2016/11/16

【報道まとめ3】原発避難いじめ問題

「ばいきん扱い つらかった」 原発避難でいじめ 生徒の手記から

2016年11月16日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161116/k10010770951000.html

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、横浜市に避難してきた現在中学1年の男子生徒が転校先でいじめを受けていた問題で、去年7月に書かれた生徒の手記が公表されました。その概要です。

3人から・・・お金をもってこいと言われた。

○○○からはメールでも言われた。人目がきにならないとこでもってこいと言われた。

お金もってこいと言われたときすごいいらいらとくやしさがあったけどていこうするとまたいじめがはじまるとおもってなにもできずにただこわくてしょうがなかった。

ばいしょう金あるだろと言われむかつくし、ていこうできなかったのもくやしい。

○○○、○○にはいつもけられたり、なぐられたりランドセルふりまわされる、かいだんではおされたりしていつもどこでおわるかわかんなかったのでこわかった。

ばいきんあつかいされて、ほうしゃのうだとおもっていつもつらかった。福島の人はいじめられるとおもった。なにもていこうできなかった。

いままでいろんなはなしをしてきたけど(学校は)しんようしてくれなかった。なんかいもせんせいに言おうとするとむしされてた。

(以下、手書きの公表部分)。
いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた。


いじめの経緯

生徒側の弁護士によりますと、いじめを受けていた現在中学1年の男子生徒は、原発事故のため、5年前、平成23年8月に福島県から家族とともに横浜市に自主避難してきました。小学2年生の時でした。

転校した直後から同じクラスの2人から名前にばい菌の「菌」を付けて呼ばれるなど、いじめを受け始めました。

4年生(H25)の時にも、鉛筆を折られたり、蹴られたり、物差しでたたかれたりといったいじめが続きました。階段で押されて落とされそうになったこともあったということです。

5年生(H26)になると、図書ホールで「プロレスごっこ」と称して数人からたたかれたこともあったということです。この頃、横浜駅の近くやみなとみらい地区にあるゲームセンターなどで10人ほどで遊ぶようになり、その際、食事代や交通費を含めてすべて負担させられたと言います。

男子生徒は、「このようなことは10回ほどあり、1回につき5万円から10万円くらい使った」と話しているということです。遊ぶたびに「賠償金をもらっているんだろ」「次の金もよろしくな」などと言われ、金を渡せばいじめがなくなると思い、自宅にあった親の金を持ち出していたということです。

この頃から不登校になり、両親は学校側に加害者の名前を告げていじめを受けていると訴え出ました。学校側は被害者と加害者の双方から聞き取りを進めました。加害者側は「おごってもらっただけだ」などと説明したということです。金額も特定できず、事実関係に食い違いがあるとして、市の教育委員会にも報告しましたが、学校も市教委も重大な事態とは捉えず、それ以上の対応は行われませんでした。

不登校は小学校を卒業するまで続きました。このため両親は、直接市教委に調査するよう申し出て、第三者委員会による調査が開始されました。

生徒は、中学校にも登校できない状態が続いていて、現在はフリースクールに通っているということです。

第三者委員会の報告書

横浜市教育委員会は、去年12月、生徒の両親からの調査の申し出を受けて、法律に基づいて第三者委員会を設置しました。

第三者委員会は、学校関係者などから聞き取りを行い、今月2日、報告書をまとめています。

市教委によりますと、報告書では、男子生徒は転校した直後の小学2年生の時に名前にばい菌の「菌」を付けて呼ばれるなど、学校内でいじめがあったと認定しています。

また男子生徒は第三者委員会の調査に対し、小学5年生の時に「賠償金をもらっているだろう」と言われ、遊ぶ金として5万円から10万円を合わせて10回ほど払わされたと証言したということです。

さらに報告書では、学校と教育委員会の対応について、おととし生徒側から相談を受けていたのに第三者委員会を設置して調査に乗り出すなど、適切な対応を行わなかったとして「積極的に児童に対しての支援を行っていないことは、学校教育を行うものとしての見識を疑う。教育の放棄に等しい」と厳しく非難しています。

生徒側は、この報告書を個人名などを除いて原則すべて公表するよう市の教育委員会に求めていますが、市教委は「子どもの成長に十分配慮する必要がある」などとして、一部しか公開せず、具体的ないじめの内容は黒く塗りつぶされています。

原発避難の子どもへのいじめ 各地で

今回の横浜市と同じく、原発事故で避難した子どもたちがいじめに遭うなどのケースは各地で報告されています。埼玉県で避難者の支援をしている団体によりますと、去年、首都圏に避難している1000世帯余りに避難生活について尋ねたところ、学校の人間関係になじめず、不登校になった子どもが小学生と中学生で合わせて3人いたということです。

みずからも福島県からの避難者でボランティアとして避難者の相談に乗っている鈴木直子さんは「震災から5年たった今も、友だちから福島から来たことを理由に『放射能で病気になるからつきあいをやめるように親から言われた』と話す子どもたちもいます。こうした避難者へのいじめは氷山の一角だと思います」と話しています。

いじめ防止法 歯止めにならず

文部科学省などは大津市で中学2年の男子生徒がいじめを苦に自殺したことを受けて、3年前に「いじめ防止対策推進法」を整備しました。この法律では学校が「重大事態」と呼ばれる心身に重大な被害を及ぼすおそれがあるいじめを認知した場合、速やかに教育委員会に報告したうえで、第三者委員会を設置して調査するよう求めています。

しかし今回の横浜市のケースでは教育委員会がこどもへのいじめを重大事態と見なさなかったため、必要な調査が遅れる結果となりました。文部科学省児童生徒課の坪田知広課長は「法律に基づいた速やかな対応を取っておらず非常に残念だ。市の教育委員会にはなぜ適切な対応を取れなかったのかしっかりと検証してほしい」と話しています。

「氷山の一角 学校や親が知識を」

原発事故で全国に避難している子どもたちの心のケアなどに当たっている福島大学の本多環特任教授は、「震災と原発事故から5年半以上がたっても、避難した子どもが、福島にいたことを理由にいじめられたり、不登校に追い込まれたりする事例は、後を絶たない。横浜市のケースも氷山の一角で、同じように苦しんでいる子どもは、全国にたくさんいる」と警鐘を鳴らしています。

本多特任教授によりますと、震災直後に避難した当初からいじめられるケースだけでなく、5年以上がたち子どもや周囲が年齢を重ねるなかで、原発事故や賠償に関する知識をつけていじめが始まるケースもあり、大学生になって、「賠償金をたくさん使えるだろう」などと言葉をかけられた人もいるということです。

こうした問題について本多特任教授は、「いじめる側が、放射性物質や避難者の生活などについて十分な知識を持っていないことが多い。学校や親がきちんとした知識を身につけて、子どもに教えなくてはいけない」と指摘しています。

そのうえで、「横浜市のケースをきっかけに、避難している子どもたちがいじめられたり悩みを抱えたりしていないか、学校や親はもちろん近所の人なども改めて目を向けてほしい」と呼びかけています。

「きめ細かな対応が必要」

元小学校の校長で、いじめの問題に詳しい早稲田大学教職大学院の遠藤真司客員教授は、学校や教育委員会の対応が遅れたことについて、「被害に遭った子どもが、小学3年生で不登校になった時点で、学校が組織的かつ迅速に対応すべきだった。いじめは、どんどんエスカレートするのが特徴だが、学校や教育委員会には、『まだ大丈夫だろう』という思い込みがあったのが問題だ」と指摘しました。そのうえで、「原発で避難生活を続けている子どもたちにとって、生まれ育ったふるさとを離れて、新しく人間関係を築くのは、ただでさえ過酷なことだ。被災した子どもが通う学校では、子どもたち一人一人に変化がないか、声かけをし続けるなど、よりきめ細かな対応が必要だ」と話していました。




教育長、学校側の対応遅れ認める 原発避難先でいじめ

2016年11月16日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASJCH54K3JCHULOB022.html

福島第一原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒(13)が、いじめを受けて不登校になった問題で、横浜市教委の岡田優子教育長も会見を開いた。「1カ月以上不登校が続き、金品の問題が出た。小5の6月時点で重大事態とすべきだった」と話し、学校側の対応の遅れを認めた。男子生徒に対しては「申し訳ないことをした。子どもの成長のサポートを全力でやっていきたい」と話した。

「菌」「賠償金あるだろ」原発避難先でいじめ 生徒手記

第三者委の報告書によると、男子生徒は小学3年の6~10月に不登校になり、登校再開後もいじめがあった。多額の金品のやりとりがあった小学5年の5月末から再び不登校になった。

保護者は学校に相談。学校は金品のやりとりについて、他の児童の保護者からの情報で把握したが、黒沢弁護士によると、学校が加害児童らに事情を聴いたところ、「男子生徒が自分の意思でお金を渡した」などと答えたため、いじめと判断しなかった。男子生徒には聞き取らなかったという。

保護者は同年11月から市教委にも相談。弁護士らとも協議し、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態としての調査を求めた。市教委は今年1月になって第三者委を立ち上げたという。

黒沢弁護士は「学校も市教委も深刻な被害の疑いを把握しながら長期間放置した」と批判。岡田教育長は市教委の判断が遅れた理由について「わからない。検証したい」と説明した。

福島県教委によると、県内外に避難し、区域外で就学している小中学生は1万1433人(15年度)。小中学生の7%が区域外で就学している。避難先でのいじめについては調査をしていないという。(大森浩司、木村司)



原発避難いじめ問題 横浜市長が市教委に検証指示

2016年11月16日  NHK 
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161116/k10010771561000.html

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島県から横浜市に自主避難してきた現在中学1年の男子生徒がいじめを受けていた問題で、横浜市の林文子市長は学校や教育委員会のいじめへの対応が遅れたとして、当時の対応を検証するよう指示しました。

この問題は、原発事故で福島県から横浜市に自主避難してきた現在、中学1年の男子生徒が、転校してきた小学校で名前にばい菌の「菌」を付けて呼ばれるなどのいじめがあったと、今月、市の教育委員会の第三者委員会が認定したものです。

横浜市の林市長は、16日の会見で第三者委員会から学校や教育委員会の対応の遅れを指摘されたことについて、「全国的に重大ないじめが発生したことを受けて、『いじめ防止対策推進法』が制定されたのに、現場で活用できなければ全く意味はない」と述べ、当時の対応が遅れたことを認めました。

そのうえで教育委員会に対し、対応が遅れた理由など、当時の対応を検証するよう指示したことを明らかにしました。

また、林市長は、「何回も死のうと思った」などと生徒が手記に残していたことについて、「大変苦しく、つらい気持ちが伝わってきました。このような思いをさせてしまったことに胸が苦しい気持ちでいっぱいです。このような気持ちを抱かせる前にもっと寄り添った対応ができなかったのかという思いです」として謝罪しました。



原発避難でいじめ ネットで反響相次ぐ

2016年11月16日  NHK 
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161116/k10010771341000.html

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、横浜市に避難してきた現在中学1年の男子生徒が転校先でいじめを受けていた問題。公表された生徒の手記はネット上で注目され、ソーシャルメディアにはさまざまな声が投稿されました。

最も多かったのは、いじめや学校側の対応についての怒りです。

「命を守るために避難したのに命を捨てたくなる”いじめ”なんてするな、いじめられると本当に死にたくなるんだよ」「たくさんの大切なものを失ってそれでも頑張ろうとしている人になんてことするんだ。学校もひどい」「なぜ学校側は対応できなかったのか不思議でならない」「学校や先生は本当に何をやっていたの」といった憤りの声がたくさん投稿されました。

また、「子どもが『賠償金があるだろう』なんて知るはずもない、周囲の大人が吹き込んだのだろう」「大人だって福島県産の食品を差別しているのだから、子どものイジメを根絶できるわけない」など、大人の意識がいじめにつながっているという意見も見られました。

また、福島出身の人や、県外に避難した人たちからは、「出身地を言うのをためらった。『えっ!』って言われるんじゃないかって怖かった」「放射能持ってきやがった、と言われたことがある」と、大人でも同じような経験をしたという声が上がりました。

手記の最後に、生徒が「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」とつづったことについては、「強いな、すごいよ、その年齢で。力をもらえました、ありがとう。私も生きる」「自分よりも他者を思いやる気持ちにあふれている。胸がしめつけられた」など、小さな子どもがつづった決意に心を動かされたという意見が多く投稿されました。


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