2016/11/17

千葉/シイタケ出荷に検査の壁 生産者苦悩「鮮度落ちる」

2016年11月17日 東京新聞 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201611/CK2016111702000184.html

東京電力福島第一原発事故で放射性物質が拡散した影響で、事故から五年八カ月が経過した現在も、シイタケなど県産の農水産物の出荷制限が続いている。県が定めた基準値をクリアした一部の生産者については制限は解除されたが、事故前の出荷額にはほど遠い。出荷前の放射性物質検査は避けては通れない。おいしいシイタケを届けたいと苦悩する生産農家の今を取材した。 (服部利崇)

君津市の山林に事故の影響で使えなくなったシイタケの原木のコナラが、うずたかく積み上げられている。同市草牛(そうぎゅう)の三平文秋(さんぺいふみあき)さん(58)は「コリッとした歯応えになるから」と原木栽培にこだわるシイタケ農家だ。

事故前、三平さんは、所有する地元の山林や福島県から調達した原木を使い、屋外の露地栽培とハウスの施設栽培を組み合わせ、一年中、木更津市内の市場にシイタケを出荷していた。「震災前は少ない年でも六百万円は売り上げた」

第一原発から直線で約二百五十キロ離れた君津も、放射性物質の影響を受けた。シイタケからは、国の基準を超える放射性物質が検出され、二〇一一年十月に露地栽培が、一二年十二月には施設栽培が相次いで出荷停止となった。

出荷停止後、三平さんはスーパーや市場からシイタケを回収し、土中に埋めた。五年分の原木約一万本も使えなくなった。「子どもが亡くなったようで、とてもつらかった」

二年前、県の基準をクリアした三平さんは、施設栽培の出荷制限は解除となったが、露地栽培は今も規制が続く。

出荷再開には、原木を全て入れ替えた上、県が定めた三回の放射性物質検査をクリアする必要がある。基準値は、シイタケ菌を植える前と後の原木が一キロ当たりのセシウムが五〇ベクレル未満で、収穫前のシイタケが同一〇〇ベクレル未満とされている。

三平さんは、露地栽培シイタケの再来年秋の出荷再開を目指し、年明けにも原木に使うコナラの切り出しを始める。事前の測定では問題なかったが「原木の検査で高い数値が出ないか心配」とも話す。

富津市六野の川名博美(ひろみ)さん(63)、文子さん(61)は夫婦で原木生シイタケを作っている。二年前から露地栽培の出荷を再開したが、施設は規制が続く。年間売り上げは四分の一まで激減した。

博美さんは県の検査態勢について「時間がかかりすぎだ。検体が集中する出荷時期は検査機器と人を増やしてほしい。結果が出るまで日数がかかり、鮮度が落ちて出荷できなかったこともある」と批判する。

文子さんは「消費者にとって厳しい基準がいいのは分かっている」とした上で話す。「地元のナラやクヌギなどを原木にすれば良いシイタケができる。ただ検査を受けないと原木に使えない。出荷しようとする限り、検査はいつまでも続く」

使えなくなったコナラの原木を示す三平文秋さん=君津市で 

<原発事故で出荷が制限されている県産の農林水産物> 原木生シイタケ(露地栽培)は、千葉、流山、八千代、我孫子、白井、君津、富津、佐倉、印西、山武の10市で出荷を制限。栽培途中でハウスに原木を移す施設栽培のシイタケも君津、富津、山武の3市で出荷制限が続く。いずれも県の基準をクリアした一部農家は、出荷を再開している。このほか、手賀沼や利根川の一部水域のウナギや、手賀沼のギンブナ、コイ、モツゴも出荷を制限。イノシシ肉は、一部の施設で管理・処理された分を除き、県内全域で制限されている。

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