2016/02/24

東北支援 感謝し帰郷…福島避難 県非常勤池添さん 来月離任  兵庫

2016年02月24日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/local/hyogo/news/20160223-OYTNT50307.html

東日本大震災で福島県から神戸市に避難し、兵庫県の非常勤嘱託職員として東北の被災地の支援業務を担ってきた池添麻奈さん(33)が、3月で仕事を終える。約5年間、現地へ向かうボランティアに、「自分が戻れない負い目を感じる気持ちを軽くしてくれた」と振り返る。今後は「第2のふるさと」への感謝を胸に、東北に帰って新たな人生を歩むつもりだ。(白櫨正一)

2011年3月11日、池添さんは講師として勤めていた福島県富岡町の中学校で地震に遭った。福島第一原発の事故で、翌日には同町から避難。同月末には同県南相馬市の実家にいた両親と一緒に、親類が手配した神戸市の兵庫県営住宅に移り住んだ。

同年5月、県非常勤嘱託職員に採用され、県社会福祉協議会が運営する「ひょうごボランタリープラザ」(神戸市)に出向。東北の被災状況を把握してホームページで必要な支援情報を発信し、ボランティアがより活動しやすい環境作りに努めてきた。

勤めて約1か月後。地元が気になり、職場で「帰りたい。避難して何もできないのが悔しい」とこぼした。これを聞いた上司が、池添さんと同じ境遇の避難者を集め、現地に派遣する「里帰りボランティアバス」を企画。同年7月に実現したことが何よりもうれしかった。

神戸での5年間、「将来への不安が募り、気持ちが後ろ向きになりがちだった自分を前に向かせてくれたのは、東北のために活動を続けてくれるボランティアの姿」と話す。

先月も、ボランティア活動をテーマに神戸市内で開いたフォーラムで、出席者の一人が「東北のことを忘れたらあかん。考え続けること、一緒に悩むことが大事なんや」と熱く語っていた。阪神大震災を経験した兵庫の人ならではの強い思いを感じた。

一方で、ふるさとへの思いは日に日に募った。昨秋、市内を歩いていた時、虫の声が耳に入ってくると、突然涙があふれた。頭に浮かんだのは、四季折々の自然豊かな福島の情景だった。定職に就ける年齢も考え、東北へ戻ることにした。兵庫での経験も踏まえ、教員以外の道も模索するという。

25日には市内で「被災地に心を寄せて5年」をテーマに講演する。池添さんは「お世話になった兵庫県にどのような恩返しができるか。これからじっくり考えていきたい」と語っている。


「受け入れてくれた兵庫県の皆さんには感謝の一言しかない」と語る池添さん
(18日、神戸市内で) 

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