http://www.asahi.com/articles/DA3S12656461.html
東京電力福島第一原発の事故を受けて、約1万2千世帯に無償で提供されてきた住宅支援が来年3月に打ち切られる。対象になるのは、政府の避難指示が出ていない区域からの「自主避難者」たちだ。
「家を出て行けと言われて、崖っぷちだ」
10月26日、東京・永田町の参院議員会館。約20万人分の署名が入った箱を前に約180人が集まり、口々に不安を訴えた。原発事故後に自宅を離れ、避難先で住宅の無償支援を受けてきた「自主避難者」らだ。
政府と福島県は避難指示の有無にかかわらず、災害救助法を適用し、県内外に避難した人にプレハブ仮設の提供や賃貸住宅の家賃の全額負担をしてきた。放射性物質が拡散し、指示区域外でも不安を感じて避難する住民が多かったためだ。プレハブ仮設の建設費も含めて、今年3月までに約4万4千世帯に約2316億円が投じられた。
しかし、福島県は昨年6月、「除染が進んで生活環境が整いつつある」(内堀雅雄知事)として、避難指示が出ていない区域からの避難者への支援打ち切りを決めた。来年3月末に打ち切られるのは全国で避難生活を送る約1万2千世帯。当初から避難指示区域外だった自主避難者と、2014年に避難指示が解除された地域の避難者が対象だ。
福島県は昨年12月以降、県内外の約40カ所で、住宅支援に代わる低所得世帯への家賃支援策の内容を説明している。しかし、避難者は不安を募らせる。
9月28日夜、福島県川内村の住民が避難している福島県郡山市の仮設住宅の集会所。詰めかけた約70人から県職員に質問が飛んだ。
人口2739人(10月1日現在)の川内村は、10月1日現在で少なくとも889人が村外の無償の賃貸住宅やプレハブ仮設などで暮らす。
佐久間文夫さん(67)もその一人。腎臓病を患う妻は週3回、車で約40分かけて人工透析の病院に通う。福島県は人工透析患者のいる世帯にも支援をするが、佐久間さんには病気の妻を抱えて転居することに不安がある。「ここに1、2年置いてもらえるとありがたいんです」と訴えた。
■受け入れ側、独自支援の動き
一方、福島県内の被災自治体は、住宅支援の打ち切りを住民の帰還促進につなげたい思いがある。
川内村の遠藤雄幸村長は「政府や福島県による支援はいつまでも続かない。むしろ、生活再建に向けて踏み出した方がいい」。住民が1割も戻ってこず、再来年3月末で支援が打ち切られる楢葉町の松本幸英町長は「原発事故から5年半以上が過ぎた。それぞれが自立を考えなくては」と話す。
反対に、避難者を受け入れている自治体では、独自の支援を打ち出す動きが出ている。長期的には定住につなげる狙いがある。
新潟県は6月の補正予算に自主避難者への支援策を盛り込んだ。福島県による低所得世帯への家賃補助に毎月1万円を上乗せし、公営住宅に移る避難者に最大5万円を助成する。「定住する意思があれば支えたい」と担当者は言う。
787世帯を受け入れている東京都は、無償ではないが、高齢者や低所得世帯向けに都営住宅約300戸を優先確保する。山形県は約50戸の県職員公舎の無償提供を検討している。
自治体の思惑が交錯するなか、避難者は戸惑う。支援打ち切りの人を対象に福島県などが7月末までに戸別訪問した6795世帯のうち、転居先が「決まっている」と回答したのは34・7%(2358世帯)だった。
(鹿野幹男、伊沢健司、長橋亮文)
「家を出て行けと言われて、崖っぷちだ」
10月26日、東京・永田町の参院議員会館。約20万人分の署名が入った箱を前に約180人が集まり、口々に不安を訴えた。原発事故後に自宅を離れ、避難先で住宅の無償支援を受けてきた「自主避難者」らだ。
政府と福島県は避難指示の有無にかかわらず、災害救助法を適用し、県内外に避難した人にプレハブ仮設の提供や賃貸住宅の家賃の全額負担をしてきた。放射性物質が拡散し、指示区域外でも不安を感じて避難する住民が多かったためだ。プレハブ仮設の建設費も含めて、今年3月までに約4万4千世帯に約2316億円が投じられた。
しかし、福島県は昨年6月、「除染が進んで生活環境が整いつつある」(内堀雅雄知事)として、避難指示が出ていない区域からの避難者への支援打ち切りを決めた。来年3月末に打ち切られるのは全国で避難生活を送る約1万2千世帯。当初から避難指示区域外だった自主避難者と、2014年に避難指示が解除された地域の避難者が対象だ。
福島県は昨年12月以降、県内外の約40カ所で、住宅支援に代わる低所得世帯への家賃支援策の内容を説明している。しかし、避難者は不安を募らせる。
9月28日夜、福島県川内村の住民が避難している福島県郡山市の仮設住宅の集会所。詰めかけた約70人から県職員に質問が飛んだ。
人口2739人(10月1日現在)の川内村は、10月1日現在で少なくとも889人が村外の無償の賃貸住宅やプレハブ仮設などで暮らす。
佐久間文夫さん(67)もその一人。腎臓病を患う妻は週3回、車で約40分かけて人工透析の病院に通う。福島県は人工透析患者のいる世帯にも支援をするが、佐久間さんには病気の妻を抱えて転居することに不安がある。「ここに1、2年置いてもらえるとありがたいんです」と訴えた。
■受け入れ側、独自支援の動き
一方、福島県内の被災自治体は、住宅支援の打ち切りを住民の帰還促進につなげたい思いがある。
川内村の遠藤雄幸村長は「政府や福島県による支援はいつまでも続かない。むしろ、生活再建に向けて踏み出した方がいい」。住民が1割も戻ってこず、再来年3月末で支援が打ち切られる楢葉町の松本幸英町長は「原発事故から5年半以上が過ぎた。それぞれが自立を考えなくては」と話す。
反対に、避難者を受け入れている自治体では、独自の支援を打ち出す動きが出ている。長期的には定住につなげる狙いがある。
新潟県は6月の補正予算に自主避難者への支援策を盛り込んだ。福島県による低所得世帯への家賃補助に毎月1万円を上乗せし、公営住宅に移る避難者に最大5万円を助成する。「定住する意思があれば支えたい」と担当者は言う。
787世帯を受け入れている東京都は、無償ではないが、高齢者や低所得世帯向けに都営住宅約300戸を優先確保する。山形県は約50戸の県職員公舎の無償提供を検討している。
自治体の思惑が交錯するなか、避難者は戸惑う。支援打ち切りの人を対象に福島県などが7月末までに戸別訪問した6795世帯のうち、転居先が「決まっている」と回答したのは34・7%(2358世帯)だった。
(鹿野幹男、伊沢健司、長橋亮文)
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