毎日新聞2016年3月20日 地方版
http://mainichi.jp/articles/20160320/ddl/k09/040/017000c
アンケや聞き取り冊子に
東京電力福島第1原発事故で被災した県北住民を対象に「福島原発震災に関する研究フォーラム」(共同代表=宇都宮大国際学部・清水奈名子准教授、高橋若菜准教授)が実施したアンケートと聞き取り調査の結果が2冊の冊子にまとまった。調査では、住民が将来の健康に不安を抱えていることが浮き彫りになった。【田内隆弘】
聞き取りは、県北地域の10代〜70代の男女12人を対象に昨年2月から1年間かけて実施した。事故当時について30代女性は「『爆発しちゃっているよね』と人ごとのように見ていた」、60代女性は「子どもや妊婦を含めて住民が低線量被ばくに対して無防備な状態に放置された」と語り、放射性物質に関する知識や情報が乏しかったために被ばくしたのではないかと悔やむ。
行政による対策や支援については、60代女性が「健康調査をしたわけでもなく、有識者などの『安心』との説明でかえって不安が増す」、40代女性が「(福島県では実施している)表土除去を伴う除染や健康調査をしないなら、しない理由を説明してほしい」などと要望した。
また、アンケートは昨年、「関東子ども健康調査支援基金」(茨城県守谷市)などが那須塩原市など県内2市2町で行った甲状腺エコー検査の会場で実施し、165世帯から回答を得た(回収率約85%)。
何を心配して検診を受けたかについては、(複数回答可)「事故時の被ばく」を懸念したとの回答が95%で最も多く、以下「甲状腺の異常確認」(81%)、「体内被ばく」(70%)、「体外被ばく」(68%)−−と続いた。実際に「心配な症状がある」との回答も9%あった。
検診を受けたことで「不安は解消したが、今後も定期的な検査を希望する」が84%、「不安は解消しないが、今後も定期的な検査を希望する」が12%に上り、「今後は希望しない」は3%だった。清水准教授は「住民には事故直後の一番深刻だった時期に子どもを十分に守れなかったという思いがあり、10年後、20年後にどんな結果がもたらされるのかと不安に感じている」と指摘した。
今回のアンケート調査は無記名で実施され、聞き取り調査も匿名での公表となった。放射能汚染への不安を口にすることで証言者が「風評被害をあおるな」などと周囲から批判を受けないよう配慮したもので、清水准教授は「問題についてタブーなく議論できる環境を整えることが必要だ」と話した。
聞き取りやアンケート調査の結果を報告する清水准教授 |
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