http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201603/CK2016032402000271.html
東日本大震災や福島第一原発事故で大きな被害を受けた福島県で、小中学生の不登校が増え続けている。震災前と比較すると、増加率は全国平均の五倍以上に上る。震災から五年が経過し、関係者は「福島の状況は他の被災地と比べても特殊。長い時間をかけて対策を取る必要がある」と訴えている。 (上田千秋)
「転校を繰り返して何度も人間関係をつくり直すのに疲れたり、家族が離れ離れになって気持ちが不安定になり、学校に行けなくなった子どももいる。震災や原発事故の影響は否定できない」。福島県教育委員会の担当者は、こう話す。
文部科学省の行動調査を基にした二〇一〇年度と一四年度の不登校の小中学生の比較では、全国の増加率は2・5%。これに対し、被害が大きかった東北三県のうち岩手はほぼ同数で、宮城は11・7%増。千五百七十五人だった福島は千七百八十五人になり、増加率は13・3%増と全国平均を大きく上回った。
不登校の子ども向けのフリースクールの運営や被災者への学習支援などを行うNPO法人「ビーンズふくしま」(福島市)の中鉢(ちゅうばち)博之理事は「県内の事情はさまざまで、一概に被災と結びつけられるわけではない」とした上で、「震災の記憶が色濃く残る子もいる。最初は頑張れていても、少しずつ気持ちが崩れてきているのではないか」とみる。
福島では原発事故の影響も含め、ピーク時の一二年六月時点で約十六万四千二百人が避難を余儀なくされた。今も約九万八千六百人が避難生活を送り、コミュニティーそのものが壊れてしまった地域も多い。
中鉢理事は「本人の問題だけでなく、親ら家族が抱えるストレスが子どもに影響を与えている側面がある。時間がたつにつれて被災地から撤退する団体が増え、被災者支援そのものが追いついていないのも課題だ」と明かす。
国や自治体も対策を打ってはいる。文科省は教員を増員。県教委は各学校にスクールカウンセラーを配置して児童・生徒の相談に当たるほか、福祉の専門家らとの連携も進めている。
ただ、福島大大学院の鈴木庸裕(のぶひろ)教授(学校福祉・生活指導)は「福島では家族のありようや人間関係などを含めてすべてが大きく変わった。長期の見守りが不可欠」と説く。
不登校は本人や学校に原因を求めがちだが、鈴木教授はそれだけでは改善しないと指摘。「子どもたちを支える立場にいる教員らも被災者で、五年たって息切れしてきている。さらに状況が悪くなる可能性もあり、地域全体でサポートしていく体制づくりが必要だろう」と話した。
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