http://www.sankei.com/region/news/160314/rgn1603140020-n1.html
「震災5年? 避難者にとっての一区切りは『避難して良かった』と実感できるようになること。まだ、現実は厳しい面がある」。ボランティア団体「避難者支援春風」代表の奈良孝太郎さん(45)=足利市=は指摘する。
震災後、足利市は避難所2カ所に避難者150人を受け入れた。奈良さんは「調理師の腕を生かし、役に立ちたい」と毎日のように避難所を訪れ、調理指導を続けた。せっかくの支援物資も調理法が分からないと無駄になってしまう。ニジマスの差し入れに「川魚は食べたことがなくて」と困惑していた福島県の海沿いからの避難者に、ムニエルのレシピを教えた。
1カ月の一時避難後、避難者約50人が市内で生活することになり、奈良さんは仲間と呼び掛け、家具家電類を提供。活動を続ける中で、「行政、民間、それぞれ役割があり、連携が重要」と認識し、諸団体の橋渡し役として多様な活動を展開するようになった。
時がたつにつれ、当初の「生きるため」の支援から「生活するため」「新しい人生を歩むため」の支援へと変化する。避難者のニーズ調査、情報発信とともに活動の3本柱の一つとして、生きがい支援に力を入れている。クラフトテープを使った「かごバック」の販売もその一つだ。
2年前、県内の避難者とその支援者が趣味で製作しているのを知り、「せっかくだから販売しては」と持ちかけた。現在、3人の避難者が製作を手掛け、イベントなどで販売。1個300~4500円程度で、代金全てが避難者の手に渡る。これまでに約50万円分が販売された。
「避難者も支援されるだけでなく、生きがいが必要だ」と話すのは、とちぎボランティアネットワーク(宇都宮市)の事務局長、矢野正広さん(53)だ。避難者支援のNPOやボランティア、行政が連携し、避難者と支援者をつなぐ組織「とちぎ暮らし応援会」創設当初から同ネットワークは参加しており、現在は同会事務局として2カ月に1度、ニュースレターを発行、避難者に届けている。
震災直後は避難者の居場所を把握することも難しかった。市町の個人情報保護の姿勢が壁となった。現在は県と協定を結び、情報を適正に管理。継続的に支援が必要な人を訪問でき、ニュースレターを送ることができる。故郷を離れた避難者同士が交流の場を知ることができる。ただ、時がたてば、周囲との交流や情報の入手もスムーズになる。やはり、情報が必要なのは知らない土地に避難した直後だ。そのときにこそ、支援者、ボランティアが避難者を訪問し、同じ境遇の人と交流できる場の情報を届けなくてはならない。矢野さんはそう課題を指摘する。
避難者は故郷への思いを胸に健康、仕事などさまざまな悩みを抱えながら日々を送っている。「地域で支え、自立できるよう支援を続けたい」。奈良さんらの活動は続く。(川岸等)
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