東京電力福島第一原発事故で福島県から横浜市に自主避難した男子生徒(13)の市立小学生時代のいじめ問題を受け、問題の学校とは別の市立学校で福島からの自主避難者の女の子を受け入れたことがある元校長の男性が、本紙の取材に応じた。元校長の学校では女の子へのいじめはなく、卒業時に本人から「楽しい学校生活だった」と感謝されたという。元校長は「初期対応の段階で、いじめの種をつぶしておくことが大事」と複数の教員で見守る態勢を築く大切さを指摘する。 (志村彰太)
元校長の学校に女の子が転入してきたのは、東日本大震災直後の二〇一一年春。「精神的に不安定かもしれない」と考え、転入前に母親や本人と面談して家庭の状況や気遣ってほしいことを聞き取った。母親からは「あまり表情に出ない子なので、何かあっても我慢してしまうと思う」と言われたという。
「周りと比べて浮かないように」と、学校の体操服をすぐに用意。教員には「特別扱いすると、かえっていじめにつながる」と、他の子どもの前では過剰に声掛けしないよう指示した。「相談しやすい担任がいい」と、女性のベテラン教員が担任を務めるクラスに入ってもらった。
併せて「クラスでリーダー格の女子に転入生の世話役をお願いした」。担任が気づかない細かい変化を報告してもらう狙いだった。
元校長によると、担任は「おとなしい子だったので、私に本音を言えるよう気遣った」という。担任やそれ以外の教員が休み時間も職員室には戻らず、各教室を巡回。複数の目で女の子を見守る態勢をつくり、変化に気づいたら話し合うようにした。女の子の保護者とも頻繁に会い、生活状況を聞いて助言したという。
卒業時、女の子は「新しい生活に不安だったけど、希望を持てるようになった」と担任に話したという。ただ、元校長は「本当にいじめはなかったか」と振り返ることもあり、「どうすればいじめを見逃さないか」を考え続けている。
今回のいじめ問題では、生徒側は担任にいじめを相談しようとした際に「忙しい」と言われたり、学校側が保護者と十分な意思疎通を図ってくれなかったりしたと訴えている。元校長は「詳細な事情はわからない」としながら、「小さな変化に気づくのは教員一人の力では限界がある。複数の大人で見守ることが重要だ」と話している。
取材に答える元校長の男性=市内で |
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