http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201607/20160712_61001.html
東京電力福島第1原発事故で全町避難する福島県浪江町は、来年3月の帰還開始を見据えた住民懇談会を終えた。参加者からは放射線への不安や、帰還に向けた日程提示を急ごうとする国の姿勢に批判が相次いだ。町に対しては「町の将来像を示してほしい」といった要望が出された。
懇談会は6月23日~7月5日、東京、仙台と県内の計8カ所であり、延べ約1200人の町民が参加した。
目立ったのは国に対する質問や意見だった。放射線について「山林の除染をしなければ、いったん下がった住宅地の線量が風の影響などで戻ってしまうのではないか」「除染後のチェック体制を整えてほしい」といった声が上がった。
「国が一方的に決めるな」との意見が出たのは今後の日程問題。国は「8月中旬に特例宿泊」「今年秋にも準備宿泊」「年明けまでに避難指示の解除時期明示」と立て続けに目標を示している。
政府は昨年6月、帰還困難区域以外の避難指示を来年3月末までに全て解除する方針を閣議決定した。2020年東京五輪の前に福島の安全性を示したい国の考えを踏まえ、住民は「東京五輪に向けて前のめりになっている」などと指摘した。
生活インフラを巡っては、町が診療所や仮設商業施設などの整備状況を説明。会津若松市に避難する会社員森山智光さん(39)は「町内に復興公営住宅を建てると聞き安心した。町が好きで早く帰りたい。前向きな取り組みを聞けてうれしい」と評価した。
「役場周辺の整備ばかり目立つ」という指摘も多かった。帰還困難区域と接する加倉地区に実家がある福島市の主婦(55)は「帰町開始後の町全体の将来像があまり見えなかった」と残念がった。
帰還困難区域に関しては、国が夏までに新たな対応方針を示す予定。ただ具体的な説明は乏しく「町として対応を決められないのか」と求める声が相次いだ。
町は今月5日、会津若松市での開催で懇談会を締めくくった。馬場有町長は国に前もって除染や拠点整備の計画を提案する意向を表明。「帰還困難区域がなくなり、全町民が帰れる環境になるまで帰町宣言はしない」と強調した。
県内外8カ所で開かれた住民懇談会。浪江町や国に対する質問や意見が相次いだ=5日、会津若松市 |
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