http://mainichi.jp/articles/20160728/ddl/k26/040/530000c
福島県いわき市の児童養護施設「いわき育英舎」の施設長、市川誠子さん(62)は27日、京丹後市を訪れ、東日本大震災の教訓を語った。福島原発事故が発生した後、施設の水の確保のために何もわからないまま山水をくみに行った経験を語り、「今もつくづく反省している。原発は安全で大丈夫とだけ聞かされ、放射能についての知識がなかった。正しい情報を自分でつかみ、そのうえで行動することが震災の教訓」と振り返った。【塩田敏夫】
育英舎の7人の子どもたちは丹後の住民でつくる「ふくしま・こどもキャンプ丹後の海」の招きで、京丹後市丹後町の宇川ハウスでキャンプ中。府立峰山高生らがボランティアとして参加しており、市川さんが震災の経験を高校生や地域住民に語ることにした。
大震災が発生した当時、育英舎には23人の子どもがいた。幸い全員無事だったが、食料と水の確保が緊急の課題となった。市川さんによると、震災直後に2回山水をくみに行った。やむに止まれない行動だった。ところが、3月15日、いわき市の広報車が回ってきた。「いわきにもヨウ素が落ちている。山水は絶対に飲まないで」とアナウンス。とんでもない事態になっていることに初めて気付いた。
育英舎は福島原発から直線で34キロ。市川さんは福島県に「子どもをどうするのか。食料も水もない。避難しなければならない」と必死で対応を求めたが、県は「避難するのは国が定めた30キロ圏内」とする回答を繰り返した。
市川さんは高校生たちに「いざと言う時、正しい知識が無ければ正しい行動が取れない。目の前の事実に自分は関係ないと目をそらしてはいけない」と語りかけた。
また、大震災をきっかけに育英舎の子どもたちが「自分たちよりも大変な人がいる」と優しくなったと語った。被災者のために懸命に働く看護師の姿を見て感動し、自分も看護師になると決意した子どももいると紹介。その子は実際に看護師の国家試験に合格し、今年4月から医療現場に立ったという。
〔丹波・丹後版〕
高校生たちに「自分で情報を整理することが大切」と語りかける市川さん(左端) =京都府京丹後市丹後町で、塩田敏夫撮影 |
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