http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160301/k10010426641000.html
東日本大震災の発生から5年になるのを前に、NHKが岩手・宮城・福島の3県の被災者や原発事故の避難者を対象にアンケートを行い震災以降の「避難や転居の回数」を尋ねたところ、3割近くの人が「5回以上」繰り返したと回答しました。合わせて10回以上と答えた人もいて、震災や原発事故の影響の大きさが改めて浮き彫りになっています。
アンケートは、NHKが、岩手・宮城・福島の3県の被災者や原発事故の避難者合わせて4000人を対象に、去年12月から先月にかけて行い、1209人から回答を得ました。
この中で、「震災以降に避難や転居した回数」について尋ねたところ、「5回以上」繰り返したと回答した人は28%に上りました。県別に見ると、岩手県と宮城県がそれぞれ平均で2.7回だったのに対し、原発事故によって今も自宅に戻ることができない人が多い福島県は平均で4.6回と多く、10回以上という回答も13人いました。
「住まいが変わったことで家族に影響があったか」との設問に対しては、「大きな影響があった」が46%、「多少影響があった」が36%と、合わせて82%の人が影響があったと回答しています。具体的な影響を複数回答で尋ねたところ、「近隣との交流が減った」が39%、「体調が悪化する人が出た」が33%、「家族が別々に暮らすことになった」が29%、「家族関係が悪化した」が12%などとなっています。
また、転居回数と影響の大きさについてみてみると、「大きな影響があった」と回答した人の割合は、回数が4回以下の人が39%だったのに対して、5回以上の人は61%とおよそ1.5倍となっています。具体的な影響でも、「家族関係が悪化した」や「体調が悪化する人が出た」と回答した人の割合は、転居回数が多いほど高くなる傾向が見られました。
福島県南相馬市68歳女性
「震災以降、避難先として親族や知人の家などを転々、5か所目が今の仮設住宅です。震災から1年もたてば自宅に戻れると思っていましたが、いまだに仮設住宅での暮らしが続いています。母は94歳、今も自宅に帰りたい帰りたいと言い続けています。普通の生活がどれほど幸せなことだったのかと思います」。
宮城県東松島市47歳女性
「当時、中学生だった長男は仮設住宅で受験勉強、高校を卒業して就職しました。狭い仮設住宅での勉強は大変だったと思います。今、中1と高2の娘も勉強に集中できずにいます。住宅が早く再建できていれば、有意義な高校生活や受験勉強ができたのではないかと親としては申し訳ない気持ちでいっぱいになります。5年はあまりにも長いです」。
福島県浪江町45歳女性
「震災のとき、中学2年と小学6年と3年の3人の子どもがいました。避難のため学校を転々とし、仮設住宅に落ち着いたときは1年後でした。いちばん上の子は修学旅行の楽しさも、友人との楽しさも知らずに高校受験となり、心が折れてしまいました。下の2人の子も友達のつくり方が分からず、1人でいることが多くなってしまいました」。
福島県富岡町80歳男性
「転居を10回しました。今は災害公営住宅で暮らしています。80歳になりました。この年になって、自宅に戻って何をするのでしょうか。今の生活では年齢のことを考えると未来はありません。前の生活に戻ることはもう無理です。長すぎる気がします」。
福島県南相馬市35歳女性
「仮設住宅の生活でカビやハウスダストがひどく、子どもがぜんそく気味になってしまいました。部屋がないため学習机も買ってあげることができず、本当に申し訳なく思っています。これから先の住居もどうすればいいか決められず、子どもたちにも不安な思いをさせていると思います」。
宮城県東松島市37歳女性
「震災で児童数が減ってしまい、小学校は今年度で廃校。来年は仮設の学校、さらに再来年は統合して新校舎へ移動。保育所も近くになくなり、10キロ離れた仮設の保育所へ。復興のためと分かってはいても、毎年の環境の変化に子どもたちが不安定になります。大人なら我慢できるけど、子どもたちにはつらいいことばかりです」。
転居回数に被害の大きさあらわれる
防災社会学が専門で兵庫県立大学の木村玲欧准教授は、「避難や転居を5回以上繰り返した人が3割近くいることに東日本大震災の被害の大きさがあらわれています。阪神・淡路大震災では5年後には仮設住宅がゼロになりましたが、今も仮設住宅に多くの人が住んでいることから転居回数はまだ増えると思います。転居回数が多くなれば家族や地域との絆が弱まってしまいますので、生活再建には大きな問題だと思います」と話しています。
0 件のコメント:
コメントを投稿