2016年3月6日 福島民友
「ママ友の口づてで間違った情報が広がり、それを基に『これって本当ですか』と若い母親から尋ねられることがある」。南相馬市をはじめ県内外で放射能に関する勉強会を開き、その内容を分かりやすく説く冊子も発行するなど市民生活を支援する「ベテランママの会」代表の番場さち子さんはこう振り返り、母親らに呼び掛ける。「不安を払拭(ふっしょく)するには、正しい情報をきちんと手に入れてほしい」
放射能に関する住民の不安や本県に関する風評被害や誤解は今も続く。「県内外で勉強会を100回以上開催した現在でも、放射能に関して出される質問は変わらない。正しい知識を身に付けることが、風評被害をなくすことにつながる」。番場さんはさらに、こう願う。「原発事故という特殊な事情で大きな被害を受けた。国は、教育特区などで報いてほしい」
全国で放射線教育を
ベテランママの会代表の番場さち子さん(54)は原発事故の影響が複雑化した中で「周囲に惑わされず、正しいと信じたことにきちんと取り組んで」と呼び掛ける。 (聞き手・編集局長 菅野篤)
―地元・南相馬など県内外で放射能の勉強会を開き、その内容をまとめた冊子を発行してきた。
「放射能の勉強会を100回以上開いた今でも『洗濯物は外に干しても大丈夫?』『マスクはした方がいいの?』など、出される質問が変わらない。勉強会で毎回話してくれる坪倉正治医師(東大医科学研究所、南相馬市立総合病院勤務)も、いつかは来られなくなる不安もあり、活動の成果を目に見える形で残そうと冊子『福島県南相馬発 坪倉正治先生の放射線教室』を4万冊、英語版を1万冊発行した。冊子を諏訪中央病院(長野県)名誉院長の鎌田實先生にお見せした際、『どんなに良いことをしても1割の人は悪く言う。その声は大きいが惑わされてはいけない。9割の人は賛成してくれる』と励まされた。データを掲載して正しい情報を淡々と伝えたかったが、『大丈夫イコール東電擁護』などと言われ批判を受けた」
―会は苦労しながら活動を続け、各種の表彰を受けた。
「困っている人や弱っている人を支えるのが私たちの仕事。『日本復興の光大賞』受賞の際、審査委員長でジャーナリストの池上彰さんから『正しい情報を冊子まで作って発信し、英語版を作って世界にも発信した』などと言ってもらった。『正しい情報』と言ってもらえたのは、活動へのご褒美と感じ、うれしかった」
母親、明るくなって
―5年という節目を前に、会の今後の在り方は。
「私たちは主婦の集まりなので、やれるときにやれるだけの活動をしていく。震災や原発事故の後、自殺者には男性が多かった。家庭の中心である母親が明るくなって、家庭を明るくしてほしいとサロン活動などを展開し、ニットサークルや書道教室を開いている。今年はオリジナルの『エンディング・ノート』を作りたい。原発事故で放射性物質が降ってきて住みにくい町になったという捉え方だが、人生の中では『あんな良いこともあったよね』と振り返り、書き留めていくのは認知症の予防にもなるだろう。その書き方講座を今年の活動目標にしている」
―放射線への理解不足や誤解で風評がなくならない。「ゆがんだ風評」が定着する懸念もある。
「日本中の学校の理科の授業で放射線教育をしてほしい。みんなが知らなくてはいけないこと。特に福島の子どもたちが福島を出たとき、福島はこうだとか、放射能と放射線の違いなど自分の言葉で語れるように学んでほしい。それが風評被害をなくすことにつながる。まずは知ることが大事だ」
―相馬地方では除染が進むとともに沿岸の堤防工事も順次進んでいる。復興状況をどう見る。
「少しずつ前進してはいるが、遅々としていると感じる。仕事の関係で毎週東京に通っているが、あちらは東京五輪モード。南相馬に戻ると、同じ日本とは思えない。また、南相馬は福島第1原発から20キロ、30キロで線引きされた。それが復興に影響していると思う」
「教育特区」実現求める
―震災から6年目に入る。南相馬市や本県はどう歩むべきか。
「震災前のように元通りにはならない。古いものを保存しながら新しい要素を増やしていくしかない。今いる人たちを大切に育てあげていくべき。原発事故で、相双地方を中心に本県は『特別なこと』をされたのだから、国はこれらの地域の人々に『特別なこと』で報いてほしい。その一つとして、教育特区の実現を求めてきた」
―若い母親やこれから母親になる人にメッセージを。
「周囲に惑わされず、自分が正しいと信じたことにきちんと取り組んでほしい。母も子も、みんなで学んで育っていってほしい」
―5年という節目を前に、会の今後の在り方は。
「私たちは主婦の集まりなので、やれるときにやれるだけの活動をしていく。震災や原発事故の後、自殺者には男性が多かった。家庭の中心である母親が明るくなって、家庭を明るくしてほしいとサロン活動などを展開し、ニットサークルや書道教室を開いている。今年はオリジナルの『エンディング・ノート』を作りたい。原発事故で放射性物質が降ってきて住みにくい町になったという捉え方だが、人生の中では『あんな良いこともあったよね』と振り返り、書き留めていくのは認知症の予防にもなるだろう。その書き方講座を今年の活動目標にしている」
―放射線への理解不足や誤解で風評がなくならない。「ゆがんだ風評」が定着する懸念もある。
「日本中の学校の理科の授業で放射線教育をしてほしい。みんなが知らなくてはいけないこと。特に福島の子どもたちが福島を出たとき、福島はこうだとか、放射能と放射線の違いなど自分の言葉で語れるように学んでほしい。それが風評被害をなくすことにつながる。まずは知ることが大事だ」
―相馬地方では除染が進むとともに沿岸の堤防工事も順次進んでいる。復興状況をどう見る。
「少しずつ前進してはいるが、遅々としていると感じる。仕事の関係で毎週東京に通っているが、あちらは東京五輪モード。南相馬に戻ると、同じ日本とは思えない。また、南相馬は福島第1原発から20キロ、30キロで線引きされた。それが復興に影響していると思う」
「教育特区」実現求める
―震災から6年目に入る。南相馬市や本県はどう歩むべきか。
「震災前のように元通りにはならない。古いものを保存しながら新しい要素を増やしていくしかない。今いる人たちを大切に育てあげていくべき。原発事故で、相双地方を中心に本県は『特別なこと』をされたのだから、国はこれらの地域の人々に『特別なこと』で報いてほしい。その一つとして、教育特区の実現を求めてきた」
―若い母親やこれから母親になる人にメッセージを。
「周囲に惑わされず、自分が正しいと信じたことにきちんと取り組んでほしい。母も子も、みんなで学んで育っていってほしい」
ばんば・さちこ 南相馬市出身。学習塾経営。 2011年4月にベテランママの会を設立、同会は日本復興の光大賞、 地域再生大賞優秀賞を受賞。都内で若者の自立支援に取り組む番來舎も運営。54歳。 |
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