2016年11月23日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20161123/ddm/005/070/017000c
50歳にして、初めて海釣りをした。今月13日、東京電力福島第1原発から数キロの福島県沖で。同原発周辺で魚を釣って独自に放射線量を調べている「いわき海洋調べ隊 うみラボ」に同行させてもらったのだ。
うみラボは福島の海を愛する市民有志が運営。その一人である同県いわき市の八木淳一さん(40)は振り返る。「原発事故の後、沿岸のアイナメから1キロ当たり何万ベクレルもの放射性セシウムが出た(国の基準値は1キロ当たり100ベクレル)というニュースが流れた。あれで、福島の海のイメージが『怖い』というまま止まってしまった感じですね」
いま、福島の海は確実に回復傾向にある。沿岸漁業の通常操業はまだ自粛中だが、県は2011年4月から先月末までに、計4万検体近い魚介類の放射性セシウムを検査。15年4月以降に国の基準値を超えたものは一つもない。検体数はもっと少ないが、うみラボの調査結果も同じ傾向にある。
ところが、こうしたデータはネット上でも公開されているのに、幅広く伝わってはいないようだ。消費者庁が先月公表した「風評被害に関する消費者意識の実態調査」でも、食品中の放射性物質について「検査が行われていることを知らない」と回答した人が全体の34・8%に上った。
こんな状況を踏まえ、うみラボは「福島の海を自分の目で確かめてほしい」と一般参加者も募っている。13日は大学生ら約10人が参加。海は荒れ模様だったが、八木さんたちの丁寧な指導でヒラメやマゾイなどを次々と釣り上げた。「どうせやるなら楽しく」が、うみラボの趣旨。大規模ではないけれど、こんな体験の場が、伝わりにくいことを少しずつ伝えていくのだろう。(社会部編集委員)
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