2015/12/29

福島県、森林除染で国に要望へ 効果的対策を求める


2015年12月29日 福島民友

環境省が生活圏から20メートルの範囲と日常的に人の出入りがある場所を除く森林は原則として除染しない方針を固めたことを受け、県は来年1月4日、同省に対して森林全体の除染に向けた効率的、効果的な除染の研究、実施などを要望する。

内堀雅雄知事は28日の定例会見で「森林除染や放射性物質対策は何よりも県民理解を得ながら進めることが重要で、国は十分な説明責任を果たすべき。引き続き効果のある対策の構築も求めたい」と語った。

要望では、森林の斜面が急で土壌が宅地近くまで流れ込み、放射線量が上がる危険性のある場所などで、実施する具体的な対策の提示なども求めるとみられる。

また4日は自民党県連も同省に対し、森林の放射性物質対策などを要望する。

森林除染をめぐって国は、住宅圏やキャンプ場などについては除染しているが、それ以外については方針を示していなかった。環境省が21日、森林全体を除染することは物理的に困難で、除染による土壌流出など悪影響もあるとし、森林の大半の除染を見送る方針をまとめた。


【森林除染方針】何とも割り切れない

2015年12月29日 福島民報 
https://www.minpo.jp/news/detail/2015122927712

環境省が民家や農地から20メートルを超えて離れた森林を除染しない方針を固めた。生活圏に影響を与える森林からの放射性物質の飛散は確認されず、線量低減のために落ち葉を除去すると土砂流出などが懸念されるために見送るという。勝手にごみをばらまいておいて「生活に影響がないので片付けません」という話が世の中で通用するのか。納得がいかない。

県内の森林面積は約97万ヘクタールで県土全体の約7割を占める。国の推計によると、このうち国直轄で除染をする「除染特別地域」の森林面積は推計で約8万ヘクタールに上り、国の財政支援を受けて市町村が除染に当たる「汚染状況重点調査地域」の森林を合わせると森林全体の6割近くに達する。環境省は生活圏から20メートル以内とキャンプ場や遊歩道、キノコ栽培で人が立ち入る場所に限って落ち葉や堆積物の除去などに取り組んできたが、それ以外のエリアの除染方針は示していなかった。

井上信治環境副大臣は今回の方針について「全てを面的に除染するのは物理的にも困難で、悪い影響の方が大きい。住民にとって一番良い手法を考えた結果」と説明した。現状では合理的で現実的な判断だとしても、割り切れない思いは残る。農地同様、山林は林業関係者が先祖から受け継いできた財産であり、生業[なりわい]の場だ。日常的に人の入らない山であっても、古くから人々の信仰の対象となり、伝統文化の源となっている地域は少なくない。その意味で山林は生活空間と密接不可分な場所といえるだろう。

また、木材は県内の最大の地域資源だ。木材を利用した新たな建築材CLT(直交集成板)が注目を集める中、25日には利用促進に向けて県内の建設・木材会社4社が関東以北で初の事業会社を設立した。2020年の東京五輪・パラリンピックの関連施設整備に向け、県産の建築材を供給する態勢を整える。県は浜通りの復興拠点の一つとして大熊町に国内最大規模の生産工場建設を目指している。今回の環境省の方針がこうした流れに水を差さないかも気に掛かる。

環境省は林野庁と連携し、林業従事者の被ばく低減対策などに取り組むとしているが、不十分だ。生業を失う人への賠償と生活再建支援はもちろん、風評被害防止に向けた情報発信の強化は欠かせない。また、地域の伝統文化を育んできた山と林業の再生に向け、新たな除染技術の開発に継続して取り組んでいく必要がある。「できません」では済まされない。(早川 正也) 

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