2016/07/20

東日本大震災 今も続く関連死/命失われた過程の公表必要

2016年7月20日 河北新報 
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20160720_01.html

救えたはずの命の数々が、どんな経過をたどって失われてしまったのか。一つ一つの事例を明らかにし、共有する取り組みが必要ではないか。

東日本大震災をきっかけに体調を崩して亡くなった「震災関連死」の問題だ。

復興庁は6月末、関連死と認定されたのが3月末時点で10都県の3472人に上ると発表した。岩手、宮城、福島の3県では3417人。原発事故にも見舞われた福島は2038人と、半年ごとの集計で初めて2千人を超えた。

前回集計との比較では全体で65人増えた。福島は59人増で、このうち24人は震災から5年目に入った昨年3月11日以降に亡くなっている。

福島県内では今なお、一部地域を含め東京電力福島第1原発周辺などの7市町村に避難指示が出され、8万9千人余が県内外に避難している。古里を離れた生活がいかに命を削っているかを、増え続ける関連死は物語っている。

だが、その実態は積極的には公表されていない。

第1原発周辺の双葉郡8町村は合同の審査会で、遺族の申請に基づく関連死の審査を実施。今年3月末までの8町村の認定は前回集計比で54人増の1271人に達する。

審査会事務局の双葉地方町村会によると、長期避難先でのがんによる死亡が増え、この1年以内に自殺したケースも含まれるというが、詳細は個人情報に関わるとして明らかにしていない。他の自治体もおおむね同様だ。

そもそも関連死には定められた基準がなく、自治体ごとに対応が異なるなど当初から認定段階で混乱が生じた。

混乱は繰り返され、熊本地震の被災地からも「どういったケースが関連死なのか、審査する行政も、認定申請する市民も分からない」(熊本市)といった声が上がる。

プライバシーへの配慮は欠かせないが、一人一人がどんな状況を経て死に至ってしまったのか、審査での検討経過と結果も含めて示すことは、申請や認定段階での混乱を少なくすることにつながる。

被災者支援を考える上でも重要だ。「救えた命がなぜ失われたのか。(公表は)支援が十分だったかどうかを検証し、関連死を防ぐヒントを導き出すことにもなる」。関連死を巡る訴訟で遺族側代理人を務めた仙台弁護士会の宇都彰浩弁護士は強調する。

原発事故被災地の福島では新たな課題も浮上している。福島県弁護士会の新開文雄会長は「震災から6年目に入った現在も関連死の認定が続いていることに、違和感が広がりかねない」と指摘する。

高齢者の認定が多いことから「本当に関連死と言えるのか」と疑問視されるケースが増え、認定による弔慰金(最高500万円)の支給を受けた遺族へのバッシングが懸念されるという。

避難生活が長引く特殊性を踏まえ、新開会長は原発事故に限った関連死に絡む法律の必要性を主張し、「立法への理解を深めるためにも事例の公表が大切だ」と訴える。

震災発生から5年4カ月を経ても増える関連死にどう向き合うか。実態を見詰め直す重要性は一段と増している。

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