<汚染廃棄物>基準以下3万6000t一斉焼却案
東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質で汚染された国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の廃棄物の処理問題を巡り、宮城県は3日、全35市町村長を集めた会議を仙台市内で開いた。基準以下の廃棄物は26市町村で約3万6000トンに上ることを報告し、全自治体が協力して一斉処理する方針を正式に表明した。
市町村が処理を担う廃棄物は、県による放射能濃度の測定で基準以下となった25市町村の計3万4007トン。他に国の基準を超すとされながら未指定のままになっており、環境省による濃度再測定で基準を下回った10市町の1966トンが新たに追加された。
会合では村井嘉浩知事らが、市町村や広域行政事務組合の15焼却施設で灰が基準を上回ることがないよう一般ごみと混ぜて廃棄物を焼却し、灰は最終処分場に埋め立てる方針を説明した。排ガスや排水などの環境モニタリングも実施し、データは公開する。
半年程度かけて試験焼却を実施。濃度の低いものから処分し、安全性が確認できれば本格焼却を開始する。それぞれの施設が処理する廃棄物の量は県が調整する。各自治体が堆肥化や土壌へのすき込みといった焼却以外の方法で独自に処理することも可能とする。
村井知事は「廃棄物を保管している自治体は被害者だ。処理を保管自治体だけに任せるのではなく、他の自治体も協力してほしい」と要請。「全員で手をつないで一緒に進もうということ。一つでも『協力しない』と言うところがあれば全員立ち止まることになる」とくぎを刺した。
首長からは県の方針に理解を示す声が出る一方、「風評被害が心配。住民に安全性を十分PRしてほしい」「焼却分はできるだけ減らせないか」「焼却施設や最終処分場の寿命を縮めることになるのではないか」などの意見が上がった。
村井知事は「住民への説明会は市町村が行うことになるが国、県もできる限り協力する。さまざま課題はあるが、まず試験焼却を始め、走りながら考えさせてほしい」と理解を求めた。
県は12月下旬にもう一度市町村長会議を開き、一斉処理方針への賛否を確認する。全市町村長の賛同が得られれば来年1月以降に試験焼却を始め、夏ごろから本格焼却に入る。
汚染廃棄物を県内で一斉処理する方針について、
村井知事から説明を聞く市町村長=3日午後7時すぎ、仙台市宮城野区
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<汚染廃棄物>一斉焼却案 首長から異論
2016年11月4日 河北新報http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201611/20161104_11017.html
東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質で汚染された国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の廃棄物の処理を巡り、3日にあった宮城県の市町村長会議では、村井嘉浩知事が県内の焼却施設で一斉処理する方針を強く要請した。首長からは「焼却以外の方法も模索すべきだ」など異論も上がった。
県内最多の約7500トンを抱える猪股洋文加美町長は「400ベクレル以下は(国が認める)堆肥化やすき込みを進める。栗原市で進める実証実験を見た上で、町内の全量を自前で処理する」との考えを明らかにした。
会議終了後、猪股町長は「町内の6割が400ベクレル以下。努力すれば焼却に回す量は減らせる。焼却や埋め立て施設を有する自治体に負担を掛けるわけにはいかない」と強調した。
布施孝尚登米市長も「他の自治体に安易に処理をお願いするわけにもいかない。自力での取り組みを検討すべきだ」と持論を展開。佐藤勇栗原市長も「5年かけて住民と議論を重ねた上で、『焼かない』との結論を出した。突然、『焼きます』となれば反発は大きい」と疑問を投げ掛けた。
仙南地域の2市7町では、広域行政事務組合が角田市に新焼却施設を建設中で、来年1月から試運転を始める。大友喜助角田市長は「試運転中に放射性物質を含む廃棄物を投入するのは現実的でない」と主張。「放射性物質は飛散せず、周囲の放射線量が上がらないことを説明し、住民に理解を求めるしかない。知事に直接説明の場に来てほしい」と求めた。
会議でも「県は議会や住民に説明し、安全性をアピールしてほしい」(鈴木勝雄利府町長)など住民への説明責任を問う声が相次いだ。村上英人蔵王町長は取材に対し、「風評被害が一番心配だ。対策を考えてほしい」と訴えた。
汚染廃棄物を保管する市町村が自力処理できる量には限界がある。規模が大きく、処理能力が高い焼却施設を複数持つ仙台市の対応が今後の焦点となる。
他自治体からの廃棄物受け入れについて、奥山恵美子仙台市長は「県は『全体の計画はまだ見えない』と説明した。今は試験焼却に限定して調査、検討するとしか言えない」と話した。
汚染廃棄物を県内で一斉処理する方針について、
市町村長からの質問に答える村井知事
=3日午後7時10分ごろ、仙台市宮城野区
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放射性廃棄物 県、焼却処分の方針説明
2016年11月4日 読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/local/miyagi/news/20161103-OYTNT50270.html
東京電力福島第一原発事故で放出された放射性物質を含む廃棄物の処理問題で、国の基準値(1キロ・グラムあたり8000ベクレル超)を下回る廃棄物(汚染廃棄物)を巡り、県は3日、仙台市内で開かれた市町村長会議で一斉焼却処分する方針を説明した。首長からは、処理方法に関する質問などはあったが、反対意見はなかった。県は12月下旬に再度、市町村長会議を開催し、同意が得られれば、来年1~2月に試験焼却を開始する考えだ。
県はこの日、6月から10月にかけて、県内にある汚染廃棄物を再測定した結果、全体で約3万4000トンだったと説明。堆肥化など焼却以外の処理が可能な1キロ・グラムあたり400ベクレル以下は、このうち約2万1500トンだった。また、環境省が実施した調査では、基準値を超えていながら法が定める指定を受けていない「未指定廃棄物」の約2500トンのうち、8割にあたる約2000トンが基準値を下回っていたことも報告された。
県はこれらの汚染廃棄物計3万6000トンについて、県内の焼却施設で処分する方針を説明。村井知事は「特定の自治体だけの問題にすることなく、国、県、県内すべての自治体が協力して処理を進めていくべきだ」と理解を求めた。質疑の場では、最終処分場の設備に関する質問や、汚染廃棄物の処理を巡る風評被害を懸念する声が上がったが、目立った反対はなかった。
県内で最も多い汚染廃棄物を抱える加美町の猪股洋文町長は会議後、「県も丁寧に進めるという姿勢が見えた」とした上で、400ベクレル以下については、「すき込みや堆肥化で、できるだけ全量を自前で処理したい」と、独自に処理する考えも示した。登米市の布施孝尚市長も、「他市町村に焼却をお願いするより、まず市独自の取り組みを進めるよう検討したい」と述べた。
一方、市内の汚染廃棄物を独自に処理した実績のある仙台市の奥山恵美子市長は、「試験焼却に限定して応じることを前提に住民説明が可能かどうか検証したい」と慎重な姿勢を示した。
村井知事は、基準値超の指定廃棄物の問題については、「指定廃棄物のことは横に置いておいて、まずは基準値以下の処理を進めたい」と述べた。
汚染廃棄物「基準以下は一斉処理」 宮城市町村長会議で県提案
2016年11月4日 産経新聞http://www.sankei.com/region/news/161104/rgn1611040020-n1.html
東京電力福島第1原発事故で発生した放射性物質を含む汚染廃棄物の処分で、県は3日、放射能濃度が国の基準(1キロ当たり8千ベクレル)以下の廃棄物について、県内の自治体などの焼却施設で一斉処理する方針を明らかにした。仙台市内で同日開催された市町村長会議で提案した。
県によると、放射能濃度が国の基準を超えているが、地元自治体の判断で国への申請がなかった「未指定」の廃棄物約2600トンについて、環境省が再測定した結果、7割以上の約2千トンが基準以下となった。また、県内に分散保管されている基準以下の廃棄物について、県が測定した結果、約3万4千トンに上ることが分かった。
これらの計約3万6千トンの廃棄物が処理対象で、県は家庭ごみを混ぜて焼却することで、放射能濃度の上昇を制御できると説明。自治体などが保有するごみ処理施設で焼却処分する方針を提案した。焼却灰も自治体の最終処分場に埋め立てる。焼却以外にも、堆肥化などが可能とした。12月下旬に再度会議を開き、市町村側の合意が得られれば、年明け以降、試験焼却を始める。安全性が確認された後、本格焼却に移行する。
村井嘉浩知事は「廃棄物の保管自治体だけの責任にするのではなく、みんなで前に進むという考えだ。次回の会議で合意を得たい」と協力を求めた。利府町の鈴木勝雄町長は県の方針に理解を示しながらも、「風評被害が心配される。住民に安全性を説明する場を設けてほしい」と語った。
◆知事「批判の矢面に立つ」
会議終了後、村井知事は報道陣の取材に「基本的に県の方針について理解をいただいたと思う。だが、住民は不安を持っていると思うので、県も批判の矢面に立って説明していきたい」と語った。
試験焼却については仙台市などで先行事例があり、「こうした自治体の知見をベースに進める」とした。
汚染廃棄物の処分については「震災から5年半以上たっても、なお足踏み状態だ。この問題を解決しない限り、『復興は終わった』と胸を張ることができない」と述べ、解決に向け改めて意欲を示した。
汚染廃棄物の処分については「震災から5年半以上たっても、なお足踏み状態だ。この問題を解決しない限り、『復興は終わった』と胸を張ることができない」と述べ、解決に向け改めて意欲を示した。
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