2016/07/30

栃木/国の押しつけ 行き詰まる

2016年7月30日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201607/CK2016073002000177.html

「県内の指定廃棄物は、県内一カ所で処分するべきだ」。この国の方針に基づいた処分場計画は今、大きな岐路にある。

隣の茨城県では今年二月、国が地元の意向を踏まえ、各地に指定廃棄物を置いたままの状態を保つ分散保管の継続を認めた。千葉県の候補地となった千葉市では今月、基準値を下回った廃棄物の指定が全国で初めて解除された。市内の保管量が「ゼロ」となったため、市が候補地選定の無効化を主張。今後の国の対応に注目が集まっている。

ただ、建物の中に仮置きされた焼却灰などが中心の両県と違い、栃木県では農家に残された牧草や稲わらが多い。これ以上の風評被害を生まず、安全に処分する観点からは、処分場が必要だとする声も分からなくはない。

国は今年に入り、県内の各市町にも、廃棄物の指定解除のルールを提示した。総量を減らして処分を促進させる狙いで、塩谷町が処分場建設を受け入れやすくなるとの思惑も透けて見える。

六月には、保管の現状を調べるため、県内の一時保管場所から約四十カ所を選び、放射性物質濃度の再測定に着手。九月にも結果を公表する見通しだ。

だが、指定廃棄物を抱える市町では、再測定を機に指定の解除が進み、廃棄物を処分する責任が国から市町へ移ることを警戒する声が高まっている。これまで指定廃棄物問題の議論に積極的に関わってこなかった市町も、わが事として向き合わなくてはならなくなっている。

同時に、国は指定解除も処分場計画も、やすやすとは進まないことを覚悟すべきだ。国は、候補地の選定や新しいルールなど、あらゆることを「決定事項」として当事者へ押しつけてきた。その手法では地元の信頼を得られず何も前に進まないことが、この二年間ではっきりしたはずだ。 
(大野暢子)

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