2016/03/15

福島第一原発周辺の海で巻貝や二枚貝が減少 放射性物質の南下か?

2016年03月15日  ハザードラボ
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/3/13076.html

東京電力福島第一原子力発電所の半径20キロ圏内に生息する無脊椎動物の生息量を調べた結果、原発に近づくにつれて巻貝などの種類が減少していることが国立環境研究所や放射線医学総合研究所などの調査で明らかになった。

津波の被害を受けた千葉県から岩手県までの沿岸各地での調査結果との比較から、生物の減少は津波によるものだけとは考えにくく、放射性物質の被ばくによる影響が指摘されている。

研究グループは原発事故から9カ月後の2011年12月14日を皮切りに、以降、2013年まで毎年、千葉県から岩手県までの沿岸地域で調査を行った。調査では潮の満ち引きで露出と水没を繰り返す「潮間帯」に生息する「イボニシ」などの巻貝やフジツボやヤドカリなどの甲殻類の分布を観察した。

原発から半径20キロ圏内の16地点で行った最初の調査では、楢葉町でイボニシが1個体採集されただけだった。翌2012年の4月〜8月にかけて、千葉県から岩手県の43地点で調査を行ったところ、原発に近づくほど潮間帯に生息する無脊椎生物の種類が減少することが明らかになった。

東日本沿岸の潮間帯に生息する無脊椎動物の種類数とイボニシとチヂミボラの生息密度
(2012年調査/国立環境研究所) 


このうちイボニシは福島県の広野町から双葉町までの30キロの範囲で全く採集されなかったほか、大熊町では「チシマフジツボ」「ベッコウガサガイ」「タマキビ」の3種類しか見つからなかった。しかも1平方メートルあたりの分布密度が低く、個体の大きさも5ミリ前後とかなり小さかった。

次に2013年5〜6月にかけて茨城県と福島県、宮城県の7地点で無脊椎生物の生息分布を調べたところ、原発の南側にある大熊町と富岡町で生物の数が明らかに少なくなったという。

生物の種類に関しては、全体的に軟体動物、節足動物、ゴカイなどの環形動物の順で多く、最も多くの種類が観察されたのは茨城県神栖市の25種、最も少ないのは原発から1キロほどの大熊町の8種類だった。

研究グループは「大津波の被害を受けた岩手県や宮城県、福島県北部ではイボニシが採集されたことから、福島第一原発周辺の、特に南側の地点で潮間帯生物が減少したという調査結果は、津波だけが原因だとは言えず、原発事故によって引き起こされた可能性がある」と指摘し、「原発事故で海洋中に漏れ出たおそれのある放射性物質は、北から南下する親潮の流れで南下した可能性がある」と述べている。

研究グループは、今後も現地調査を続けながら、潮間帯生物の回復状況を追跡していくと話ている。なおこの研究成果をまとめた論文は、英科学誌「サイエンティフィック・レポート」に掲載された。

2013年に茨城県、福島県、宮城県の7地点で、50センチ四方に生息する生物の数と密度を調べたグラフ。
紫色の星印と点線による円は、福島第一原発と半径20キロ圏内を示す
(国立環境研究所)

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