2016/11/09

放射線・荒廃…戻れないのに 福島自主避難者「国の責任で住宅対策を」

2016年11月9日 朝刊 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016110902000130.html

ようやく住み慣れた新天地から、なぜ追い出されなければならないのか-。東京電力福島第一原発事故で避難した首都圏の自主避難者からは、来年三月に迫った福島県の住宅無償提供打ち切りに、困惑や怒りの声が上がる。 (中山高志)

福島県南相馬市から自主避難し、千葉県松戸市が借り上げたアパートに住む会社員女性(67)は「打ち切りで福島への帰還を強制する前に、除染の徹底などやることがあるはず」と福島県に憤りを向ける。自宅周辺は今も放射線量が比較的高い上、動物が入り込むなど住居の荒廃もひどく「戻るのはとても無理」と語気を強める。

避難先の千葉県は公営住宅の優先枠を今のところ設けていない。「前向きに生きていけるような方向を示してほしい」

独自に支援策を実施している自治体でも、そこからこぼれ落ちる避難者もいる。福島県いわき市から東京都東部の都営住宅に避難する主婦(38)は、都営住宅の自主避難者向け優先枠に応募したが、所得が要件をわずかに上回り門前払いに。転居先が見通せず、来春に小学生となる長女の通学先も決まらないまま。「福島は大好きだが帰るにはまだ早い。打ち切りは納得できない」

いわき市から埼玉県内の県営住宅に子ども二人と自主避難する会社員河井加緒理さん(35)の家族は、来年四月以降も継続入居が可能になった。この住宅の一般募集に応募し、たまたま抽選とならなかったためだ。

打ち切りが発表された昨年六月以降、「子どものために引っ越しは避けたい」と遠く離れた県庁に通い詰め、住宅確保策を講じるよう訴え続けた。埼玉県は優先枠を設けているが、自治体間で支援に濃淡がある現状に疑問を抱く。「避難に追い込まれたのは原子力政策のせい。国や福島県が責任を持って対策を打ち出すべきでは」

避難者の相談を受け付ける「避難の協同センター」(東京)には「都営住宅に当選したが間取りが半減してしまった」「打ち切り後、家賃を払い続けることができない」などの切実な声が寄せられる。瀬戸大作事務局長は「受け入れ自治体や福島県は、実態に即した支援策を打ち出すべきだ」と強調する。

自治体間の支援策のばらつきについて、福島県生活拠点課の担当者は「われわれからお願いしているところでコメントする立場にない」と話している。

「国や福島県が対策を打ち出してほしい」
と話す河井加緒理さん

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