2015年11月28日 毎日新聞
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20151128ddlk11040340000c.html
◇幸せ奪われた人の現実、訴えたい
東京電力福島第1原発事故から4年8カ月余りたった25日、福島県いわき市から長男(10)と長女(8)を連れて県内に自主避難している河井加緒理さん(34)が、さいたま地裁の法廷で、今も続く避難者の厳しい現状を訴えた。
原発事故で福島県内から埼玉に避難している河井さんら7世帯22人は、国と東電を相手取り約2億4000万円の損害賠償を求めている。25日に第1回口頭弁論があり、河井さんが意見陳述した。
河井さんは震災から3日後の3月14日、自宅のあったいわき市を離れた。「避難指示」はなかったが、健康被害から子どもたちを守りたい一心だった。
仕事のある夫とは離ればなれの生活が続き、震災から約8カ月後に離婚することになった。避難先として落ち着いた埼玉で働きながら子どもを育てる生活が始まったが、子どもたちは体調を崩しがちに。河井さんも子どもたちを守り切れていないという罪悪感から精神的に不安定になった時期があったという。
河井さんは「いわきでは、子どもを自然の中でのびのび育てたいと、休日には家族で海や山に出かけて四季の恵みを感じ、夜はベランダで夜空を眺めました」と振り返り、裁判官に「どうか想像力を働かせ、避難を余儀なくされた人の立場に立って公正な判断をしてほしい」と訴えた。
河井さんは長女の作文も読み上げた。「私は最近、地震と聞くと体が震えて泣いてしまいます。こわくてたまりませんでした。(中略)私は悲しくなりました。だって、家族がおかしくなってしまったからです」
閉廷後、仲むつまじく夜空を見上げる親子の姿を思い浮かべた。「ささやかな幸せ」を突然奪われた福島の人たちのことを忘れてはいけない。「想像」することを怠らず、私も報道という形で、避難者の現実を訴えていきたいと思う。【山寺香】
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