2015/12/26

社説【原発事故避難】家族の苦悩は続いている

2015年12月26日 高知新聞
http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=349535&nwIW=1&nwVt=knd

福島第1原発事故で家族ばらばらの暮らしを余儀なくされた人は多い。内閣府が避難した福島県内の住民を対象に実施したアンケートでも、いまなお家族の離散などに苦しんでいる実態が浮き彫りになった。

回答した約2万人のうち、事故が起きた2011年3月11日から4月末までの間に9割以上の人が避難した。しかも、避難先は転々とし、平均で3・4カ所。5カ所以上という人も2割に上る。

その後も避難生活は続いた。同年5月からの3年間に4分の3の人が避難先を移っている。ひとところに落ち着くことができない点だけをとっても、心身などの負担はかなり大きかったに違いない。

この間に家族構成が変化したのは約5割。一緒に暮らさなくなった家族がいる人は全体の約4割、約8千人に上る。理由(複数回答)は「自分や家族の仕事の都合」が約5割で最も多く、「子どもの学校」が続く。

「放射線の影響が不安」や「家族の意見が分かれた」も少なくない。放射線への懸念をめぐって、家族にあつれきが生まれたといった例はよく見聞きした。

家族構成に変化があった人のうち、半数近くが困ったこととして「寂しくなった」と答えている。事故前の親子や3世代がそろった穏やかな暮らしを考えれば、当然だろう。

心理面にとどまらない。「生活費の負担が増した」「将来の見通しが立たなくなった」と回答した人も多い。家族ばらばらの暮らしが現在の家計はむろん、今後の生活設計にも深刻な影響を及ぼしていることがみてとれる。

国は放射線量が比較的低い「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」を17年3月末までに解除する方針を示してはいる。だが、9月に全町で解除した楢葉町でも帰還した住民はまだ多くない。

職住などの生活環境が整っていない上、放射線への不安は根強い。避難先で生活の再建を進めている人もいる。帰還するかどうかをめぐって意見が分かれ、離れ離れの暮らしを続ける道を選ぶ家族もあるだろう。

家族に離散を強いる現状は原発事故がもたらす影響の甚大さを物語っている。国は自治体の再生を着実に進めるとともに、避難している人たちへの支援を充実させる必要がある。

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