2016/02/21

原発避難者の不動産取得7100件 帰還断念、移住進む

2016年2月21日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASJ2M0JCHJ2LUTIL062.html

東京電力福島第一原発事故による国の避難指示で避難した人が、全国の避難先で新たな住まいを得ようと取得した土地や家屋が、計約7100件に上ることがわかった。原発事故から間もなく5年がたとうとしているが、避難生活が長引き故郷への帰還をあきらめ、東電の賠償も進んでいることから、避難先に移住する人が増えている。

避難指示区域に家を持つ人が避難先などで土地や家屋を得ると、一定要件を満たせば、不動産取得税が軽くなる特例措置がある。朝日新聞が全都道府県での適用件数を調べた。避難先に移住しても、住民票を動かさない避難者が多く、移住者の全体像はつかみにくい。不動産取得税の特例適用件数は移住の傾向を示す値と言える。

その結果、39都道府県で特例の適用を受けていた。避難指示区域以外の福島県内で住宅を得るために適用を受けた例が最も多く、6103件に上った。次いで茨城(290件)、栃木(152件)、宮城(121件)と、隣県での適用が多かった。

年度別にみると、措置が始まった2011年度は63件だったが、12年度は686件と急増。13年度1463件、14年度2625件と増え続け、15年度は15年末または今年1月末時点で2275件。これまでの累計は7112件に達した。

プレハブ仮設住宅や県による借り上げ住宅から、賃貸住宅を自費で借りて移った例は含まれないため、移住者は実際にはさらに膨らむとみられる。

各県の担当者は「消費増税前の駆け込み購入の反動で今年度当初はにぶかったが、年度末にかけて適用の申請が増えるのではないか」と話す。福島県幹部は「避難先での仕事や近所付き合いなど生活基盤が固まってきた。13年以降は東電の賠償支払いも進み、これを元手に新居を買う人が増えたようだ」と分析する。

国の原子力損害賠償紛争審査会は13年末、避難先で住宅を確保できるよう賠償の増額を決めた。これを受け、東電は14年4月から新基準に基づく賠償の支払いを進めている。東電が個人へ支払った賠償金の支払額は今年1月末までに2兆5766億円となっている。

15年秋の時点で、避難指示区域からの避難者は約2万5千世帯、約7万人。復興庁などが行った意向調査では、福島第一原発のある双葉町の回答者の55%が「戻らないと決めている」(昨年12月実施分)と答えるなど、避難指示が出た自治体の大半で帰還希望者は少数派だ。(中村信義、伊藤嘉孝)

「移住者」向け特例措置の適用件数の推移

《原発避難者向け不動産取得税の特例》 土地、家屋で各1件と数える。土地付き一戸建て住宅なら計2件、借地上の戸建てやマンションは1件。避難者が取得した住宅の棟数とは異なる。一方、省エネやバリアフリーの機能が高い住宅を取得すれば、誰でも不動産取得税が軽くなる特例もある。この特例を利用し、原発避難者向けの特例を使わない避難者もいるため、避難先での住宅取得件数はさらに多いとみられる。

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