http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016021902000088.html
東京電力福島第一原発事故の影響で、福島県から京都市内に自主避難した四十代の夫婦と子どもが、仕事を失った上、精神疾患を発症したとして、東電に計約一億八千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は十八日、夫婦への計約三千万円の支払いを命じた。
原告側の代理人によると、自主避難者に対する東電の賠償責任が認められた判決は初めてとみられる。
認容額は原子力損害賠償紛争解決センターの裁判外紛争解決手続き(ADR)で提示されていた約千百万円を上回った。原告側は「ADRでの提示額に納得いかなくとも諦める必要はないと判決が先鞭(せんべん)をつけた」と評価した。
判決によると、夫は会社を経営していたが、二〇一一年三月の原発事故を機に自主避難を開始。避難後に不眠症やうつ病になり、同五月ごろ、就労不能状態になった。
三木昌之裁判長は判決理由で「夫が発症した不眠症とうつ病は、原発事故が主な原因の一つ」と認定。夫婦がそれぞれ求めていた就労不能による損害に ついても事故との因果関係を認めた。その上で、夫婦の休業に伴う損害計約二千百万円や自主避難に伴う費用などを賠償すべきだとした。
転居や移動の費用、賃料なども一部を認容したが、避難前に住んでいた地域の放射線量などを基に、自主避難を続ける合理性があった時期は一二年八月末までとし、以降の分は退けた。
慰謝料の額は「住み慣れた福島県から地縁のない土地への転居を余儀なくされ、安定した生活が失われた」として、夫は百万円、妻は七十万円と判断。子どもは事故後、東電が既に支払った分以上の支払いを認めなかった。
判決後、原告は弁護士を通じて「当面の生活はできてほっとしたが、将来の生活の見通しは付かない」と心境を明らかにした。
福島県によると、昨年十月末時点で、避難区域外から県内外への自主避難者は推計で約七千世帯、約一万八千人。文部科学省によると、ADRは昨年末までに約一万八千件が申し立てられ、既に約一万三千件が和解した。
◆判決精査し対応
<東京電力の話> 今後は判決内容を精査し引き続き真摯(しんし)に対応していく。
◆指針超えに意義
<立命館大法科大学院の吉村良一教授(環境法)の話> 原発事故の避難者に対し、東京電力はこれまで原子力損害賠償紛争審査会の中間指針で定められた金額しか賠償をしない姿勢を取ってきており、今回の判決が指針の範囲を超えて賠償を認めたことは大きな意義がある。
<立命館大法科大学院の吉村良一教授(環境法)の話> 原発事故の避難者に対し、東京電力はこれまで原子力損害賠償紛争審査会の中間指針で定められた金額しか賠償をしない姿勢を取ってきており、今回の判決が指針の範囲を超えて賠償を認めたことは大きな意義がある。
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