの流通は新たな風評につながる恐れがあり、県の指導力が問われている。

◆◇◇揺らぐ信頼関係
「消費者や生産者との信頼関係を崩しかねないことをしてしまった」。広野町の農家が持ち込んだユズを県の収穫自粛品目とは知らずに店頭に並べ、今月19日までに144袋を販売したいわき市の道の駅よつくら港の駅長白土健二さん(52)は悔やむ。

県によると、国や県から出荷制限などの指示が出されている県内の野菜・果実は15品目。広野町のユズは2012(平成24)年11月から県が収穫自粛を要請している。県は毎年、自粛解除に向けて検査しているが、昨年の検査で1点が基準値を超えたため、自粛が続いている。

道の駅よつくら港では、県いわき農林事務所の指導を受けながら、生産者に検査徹底などを呼び掛けているが、収穫自粛の情報は把握せず「末端まで周知することができなかった」(白土さん)。

◇◆◇職員の巡回強化
県が、福島市と広野町のユズが販売された原因を調べたところ、生産者、小売店ともに出荷制限品目であることを知らなかったという。検査前の豆類が販売された原因については、本来は県の検査が必要だが、「自主検査で基準値を下回れば問題ない」など、生産や販売側に検査制度への誤認があった。

県は郡山市で18日に開かれた緊急対策会議で「検査の周知徹底がされていなかった」と認め、県職員による直売所など関係機関への巡回を強化し、検査制度の周知徹底を図っている。

◇◇◆食の安全徹底を
今回誤って販売されたユズ、豆類の放射性セシウム濃度は最大でも1キロ当たり13ベクレルと基準値を下回った。農産物の放射性物質検査をめぐっては、県が11年に県産米の「安全宣言」をした直後、基準値超えのコメが次々と検出された苦い経験がある。

県消費者団体連絡協議会は「行政や一部の流通・販売側に(必要な検査などをしなくとも)『もう大丈夫だ』という意識がどこかにあるのではないか。食の安全は絶対に忘れてはならない」とくぎを刺す。

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