2016/03/12

原発事故5年 福島の漁業 本格再開に課題

2016年3月12日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160312/k10010440511000.html 

福島県沖でとれる魚介類の放射性物質の濃度は、福島第一原子力発電所の事故から5年が経過して大幅に低下し、ここ1年ほどは国が定めた食品の基準を超える魚介類はとれていません。しかし、漁の本格的な再開に向けては漁業関係者の間でも風評被害が懸念されるなどとして、いまだ慎重な意見が少なくなく、専門家は「再開に向け、消費者の信頼をさらに深めるために、調査のやり方などを改善していく必要がある」と指摘しています。

水産庁と福島県のまとめによりますと、5年前に原発事故が起こった直後は福島県の沿岸や沖合で行った調査でとれた魚介類の半数以上から、現在の国の基準である1キログラム当たり100ベクレルを超える放射性セシウムが検出されていました。

しかし、その後、放射性物質の濃度は低下を続け、去年1年間に調べた8500余りのサンプルのうち、国の基準を超えたのは、去年3月以前に採れた4つだけでした。



魚介類の濃度が下がった理由について、東京海洋大学の石丸隆特任教授は、海水からは放射性セシウムがほとんど検出されなくなっているほか、海の底にすむゴカイなど魚の餌となる生き物に含まれる放射性セシウムの濃度も大幅に低下したためだと指摘しています。

福島県沖では、現在、出荷制限が続くヒラメなど一部の魚介類を除いた72種類で試験的な漁が行われていますが、本格的な漁の再開については風評被害が懸念されるなどとして地元の漁業組合などから慎重な意見も多く、福島県の去年1年間の水揚げ金額は6億円余りと、震災前の20分の1程度にとどまっています。

石丸特任教授は「事故から5年たち、福島県沖では本格的に漁業を再開しても問題がないレベルにまで影響は小さくなっている」としたうえで、「再開に向けては、あえて放射性物質の影響が出やすい魚種や海域に絞って継続した調査を行い、そこでも大丈夫だというデータを示すなど、消費者の信頼をさらに深める対策を必要がある」と話しています。

0 件のコメント:

コメントを投稿