2016年11月29日 福島民報
http://www.minpo.jp/news/detail/2016112936854
東京電力福島第一原発事故で避難区域が設定された12市町村の認定農業者のうち、既に営農を再開した農家や再開希望者が85%を占める一方、実際に営農を始めた農家の51%で販売額が事故前の5割以下にとどまっている。28日、県が調査結果を発表した。避難区域の農家の営農意欲は高いが、原発事故の風評が根強い中、収入面で苦戦している実態が浮き彫りになった。
調査は聞き取り形式で川俣、田村、南相馬、飯舘、広野、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、浪江、葛尾の各市町村の認定農業者計708人を対象に7月上旬から11月中旬にかけて実施し、訪問を受け入れた522人が回答した。回答率は73・7%だった。
営農再開の状況と意向は【グラフ1】の通り。「再開済み」は322人で全体の62%、「再開希望」は122人で23%となり、合計は444人と85%を占めた。「再開済み」と「再開希望」の合計を区域別でみると、既に避難指示が解除された区域が95%と最も高く、次いで避難指示解除準備区域が94%、居住制限区域は78%。帰還困難区域は54%だった。来年春に避難指示の解除が予定されている区域で営農意欲が比較的高い。
営農再開後の販売額は【グラフ2】の通り。回答した261人のうち「震災前の5割以下」は51%と半数以上に上った。「減少しているが震災前の5割以上」は21%で、70%超で震災前の販売額を下回った。残りの27%は「震災前と同等以上」で、震災後に品目数や栽培規模を拡大した農家らが該当した。
県は避難区域の営農再開後の販売額が伸び悩んでいる背景に(1)営農休止や風評に伴う販路の縮小(2)風評に伴う県産農産物の価格低下(3)コスト面を考慮した営農面積・規模の縮小-があるとみている。
実際、営農再開に関する意見・要望(複数回答)の項目で「個人や小規模でも対象となる補助事業の創設」を望む農家が145人(28%)と最も多く、「風評対策や販路確保の支援」も137人(26%)となるなど、今後の収入面を不安視する声が多かった。
県は今後、農家が生産意欲を維持できるよう支援を充実させる。営農を再開する個人や法人を対象に農業用の機械や設備購入品の4分の3を補助する新制度の利用を促し、風評払拭(ふっしょく)や販路開拓の新たな対策を検討する。県は「農業者の要望に丁寧に耳を傾け、農業再開の加速化につなげたい」(農業振興課)としている。
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