2015/12/26

福島第1原発事故 県の自主避難者家賃補助 先の見通しなく、縮小していく支援 /福島


2015年12月26日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20151226/ddl/k07/040/033000c

「決まっているのは避難を続けるということだけ。補助が出ても焼け石に水の金額で、先の見通しが立ちません」。県が自主避難者への住宅無償提供を打ち切った後の家賃補助について最大月3万円を補助すると発表した25日、妻と1〜7歳の子ども4人がさいたま市に母子避難を続ける郡山市の中学教諭、瀬川芳伸さん(53)はため息交じりに語った。【喜浦遊】
「原発、安定してないのに」

子どもへの放射線の影響を心配し、妻由希さん(40)が子どもを連れ、さいたま市内の公務員宿舎で避難生活を始めて3年が過ぎた。震災がなければ取り壊す予定だった老朽化の激しい建物。知人から教えてもらって入居し、他にも複数の避難者がいる。今回の無償提供打ち切りで退去者が相次げば、取り壊しの可能性が出てくる。

県は25日、家賃補助について母子避難の世帯は二重生活を考慮して要件を緩和すると発表。瀬川さんの家族も家賃補助の対象になる可能性がある。ただし、補助は最大月3万円で2年間に限られる。

現在住む宿舎の取り壊しを見越して由希さんは転居を考えているが、子どもたちが地元の小学校や幼稚園になじんでいるため、転居するなら近くがいい。由希さんは多発性硬化症という神経系の難病を抱え、1歳の四男も心臓に疾患があるため通院の利便性も考える必要がある。「でも、市内で5人が暮らせる住宅となれば、家賃は月10万円は下らない」と由希さんは語る。

瀬川さんは親戚から「これを機に奥さんや子どもを福島に戻したら」と言われる。「郡山市の自宅周辺の放射線量を測ると毎時0・1マイクロシーベルト前後。さいたま市だと毎時0・03〜0・06マイクロシーベルト。気にしすぎと言われるかもしれないが、低線量被ばくの健康への影響や福島第1原発の廃炉の行程がはっきりしない以上、幼い子どもは避難させたい」と瀬川さん。家族一緒の生活が望ましいが、自身も拡張型心筋症という心臓疾患を抱え、「年齢と持病を考えたら転職先はない。4人の子どもの生活を支えるには今の仕事は手放せない」と、週末ごとにさいたま市に通い続ける。

8年前に買った郡山市の自宅はローンを組まなかった。今後、自宅と避難先の家賃を二重に負担することはないものの、貯蓄は切り崩され、2世帯分の光熱費だけでも負担は大きい。週末、さいたま市のファミリーレストランではしゃぐ子どもたちに目を細めながら、瀬川さんはつぶやいた。「原発の状態は安定しているとは思えないのに、支援はなくなっていく。避難を続けたいと思う私たちがおかしいのでしょうか」

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