http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201512/20151225_71044.html
2016年度当初予算案で、東日本大震災の復興特別会計は3兆2469億円となり、15年度当初を6618億円下回った。岩手、宮城両県で高台移転が進んだのが主な要因。ただ福島再生事業は15年度当初を上回った。被災自治体に事業費を一部負担させる「復興・創生期間」(16~20年度)の初年度となり、期間内の財源枠組み6兆5000億円のうち、対象額は約1兆9000億円で、3県の負担総額は約80億円と見込まれる。
◎福島再生/1兆円超へ大幅増額
福島第1原発事故からの復興・再生関連に1兆687億円を計上した。15年度当初の約7800億円から大幅な増額となった。
福島県内の避難区域について、帰還困難区域を除き17年3月までに避難指示を解除する政府方針の実現に向け、除染費に前年度比25%増の5249億円を充当した。
学校など復興拠点整備に活用できる福島再生加速化交付金には1012億円。除染廃棄物の中間貯蔵施設関連は、除去土壌の減容・再利用に関する技術開発費を含め1346億円を充てた。
新規事業は、原発事故で避難区域が設けられた被災12市町村向けの企業立地補助金に320億円。第1原発の廃炉や、ロボット開発などの国際研究拠点を浜通り地方に整備する「イノベーション・コースト構想」事業費として145億円を確保した。
被災12市町村の事業者の自立支援事業費には13億円を計上し、経営支援の専門家派遣などを展開する。
◎住まい・インフラ/高台・内陸移転進む
高台や内陸部への住宅と商店街の移転事業を担う復興交付金は、15年度当初比で1696億円減の1477億円を計上した。津波被害のリスクを減らす復興の根幹事業だが、16年度は移転を終える地域が増えるため、交付金支出はピークを過ぎた。
東北自動車道の東側地域と被災地を結ぶ幹線道路や、被災地内の沿岸部と内陸部を結ぶ道路の建設などに使われる社会資本整備総合交付金は1054億円。15年度当初(1171億円)とほぼ同水準となった。
被災した港湾や道路、農業施設の再建など災害復旧事業には5093億円を確保した。18年度の完成に向けて旧北上川の堤防のかさ上げを急ぐほか、気仙沼市の中島海岸などの防潮堤建設、農地や農業排水ポンプ施設の復旧を進める。
「復興のリーディングプロジェクト」と位置付けられる三陸沿岸道路や東北中央自動車道(相馬-福島間)など復興道路、復興支援道路の整備は、15年度当初から402億円を積み増し2376億円を用意した。
◎東北振興/追悼公園 5億3000万円
石巻市と陸前高田市に設置する国営の追悼・祈念公園(仮称)の整備に5億3000万円を確保した。園内の中核施設の設計費などで2市に半額ずつ振り分ける。福島県の浪江、双葉両町にまたがる沿岸部に設置する祈念公園に関しては、施設のコンセプトなど基本構想を調査するため4000万円を新規計上した。
国や自治体管理の空港の民間委託予算は6億円で、16年7月に民営化予定の仙台空港分として東急グループ7社が設立した「仙台国際空港」への引き継ぎ経費を盛り込んだ。
三陸復興国立公園関連は、自然歩道「みちのく潮風トレイル」の案内パネルのビジターセンターなどへの設置や案内標識の整備に8億8000万円を充てる。
岩手県南と宮城県北の北上山地を候補地とする超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」計画関連は、加速器技術の高性能化開発に5000万円、過去の国際的な大型科学プロジェクトの交渉経過分析に3000万円を見込んだ。
◎原子力政策/廃炉研究施設 41億円
福島第1原発の廃炉関連では、原子力規制庁が1~3号機にある溶融燃料(デブリ)取り出しに向けた臨界管理評価手法の整備費として8億8000万円を盛り込んだ。文部科学省も福島県富岡町に建設する廃炉の国際共同研究施設整備費などに41億円を計上した。
福島第1原発の廃炉関連では、原子力規制庁が1~3号機にある溶融燃料(デブリ)取り出しに向けた臨界管理評価手法の整備費として8億8000万円を盛り込んだ。文部科学省も福島県富岡町に建設する廃炉の国際共同研究施設整備費などに41億円を計上した。
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分では、経済産業省が処分技術調査費に36億円を充てた。
原発の稼働率などに応じて立地自治体に支払う電源立地地域対策交付金は、停止中でも稼働率を一律81%とみなす特例を見直し、15年度比で43億円減の868億円。県対象分は原発事故前の10年間の平均稼働率を採用、市町村分はみなし稼働率を78%に下げて交付額を算定する。経産省は自治体別の金額を公表していないが、東北の関係自治体も減額が見込まれる。
原発が再稼働した立地地域などを対象にした地域振興支援事業費は、23億円から55億円に増額した。
◎産業支援/グループ化補助 290億円
インフラ再建とともに復興の最重要施策となる産業支援事業には、15年度当初比305億円減の1374億円を計上した。
インフラ再建とともに復興の最重要施策となる産業支援事業には、15年度当初比305億円減の1374億円を計上した。
中小企業の施設復旧費などに充てられるグループ化補助金は290億円を予算化した。被災地の経済をけん引する水産加工業の販路回復促進事業として18億円を確保。流通や食品の専門家による指導経費から商品開発機器の整備費まで支援する。
観光を通じて復興を促進させる事業には50億円を計上し、15年度当初の5億円から大幅に増やした。原発の風評被害などで、急増する訪日客の効果を享受できていない東北への外国人観光客呼び込みを図る。
内訳は各地の誘客事業を支援する東北観光復興対策交付金32億円、プロモーション費に10億円。被災地での先進的な取り組みを後押しする「新しい東北」事業でも交流拡大モデル事業に4億円を充て、外国語を話せる観光ガイドの養成などに力を入れる。
◎指定廃棄物/各県処分へ270億円計上
福島第1原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場関連は、福島県富岡町にある既存の産廃処分場「フクシマエコテッククリーンセンター」での指定廃棄物などの処分費232億円を計上。県内各地に一時保管された指定廃棄物の集約処分を加速させる。
宮城県と関東4県への最終処分場整備には計270億円を、各県の建設予定地の地域振興や風評被害対策に計50億円を盛り込んだ。15年度も同額を計上したが、5県とも建設地が決まらず執行されなかった。
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