2016/02/23

福島の小学生、「科学する心」を学ぶ 東京都市大准教授が出張授業


2016年2月23日 OVO
http://ovo.kyodo.co.jp/news/life/a-687300 

福島県の中央部を南北に走る阿武隈山地にある芦沢小学校(同県田村市船引町、林文子校長)で2月17日、科学教室「ふくしまを守ろう!食料生産活動を通して福島の環境を考える」の2015年度最終授業が開かれた。東京都市大学工学部原子力研究所の岡田往子准教授が、「放射性セシウムとお米のおはなし」と題して授業。4年生と5年生の児童15人が熱心に耳を傾けた。

【科学の心をわかりやすく説明した岡田准教授の授業】
芦沢小は、福島第1原発まで直線距離で約40km。郡山市の中心部からは東に30キロほど入った山間地にある。児童数は現在50人と少なく、異なる学年の児童が一緒に授業を受ける「複式学級」が行われている。2011年3月の東日本大震災で、地域の人から放射線濃度に対する不安の声が上がったため、原子力安全問題の研究者である岡田准教授が協力。同小で出張授業の「科学教室」を始めた。

授業のテーマは大人でも難しい。岡田さんは、こどもたちを飽きさせないよう紙芝居を使って説明。「原子の構造」から説き起こし、「なぜ放射線が発生するのか」「放射線をきちんと測定して身の回りの安全を確かめることが大事」と身近な事例を取り上げながら、テーマを掘り下げていった。

【廊下に張り出された子どもたちの手書き資料。学習の成果が表れている】
この日の授業に備え、子どもたちは、担任助川由美教諭の指導でしっかり予習を重ねた。学校の廊下には、放射線セシウムの「半減期」(量が半分に減るまでの期間)について、「セシウム134 2年間」「セシウム137 30年間」と明記した子どもたちの手書き資料が張り出されている。

子どもたちは「どんな元素が放射線を出すのか」「元素ごとに放射線が減る半減期が違う理由は」など、次々と質問。岡田さんは丁寧に回答した後、「お米は、放射線の有無がしっかり科学測定され、食べても安全なものが出荷、販売されている。正しい知識を学びましょう」と“科学する心”の大切さを強調して授業を締めくくった。

岡田さんによると、放射線セシウムというのは、元来、大自然の中には存在しない。原子力発電所の事故で飛び出したもの。だから測定をし、数値がどう変わってきているかをチェックすることが重要という。

出張授業をこれからも続けるという岡田さんの願いは、ただひとつ。「子どもたちが理科好きになって、科学的に物事を考える人になってほしい」

【うどんを伸ばす子どもたち】

授業に先立ち、地元産の地粉を使ったうどん作りが午前中、家庭科調理室で開かれた。子どもたちのほか、保護者や地域学習ボランティアらも参加した。

前掛、頭巾、マスク姿の子どもたちは慣れない手つきで挑戦。ヒノキの厚板でつくられた「のし板」でうどんを伸ばし、専用の包丁で切ると、見事な手づくりうどんが出来上がった。室内の熱気で曇った調理室の窓からは、時折舞う小雪がかすかに見えた。

正午過ぎの昼食時間には、教室よりも一回り大きい「集会室」に子どもたちと父母ら合わせて

30人余りが集まった。地元産の食材で作ったけんちん汁や、荏胡麻(えごま)入りの皮が特長の饅頭(まんじゅう)に舌鼓を打った。リーダーの八木沼歩大(あやと)君が「皆さん用意はいいですか、けんちん汁、うどん、荏胡麻のお饅頭いただきます」と宣言し、みんなが唱和して昼食会が始まった。クイズ形式の「阿武隈山地で育った福島牛と外国産の牛肉の食べ比べ」もあり、大盛り上がりだった。

【「うれしい」「ぼくらの記事が新聞に載ったよ―」。紙面を手にして大喜び】
この日は、県内の地元テレビ局や福島民報社が授業の様子などを取材。「福島民報」の特別版は午後4時すぎに、電子メールで子どもたちの手元に届けられた。普通の新聞よりも一回り小さい紙面に「田村市立芦沢小の児童ら 手打ちうどん体験と“たべる”を学ぶ」の見出しが踊る。紙面を手に子どもたちは大喜びで家路についた。

岡田准教授と並んで「科学教室」に講師として参加したJA福島中央会の小原稔さんは「福島の食べ物は危ないと思っている人がいるが、安全であることを知ってほしい。イベントを通して、食べることは大事だということを知ってほしい」と語っていた。

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