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福島県二本松に住む関久雄さん、ご家族を米沢に避難させ、福島の子どもたちの保養のため佐渡の施設「へっついの家」を存続させるべく東奔西走されている詩人です。ネットで詩を読ませていただいていましたが、関さんの声で、岩手出身の抑揚で聞く言葉たちは、また別格でした。2015年12月13日、大阪のバー「南庭(なにわ)」で福島の今を伝える詩を聞くことができました。朗読コンサート「南風と椎の木と毒と」の報告です。
2015年12月13日朗読コンサート「南風と椎の木と毒と」より=撮影・松中みどり |
初めてお会いする関さんは、だるま森さんがこう紹介された通りの人でした。
せおうひと(こちらは、だるま森さんの詩です)
せおうひとは東方から
古びた大きなリュックを
背負ってやってきた
太いゴムで束ねられた書類
くたくたのメモ帳
着替えの衣類
髪ブラシ
歯ブラシ
アイロン
そして丁寧に包まれた詩集
休憩時間、隣に座った関さんに、「アイロン、本当にいつも持ち歩いているんですか?」と聞いたら、「疲れて冷えた体に当てる。小型のアイロンに靴下をはかせてね。腎臓とか肝臓のあたりにね。温熱療法かな。免疫力をあげる、癌にならないようにって」。
ああ、そうか、そういうことなのかと思いました。癌という言葉に敏感になり、何か出来ることはないかなあと思い、体にいいことをやる気持ち、ちょっとだけ私にもわかります。私も乳癌のサバイバーなので。でも、と思いなおしました。「普通の」暮らしの中で病を得て、体調の変化に再発転移の兆候がないかとこっそり恐れを抱く私の気持ちと、今の福島で暮らし続ける関さんの気持ちとを比べて、「わかる」と言うのは申し訳ないです。保養キャンプで自分の体や友だちの体に小さなアイロンを当てる子どもたちを思うと、切なかったです。
朗読コンサートで読まれた詩ではありませんが、関さんの詩に「ヨウ素剤と昆布剤」という2014年に書かれた作品があります。
ひとつぶのヨウ素剤があったなら
よっつにわってお前たちに飲ます
という言葉から始まり、
あれから3年 甲状腺ガン 75人
うちの子どももA2だ おめさん A2ってわがっかい
のどに 水ぶくれがあるんだよ
もう国なんかあてにすんな
ヨウ素剤なんて待ってんな
昆布食うべ 昆布食って
生きのびて見せんべ
と終わります。
「詩の言葉でなら、福島の今が伝わる。聞いてもらえるということが分かった」と関さんは言いました。
「ある日、福島の話をしようと訪れた会場で、30分くらいで“うらやましい”という詩を書いたんです。 “私はみなさんがうらやましいです。マスクをつけずに空気が吸えるということが私はうらやましいです” それを読んだら、会場で泣く人がたくさんいたんです」
そして、関さんはこう続けました。「今の目標は週に1個詩を書くこと。今、250から300くらい書いているんですけど、出るんですよ。いくつでも。私の詩は、詩の形をとった福島の記録です」
今日の朗読コンサートのタイトルにもなった” 南風と 椎の木と 毒と “ という詩の中に、こんな言葉がありました。ゲンパツから出る毒も連れてきてしまった南風が、椎の木に言います。「あんたらは逃げられんから気の毒だ」 そしたら椎の木が言います。「なんも この山で生きるのが わたしのさだめ 千年かけて いやしていくさ」と。
いわきを通って最上を回って秋田に抜ける南風が、大阪の小さなバーの中を吹き抜けていきました。
この夜読まれた詩のひとつ「ただ一緒に泣くか」は、こんな風に始まります。
フクシマの人は風呂に入って着替えてから来て
福島から来たの?キタナイ!と言われ
泣いて浴場から帰って来た子どもたちよ
そして、こんな言葉が続いていきます。
セキさん、こんな時何て返したらいい
子どもにも そんなこというおとなにも
うーん そったら保養なんて行かねえ
東京だって あんたらだって 汚染されてんだぞい
おめさん 服買ってくれんのか
おらたち 檻の中さ閉じ込めておきてえのか
国と東電のせいだべしさ
好きでこったになったんでねえぞい
込み上げるドロドロの想いを
ゴックンと飲み込んで
福島でヒバクしました
髪の毛にも服にもカラダにも
放射能くっついて洗っても落ちません
それでもわたしも子どもたちも
何とか生きてゆきたいのです
ただただ一緒に泣くか
関さんが今、一番願っていることは、保養活動の拠点である「佐渡へっついの家」を存続させることです。へっついの家の維持費や運営費、保養事業の充実に使うため、基金を立ち上げられました。それが、「佐渡へっついの家保養基金」。福島で暮らす人々、特に子どもたちにとって定期的に線量の低いところへ保養に出ることは、本当に大切なことなのです。2011年の夏から佐渡ヶ島で始まった保養キャンプは、2012年11月から、古民家を改修した「保養センター佐渡へっついの家」で続けられています。佐渡の自然に親しみながら、生きる力を育む子どもたち。これまでに参加した子どもたちは延べ400名。ぜひ、この保養基金に温かい理解と協力をお願いします。
<振込先>
ゆうちょ銀行 振替口座番号 00590-1-102427 口座名 佐渡へっついの家
郵便局にある青色振替用紙をご利用下さい。手数料のご負担をお願いいたします。領収書が必要な方はその旨通信欄にご記入願います。
<連絡先>
一般社団法人 「福島とむすぶ佐渡へっついの家」
住所:〒952-1207 新潟県佐渡市貝塚575
電話:0259-57-2359
メール:sado.hettsuinoie☆gmail.com (☆を@に変えて下さい)
<関連リンク>
福島とむすぶ佐渡へっついの家
→ https://www.facebook.com/sado.hettsuinoie/
福島サポートネット佐渡(サポネ)
→ http://saponet-sado.jugem.jp/
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そして丁寧に包まれた詩集
休憩時間、隣に座った関さんに、「アイロン、本当にいつも持ち歩いているんですか?」と聞いたら、「疲れて冷えた体に当てる。小型のアイロンに靴下をはかせてね。腎臓とか肝臓のあたりにね。温熱療法かな。免疫力をあげる、癌にならないようにって」。
ああ、そうか、そういうことなのかと思いました。癌という言葉に敏感になり、何か出来ることはないかなあと思い、体にいいことをやる気持ち、ちょっとだけ私にもわかります。私も乳癌のサバイバーなので。でも、と思いなおしました。「普通の」暮らしの中で病を得て、体調の変化に再発転移の兆候がないかとこっそり恐れを抱く私の気持ちと、今の福島で暮らし続ける関さんの気持ちとを比べて、「わかる」と言うのは申し訳ないです。保養キャンプで自分の体や友だちの体に小さなアイロンを当てる子どもたちを思うと、切なかったです。
朗読コンサートで読まれた詩ではありませんが、関さんの詩に「ヨウ素剤と昆布剤」という2014年に書かれた作品があります。
ひとつぶのヨウ素剤があったなら
よっつにわってお前たちに飲ます
という言葉から始まり、
あれから3年 甲状腺ガン 75人
うちの子どももA2だ おめさん A2ってわがっかい
のどに 水ぶくれがあるんだよ
もう国なんかあてにすんな
ヨウ素剤なんて待ってんな
昆布食うべ 昆布食って
生きのびて見せんべ
と終わります。
「詩の言葉でなら、福島の今が伝わる。聞いてもらえるということが分かった」と関さんは言いました。
「ある日、福島の話をしようと訪れた会場で、30分くらいで“うらやましい”という詩を書いたんです。 “私はみなさんがうらやましいです。マスクをつけずに空気が吸えるということが私はうらやましいです” それを読んだら、会場で泣く人がたくさんいたんです」
そして、関さんはこう続けました。「今の目標は週に1個詩を書くこと。今、250から300くらい書いているんですけど、出るんですよ。いくつでも。私の詩は、詩の形をとった福島の記録です」
今日の朗読コンサートのタイトルにもなった” 南風と 椎の木と 毒と “ という詩の中に、こんな言葉がありました。ゲンパツから出る毒も連れてきてしまった南風が、椎の木に言います。「あんたらは逃げられんから気の毒だ」 そしたら椎の木が言います。「なんも この山で生きるのが わたしのさだめ 千年かけて いやしていくさ」と。
いわきを通って最上を回って秋田に抜ける南風が、大阪の小さなバーの中を吹き抜けていきました。
この夜読まれた詩のひとつ「ただ一緒に泣くか」は、こんな風に始まります。
フクシマの人は風呂に入って着替えてから来て
福島から来たの?キタナイ!と言われ
泣いて浴場から帰って来た子どもたちよ
「種をまくひとびと」だるま森+えりことセキヒサオより=撮影・松中みどり |
セキさん、こんな時何て返したらいい
子どもにも そんなこというおとなにも
うーん そったら保養なんて行かねえ
東京だって あんたらだって 汚染されてんだぞい
おめさん 服買ってくれんのか
おらたち 檻の中さ閉じ込めておきてえのか
国と東電のせいだべしさ
好きでこったになったんでねえぞい
込み上げるドロドロの想いを
ゴックンと飲み込んで
福島でヒバクしました
髪の毛にも服にもカラダにも
放射能くっついて洗っても落ちません
それでもわたしも子どもたちも
何とか生きてゆきたいのです
ただただ一緒に泣くか
関さんが今、一番願っていることは、保養活動の拠点である「佐渡へっついの家」を存続させることです。へっついの家の維持費や運営費、保養事業の充実に使うため、基金を立ち上げられました。それが、「佐渡へっついの家保養基金」。福島で暮らす人々、特に子どもたちにとって定期的に線量の低いところへ保養に出ることは、本当に大切なことなのです。2011年の夏から佐渡ヶ島で始まった保養キャンプは、2012年11月から、古民家を改修した「保養センター佐渡へっついの家」で続けられています。佐渡の自然に親しみながら、生きる力を育む子どもたち。これまでに参加した子どもたちは延べ400名。ぜひ、この保養基金に温かい理解と協力をお願いします。
2015年8月へっついの家での夏キャンプ 「福島とむすぶ佐渡へっついの家」Facebookより |
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