2016/11/08

汚染廃棄物処理 「住民理解」得られるか 焼却場周辺根強い反発も/宮城


2016年11月8日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20161108/ddl/k04/040/008000c
東京電力福島第1原発事故で生じた放射能汚染廃棄物の処理を巡り、県は3日の市町村長会議で、指定廃棄物の基準(1キロ当たり8000ベクレル)以下で一般廃棄物となる稲わらなど約3万6000トンを年明けから一斉に試験焼却するよう正式に提案した。各市町村は議会や住民への説明を始めるが、焼却場周辺の住民らからは「風評被害が心配だ」などと反発の声も上がる。県は12月下旬開催予定の市町村長会議での回答を求めており、限られた時間の中で住民理解を得られるかが焦点だ。【山田研、川口裕之】

「一つの自治体、一つの焼却場、一つの処分場が『協力できない』というなら、全員で立ち止まりたい」

仙台市で3日にあった市町村長会議で、村井嘉浩知事はこう述べ、出席した市町村長らに提案への同意を強く促した。会議で反対意見はなかったものの、「安全性のPRが重要だ」などと注文を付ける声も出た。

こうしたなかで、焼却場周辺の住民らからは、県の提案に反対する声や、合意形成の難しさを指摘する声が上がっている。大崎市や加美町など1市4町でつくる大崎地域広域行政事務組合は2007年2月、同市岩出山池月上宮行政区協栄会と「環境保全に関する申し合わせ」を取り交わした。同行政区には一般廃棄物焼却場「玉造クリーンセンター」があり、申し合わせには「焼却場の機能・設備を変更する場合は地元住民に事前に説明し合意を得る」「住民から不安・疑問が出された場合は直ちにその改善に努める」などの項目が盛り込まれた。このため、同事務組合は汚染廃棄物を焼却する場合「他の2焼却場、最終処分場を含め、合意が必要」(瀬戸晃事務局長)としている。

協栄会の阿部忠悦会長は取材に「環境が悪化するので、申し入れがあれば反対したい」と明言。「ここの米はきれいな地下水で育てていることが消費者から評価されている。風評被害が心配だ」と強調した上で、「東京電力や国の責任で安全な施設を作り、持っていってもらいたい。処分場のある、どこの地域も同じ気持ちだろう」と語る。

一方、加美町内の汚染牧草の一時保管場所近くに自宅を構え、指定廃棄物処分場建設反対運動に参加する男性(74)は「住民の納得が必要だが難しいだろう」と指摘。「堆肥(たいひ)などにして土に返す方がよいのでないか。そうすれば焼却灰の始末の問題もない」と語った。

村井知事は「国は、8000ベクレル以下は通常の方法で十分安全に処理できると示している」と強調。住民説明には、市町村だけでなく県や国も参加する方向で調整する意向を示し、理解を求めている。


県による放射能汚染濃度再測定のため牧草から試料を採取する作業員。
山間部に集め、野積みされた牧草の中には腐食の進んだものもあった=涌谷町で6月27日

知事「できる限り堆肥化を」

「できる限り堆肥化やすき込みなどをやっていただきたい」。村井嘉浩知事は3日の市町村長会議でこう呼びかけた。狙いは、処理対象となる一般廃棄物(1キロ当たり8000ベクレル以下)約3万6000トンから焼却分を減らすことにある。

県が焼却以外の場合の目安として示した濃度は、農水省が深さ30センチの条件ですき込みを認めた同8000ベクレルを大幅に下回り、土地改良材や肥料として使用できる濃度である同400ベクレルで、計約2万1000トンある。これは処理対象の約6割を占める。このうち、同100ベクレル以下のものは牛の餌として与えることが可能となるほか、牧場にまくこともできると、農水省は示している。

ただ、稲わらなどに含まれる放射性物質の濃度は、一時保管場所ごとに複数の保管容器から採取した汚染物を混ぜたうえで測定している。このため、同濃度が「400ベクレルを下回った」とされた場所でも、保管されているすべてがその値を下回ったとは必ずしも言えないのが現状だ。

一方、1キロ当たり400超8000ベクレル以下とされた廃棄物は約1万4000トンある。特に大崎市など県北の4市町と丸森町には、それぞれ1000トン以上残る。このうち、2300トン以上を保管している栗原市は独自に堆肥化の実証実験を進めているが、他の自治体から「堆肥化やすき込みの量としては多すぎるのでないか」との指摘も上がっている。

■県内の農林系放射能汚染廃棄物の量(指定廃棄物除く)
単位=トン(1トン以上の保管量は小数点以下切り捨て)




 ~100ベクレル ~400ベクレル ~8000ベクレル 8000ベクレル超     合計

石巻市      207                 69              277

気仙沼市     212      114        33       0.5    360

白石市     1695     1495       151             3342

名取市        6                                   6

角田市      491      361       694        12   1560

岩沼市       86                                  86

登米市     1783     1747      1216             4747

栗原市      295      944      2323       295   3858

東松島市       5                  5

大崎市      767     2394      2918       175   6254

蔵王町      187      723       592       0.1   1503

七ケ宿町      54                789              844

村田町      309                0.9              310

柴田町       42        3                         46

川崎町      351       56       162              570

丸森町      345      287      1288        73   1995

亘理町       55       28        76         3    163

山元町        4       18         3         2     29

大和町       23       22        17               64

大郷町       40       60        47              148

大衡村      180      119        71              370

色麻町      258      398       124         1    782

加美町     3094     1388      3060        12   7556

涌谷町               200       397        73    670

美里町      190       54       325              570

南三陸町     132      304        60              497


合計     10816    10731     14426       649  36622


11月3日の市町村長会議で公表された、環境省測定「未指定廃棄物」と県測定「8000ベクレル以下廃棄物」を基に作成した稲わら、牧草、堆肥、ほだ木、焼却灰、乾燥しいたけの合計値▽仙台・塩釜・多賀城・富谷市、大河原・松島・七ケ浜・利府・女川町は「0」


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