2016/07/29

愛知)原発問題考える 僧侶ら絵本出版

2016年7月29日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASJ6W63THJ6WOIPE043.html 

東日本大震災の被災地支援を続けている僧侶らが、東京電力福島第一原発事故をモチーフに、絵本「おやまのぽんた」を発刊した。発起人で真宗大谷派名古屋別院(東別院、名古屋市中区)職員の中村亮さん(39)は「震災の風化は進んでいる。原発の問題を考えるきっかけにしてくれれば」と話している。

作者は中村さんや随縁寺(同市中川区)副住職の土井恵信さん(39)ら9人。物語は創作で、放射能などを言葉では表現せず、「モケモケ」と例えた。あらすじは――。

絵本を作った真宗大谷派名古屋別院の職員、中村亮さん(右)ら
=名古屋市中区橘2丁目

里山に、男の子「ゆうき」と子ダヌキ「ぽんた」がいた。春がくると、毎日一緒に遊ぶ仲良しだ。そんな中、地震が起き、津波も襲いかかる。次の日には「ドーンと大きな音」がした後、「モケモケ」が出現し、ゆうきは外で遊べなくなった。

ある日、ゆうきが山に向かい、ぽんたにお願いする。「山を出よう!モケモケがいないところだったら、好きなだけお外であそんでいいって」。ぽんたは「こわくてできないよ」と返答した。

後日、ゆうきが山を下りながらお母さんに問いかける。「モケモケってなあに?ぼくたちはいったい、何をしたの?」。お母さんは黙ったままゆうきの手を握りしめた……。

この物語の下地には、土井さんが所属し、被災地に義援金などを直接手渡している僧侶らのバンド「G・ぷんだりーか」が2011年冬につくった曲「テツナギマーチ」がある。「ほうしゃのうがないばしょであそびたい」「ほうしゃのうがないころにもどりたい」――。

被災した福島県二本松市の園児と母親が思いをつづった歌詞で、手を取り合って前に進もうという思いがこもっている。

土井さんの友人の中村さんが、この歌詞をもとに絵本の制作を決めたのが14年冬。有志で集まった9人で内容を話し合い、故郷を離れる人と離れたくない人の葛藤や、放射能を子どもに説明できない母親の苦しみなどを表現したという。

今年は震災から5年が経った。震災の記憶がない子どもは増えつつある。中村さんは「原発の是非を問いたいわけではない。震災を過去のことだと終わらせず、震災を知らない世代とも一緒に問題を考え続けることができれば」と話した。

A4判変型で44ページ。挿絵は名古屋造形大の学生が担当した。税別1500円で、東別院の教化事業部で販売している。問い合わせは、同部(052・331・9578)へ。(後藤隆之)






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