2016/11/26

【報道まとめ6】神奈川・横浜市/原発避難いじめ

避難者支援団体、いじめ巡り議論 表面化「氷山の一角」

2016年11月26日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASJCT6D4VJCTUTIL058.html

福島第一原発事故で避難してきた人たちを支援する神奈川県内の4団体が集まって横浜市で開いた26日の会合で、市内に自主避難した中学1年の男子生徒(13)がいじめを受けて不登校になった問題について意見を交わした。

「かながわ東北ふるさと・つなぐ会」の今里雅之会長(69)は福島県富岡町から避難している。今回の問題を「氷山の一角だ」と指摘。「小学生の子どもが『汚いからあっちへ行け』と仲間外れにされた」といった話を会員から聞くことがあるという。「いわきナンバーの車に傷を付けられた」などの被害も報告されているという。

NPO法人「かながわ避難者と共にあゆむ会」の理事長で、福島県いわき市出身の鈴木実さん(80)は「将来に不安を持つ子どもたちに対して、『親切にするんだよ』という言葉をかけて育てていない親や先生に責任がある」と訴えた。

生徒の代理人などによると、生徒は小学2年の2011年8月に自主避難した直後から、転校先で名前に「菌」と付けて呼ばれたりするなど、いじめを受け始めた。小学5年の時には「(原発事故の)賠償金をもらってるだろう」などと言われ、ゲームセンターで遊ぶ金など総額約150万円を支払わされた。(大森浩司)



塾でも続いたいじめ 原発避難先の体験、当事者が明かす

2016年11月26日 朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/ASJCT5WZDJCTUTIL047.html?rm=595 

福島第一原発事故で横浜市に自主避難した中学1年の男子(13)がいじめを受けて不登校になった問題を受け、同じようにいじめに遭ったという中学生の男子少年が、朝日新聞の取材に応じた。「当事者がしゃべらないと、本当のことがちゃんと伝わらない」。両親の同席のもとで、少年はつらかった経験や胸中を明かした。


小学2年で福島県から都内に自主避難してきたとき、持ってきたのはわずかな着替えだけだった。ランドセルも教科書もない。その後、卒業までの4年間、少年は断続的にいじめを受け続けてきたという。

「菌がうつる」「お前が触ると汚れる」「ただで住んでるんでしょ」――。そんな言葉を投げつけられた。教室に飾ってあった図工作品のうち、自分の作品だけに悪口が書き込まれているのを見つけ、捨てた。授業中に鉛筆の先で、足をつつかれたこともあった。

給食のときには班ごとに机をくっつけるのに、嫌がられた。無理につけようとすると、担任から母親に「落ち着きがない」と注意の電話が入ったという。少年は「足が痛くて立てない」と登校を嫌がるようになり、母親は数カ月で転校させる決意をした。

次の小学校では、全校児童の前で「福島から避難してきた」と紹介された。ここでも、「ただでいいところに住んでいる」「賠償金、いくら」と言われた。「天国に行かれますように」「悪魔に取りつかれませんように」。少年は七夕の短冊にそう記した。
原発事故の避難先でいじめを受けた経験を語る少年=東京都内、長島一浩撮影 

小学5年のとき、母親が担任教諭に改善を訴えた。同じ学校には他にも避難者が通っている。それまでは「強く言って目立つと、他の避難者にも迷惑をかけてしまう」と我慢してきたが、限界だった。「3カ月待ってほしい」と担任に言われ、実際にその後、いじめはやんだという。

だが、塾では続いた。同じ学校の子がおり、学校での関係が持ち込まれた。

追いかけられて脱げた長靴をトイレの便器に入れられ、「お前のすみかだ」と言われた。残飯を入れたペットボトルを示され、「これを飲んだらもういじめない」とも言われたが、飲まなかった。母親が塾に指摘し、改善に向かったという。

離れた中学校に進学してからは、いじめはなく、友人たちと楽しく過ごしている。避難者だとは明かしていなかったが、のちに偶然知られてからも関係に変化はないという。「小学校では、『避難者だから対等じゃない』という感じだった。個性や違いのある者は認めない雰囲気で、避難者は特殊な属性と思われていた」と振り返った。

一家は自主避難のため、強制避難者に比べて受け取った賠償金はわずかだ。住宅提供も来年3月で打ち切られる。少年は「生活がどうなるのかわからず、とても不安」とも語った。(青木美希)


■「典型的いじめ、学校は対応を」

首都圏の避難者らでつくる「ひなん生活をまもる会」代表の鴨下祐也さん(48)のもとには、朝日新聞の取材に応じた少年のケースを含め、いじめを受けたという情報が6件、寄せられている。他にも、日常的に「菌」「汚い」と言われたと明かす子どもの声は多いという。「まったく根拠がない話。いじめで使われる典型的な言葉で、周囲の人たちは気がついているはずだ。学校がしっかり対応してほしい」と訴える。来年3月には住宅提供を打ち切られる避難者も多く、「追い出すような施策が、いじめを助長している。住宅提供の継続が必要だという訴えに、行政は真摯(しんし)に応じてほしい」と語る。


0 件のコメント:

コメントを投稿