2016/03/15

大震災5年 避難者への対応/住宅支援と心身ケア重要に(社説)

2016年03月15日 河北新報
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20160315_01.html


東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による山形県内への避難者が、ピーク時の4分の1に当たる3442人となった。2012年1月に全国最多の1万3797人を数えて以降、減少が続く。

山形県が11年から毎年実施している避難者アンケートでは、5年間で定住希望者の割合が増加する一方、心身の不調を訴える人は8割に上る。避難生活の長期化で、年々孤立感を募らせる実態も明らかになっている。

「山形での定住、就労に力を貸してほしい」「心身のケアの充実を」
山形県が10日開いた意見交換会では、いま求められる支援策が浮き彫りになった。

山形県の3日現在の集計によると、3442人のうち、避難元は福島県3121人、宮城県291人、岩手県21人など。大半を占める福島県からの避難者は、この1年間だけで約840人が転出した。

復興庁の2月12日時点のデータでは、避難者は全国で17万4471人で、震災直後の推計約47万人から約5年間で6割以上減少した。

避難者が暮らす都道府県は福島が最多の5万5321人で、宮城4万7106人、岩手2万2131人と続いた。県外に避難しているのは、福島からが4万3139人、宮城からは6396人、岩手からは1454人だった。

避難先は47都道府県の1139市区町村に及ぶ。山形県内の避難者数は被災3県を除き全国6番目。減り続けていて、6876人と11年からほぼ横ばい状態で最多の東京都とは対照的な推移となった。

山形県の場合、被災地の隣県のため、夫を避難元に残した母子避難世帯が多いのが特徴だ。県のアンケートによると、母子避難世帯の割合は12年に最多の39.5%に上り、15年でも28.1%。自主避難者は全体の約8割を占め、子どもの進級や進学に合わせた年度末の帰還が目立つ。

福島県は自主避難者への借り上げ住宅提供を17年3月に終了する方針を示した。山形県内の支援関係者は「学校の区切りに合わせ、この1年間で帰還する避難者はかなりの数に上るだろう」とみる。

帰還が進んだ結果、定住希望者の割合は相対的に増加している。15年の調査では28.3%が山形県を希望し、避難元の20.7%を上回った。ただし最多は「わからない、未定」の40.7%だった。

被災3県をはじめ避難者を受け入れる自治体は新年度、生活の基本となる定住、住宅支援に力を入れる。

山形県はこれまでの生活支援に加えて、定住に特化した相談窓口を初めて設置する。村山、置賜、庄内3地域で相談会を初めて開催するほか、福島県職員と共同で、戸別訪問も計画している。

秋田県は県内に新たに転居する際の費用補助を始める。福島県は自主避難者のうち、住宅確保が困難な世帯を対象に、県営住宅に優先的に入居できる措置を講じる。

避難先での定住か帰還か。避難者は人間関係の葛藤を抱えながら選択を迫られる。いまなお17万人に上る避難者には、個別の事情に配慮した柔軟な対応が必要といえる。

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