2015/12/11

自主避難 本音聞かせて 福島、戻った人と残った人の交流図る

2015年12月11日 日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG11H0U_R11C15A2CC0000/

東京電力福島第1原子力発電所事故が起きた福島県で、自主避難した後に戻った人と、避難しなかった人との交流を進める取り組みが始まっている。自主避難者は戻った後、放射線をめぐる考え方の周囲とのずれや避難への負い目を感じ悩むことも少なくないという。支援に携わる関係者は「不安やわだかまりをなくせるよう受け入れ態勢を整えたい」と話している。

11月下旬、福島市の交流施設「みんなの家@ふくしま」で母親同士が語り合うイベント「ままトーク」が開かれた。自主避難から戻った人や避難しなかった人ら7人が、食べ物や子供の遊び場などをテーマに約2時間、意見を交わした。

3歳の長男と新潟県に自主避難し、今年1月に戻った40代女性は「自分の放射線への考えに共感してもらえたり、違いを認めてもらえたりすると安心できる」。避難しなかった女性は「放射線を気にしていないわけではない。でも、気にしすぎても疲れるから難しい」と語った。

トークを主催した福島市のNPO法人「ビーンズふくしま」担当者の富田愛さん(45)によると、自主避難者の中には「ようやく帰ってきたのか」「まだ放射線を気にしてるのか」などと家族や知人に言われ、自分の考えを表に出せなくなり孤立感を深めるケースも少なくない。

避難しなかった人の中にも「それでよかったのか」と迷いながら生活している人もいる。トークは「それぞれの選択を尊重しあう環境を広げたい」との思いから始めたもので、今後も不定期で開催するという。

自然の中で子供の教育に取り組むNPO法人「福島県自然体験合校協会」(郡山市)と、山形県に避難した母親らでつくる「山形避難者母の会」も10月から共同で、福島県内の放射線量の低い地域に母子を保養に連れて行く活動を始めた。

避難した人と避難しなかった人の双方が参加。宿泊先で親子マッサージや料理教室、放射線への考えを語り合う懇親会を開いている。

母の会代表の中村美紀さん(40)は昨年、3人の子供とともに山形県から夫の暮らす郡山市へ戻った。玄関先で買い物袋を地面に置く夫と「放射性物質が付くかも」「気にしすぎだ」と口論になったことも。「福島と避難先では放射線についての考え方に差がある。帰ってきて孤独を感じた」と話す。

福島県は2017年3月で自主避難者への避難先での住宅無償提供を打ち切る。昨年末時点の推計で約2万5千人に上る自主避難者は戻るかどうか選択を迫られる。

中村さんは「避難を続ける人、避難から戻る人、避難しなかった人、みんな福島への愛着を持つ県民だ。それぞれが分断しないよう、新たな支援の形を考える必要がある」と話している。

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