http://mainichi.jp/articles/20160328/ddl/k09/040/038000c
東京電力福島第1原発事故で、那須塩原、大田原市、那須町の住民が東電に対し損害賠償などを求めた原発ADR(国の原子力損害賠償紛争解決センターへの和解仲介手続き)について、県北原発被災者弁護団などは27日、大田原市総合文化会館で第1回「みんなでADR報告会」を開き、申立人らに進行状況を報告した。
粟谷しのぶ弁護団長(35)によると、申立人は事故当時、那須地域に住んでいた7128人。申し立ての柱は、精神的苦痛に対する慰謝料▽加害者としての謝罪▽健康調査や除染のための基金への費用拠出−の3点。放射性物質による健康被害の有無▽地理的条件を満たさなければ被ばく不安は認められないのか▽汚染状況▽申立人の被ばくへの不安や生活費増加の実態−の4点が主な争点で、東電は「那須地区は福島第1原発から100キロ以上離れている」「がん発症リスクは非常に低い」などと反論しているとした。今後、市民による甲状腺検査の実施状況や申立人の陳述書などを提出し、主張を立証するという。
粟谷弁護士は「県境での不合理な区別を越えて(東電に)被害の実態を認めさせる。那須地区の子どもたちの未来のために戦いたい」と話した。
また、報告会の前に公開討論「どうみる?甲状腺がん」があった。甲状腺がん検診の必要性について「県放射線による健康影響に関する有識者会議」座長の鈴木元・国際医療福祉大教授(67)は「県内の幼児の甲状腺等価線量は5ミリシーベルト未満なのに、大規模検査をすると過剰診断になる可能性がある」と主張。岡山大環境学研究科の津田敏秀教授(57)は「福島との県境で放射性プルームが止まっているわけではないので、甲状腺がんが多発している可能性はある」と反論した。客席からは「県内でも検診をしてほしい」という声が多数上がり、拍手が湧いた。
【田中友梨】
現状を報告する粟谷しのぶ弁護団長=大田原市本町1の大田原市総合文化会館で |
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