2015/08/14

【報告】子ども全国ネット4周年ネットワークミーティングを開催しました!



さる7月11日(土)に、子ども全国ネット4周年ネットワークミーティング「関東の汚染を考える〜地方政治を動かす お母さんたち〜」を開催しました。

昨年に引き続き「関東の汚染」を取りあげたのは、オリンピックを控え、ますます隠されていく首都圏の汚染と、汚染された地域の在住者数が多い関東で声をあげる意義を考えたからです。サブテーマの「地方政治を動かす お母さんたち」は、原発事故から4年たった今も各地域で、行政や議会に働きかけながら、被ばくを減らし子どもたちを守るための対応を引き出している団体や母親たちの行動をいくつも聞いていたことから取りあげました。



冒頭のあいさつで、子ども全国ネット伊藤が話したのは、前日の復興庁の発表のこと。「OurPlanetTVの白石さんが、『支援法の死亡宣告書が出された』と昨日書かれていましたが、なんというタイミングの今日でしょう」と。復興庁は「避難する状況にはない」として、「居住も、避難も、帰還もどの選択をしても支援する」という支援法の理念を葬る発表をしたのです。「年間20ミリシーベルトを基準にした帰還促進は許されない。『1ミリシーベルトの約束』について継続して取り組んでいく」と決意を述べました。

当日駆けつけてくださった福島みずほ参議院議員からは、「ドイツの脱原発は、政府の言うことを信じなかったお母さんたちの力。しぶとく、しなやかにやり続けることで、脱原発をやりとげたい」「福島以外の健康診断をしてくれと言ったが、審議会では、『福島の被害は大したことはないから、ほかの地域も大丈夫』とした」「子ども被災者支援法の改悪をさせないよう、がんばってやっていく」との言葉をいただきました。

その後、10人の方に話題提供していただきました。中でも、集まっていただいた1都6県の皆さんの報告には、自治体に向けて取り組むべきことに関するヒントがたくさんありました。また、基本は、“人”対“人”であるということを、行政担当者に対しても、議員に対しても大事にしているという点が皆さん共通していることでした。そうした信頼関係の上に、ゆっくりでも着実に1つずつ築きながら、対応を引き出している報告が多かったです。

以下、関東1都6県からの報告です。

◆山田ゆう子さん(埼玉県/越谷市議会議員)

越谷市には、現役の子育て中の女性議員がいませんでした。放射能から子どもを守ろうと活動する私たちの中から議員を出していかなければならないと、自然な流れで選挙に出ることになりました。候補者と支援者という関係でなく、みんなが候補者という考えで、お母さんたち一人一人がマイクを持った選挙戦でした。
 
議員になって、あだたら高原少年自然の家(福島県)の学校利用再開問題について、一般質問で取りあげました。議会の外からも中からも活動を進めることが大切です。お母さんたちがマメに議員に電話したり、市長にメールしたりすることが必要だと思います。



◆黒岩勢津子さん(群馬県/子どもたちを放射能から守る草木の会)


群馬では、事故以来、いくつかの団体が発足しましたが、今では、最初の勢いはなくなってきた感じです。その中の3つの団体の事例と群馬大学の西村淑子先生の放射能汚染に対する意識調査についても報告。
 
「子どもたちを放射能から守る草木の会」は、2011年秋に立ちあげてから行政への要望を行ってきました。「給食検査の頻度を上げてほしい」「強風時に校庭の使用を減らしてほしい」「甲状腺検査の実施を考えてほしい」など。今年は議会への要望も行います。議員や父母との交流会をやっていく予定です。今後も、行政とは友好関係を保ちつつやっていきたいと考えています。


◆瀬田美樹さん(東京都/世田谷こども守る会)

世田谷は人口が88万人、小学校64校、中学校29校で、小さな県ほどの規模もある、大きな区です。「世田谷こども守る会」はメーリングリストの会員は500名と大所帯ですが、コアメンバーは6人で、ここで重要なことを決める形になっています。Facebookの非公開グループが60人ほどいて、日常的なさまざまなやりとりが行われています。
 
区長とのパイプは太くしつつ、講演会等を開催した際は、議員の皆さんにも参加していただき、懇親会にも残っていただくようにしています。継続して、蜜にコンタクトをとることを大事にしています。校長会会長にも、毎年表敬訪問させていただいています。マダムトモコの厚労日報ダイジェストは、メルマガの形で発行していますが、教育長や環境対策室長などにも送り続けており、こうした継続的な活動が、信頼関係づくりに役立っていると思います。

30万部売れている雑誌「VERY」にも取材していただきました。イメージは大事なので、イベントのチラシデザインなども工夫しています。苦しくではなく、楽しく続けること。愛をもってやっていこうと声をかけあっています。


◆長谷川くみこさん(神奈川県/こどもまもりたい[相模原市])

原発事故後、さまざまな形で集まったメンバーで、「こどもまもりたい」という形で取り組んでいます。女医さんがいたり、私のような元議員がいたり、それぞれの得意を生かしながらやってきました。2011年7月には、市役所に市民のみなさんと横断的な組織を作ってほしいと文書で要請し、8月に「放射能対策連絡調整会議」ができ、10月に「子ども関連施設対策検討チーム」発足しました。

2015年4月の選挙で、再選し、その後、教育委員会と公園課に小学校の土壌測定を要請しました。6月に了承を得ることができ、市民の側で市民測定室に出し、測定結果の第一報は教育委員会に知らせ、その後公開する、というルールを申し合わせました。議員の役割は、情報公開を徹底し、チェック機能を強めることや、縦割り行政を横につなぎ、市民とつなぐコーディネートを担うことだと考えています。


◆岩間綾子さん(栃木県/とちの実保養応援団/原発・放射能から子供を守る会・塩谷)

歌って踊る保養ダンスで、保養についての啓蒙活動をしています。一人一人がやれることを、ということで、崎山比早子先生講演会や映画上映などの活動続けてきました。塩谷町は汚染状況重点調査地域ですが、0.23マイクロシーベルト以下でも学校と保育園の除染は行うことになりました。
 
今、塩谷町には、焼却炉つき最終処分場問題があります。処分場候補地は、町民も大事にしてきた名水の水源地近くということで、これをきっかけに塩谷町民は変わりました。
 
「気づいたときが始まり」なんですね。塩谷町に一歩入ると、人々の手づくりの看板がたくさん立っています。この間のことは、「1人の大きな一歩より、たとえ小さくてもみんなで一歩進むことがどれほど尊いか」ということを私に教えてくれました。これからもそのことを大事に進めていきたいと思います。

(保養ダンス動画 http://totinomi.jimdo.com/shall-we-dance/



中井ゆみ子さん(千葉県/我孫子の子どもたちを放射能汚染から守る会/放射能からこどもを守ろう関東ネット)

「放射能からこどもを守ろう関東ネット」は、常磐線沿線の各地域で生まれた団体がつながり、現在41の市民グループで構成されています。この間、関係省庁への交渉、選挙時の候補者アンケート、関東子ども健康調査支援基金への協力、署名活動、お話会、冊子作成などを行ってきました。
 

東葛エリアの例をあげますと、松戸市では、市民と市議が連携して請願を提出し、組織を超えた会議の提案をするなど、縦割り行政に働きかけ、甲状腺検査の助成を実現しました。柏市も、力のある市議とつながり、効果的な請願を提出することで、甲状腺検査に助成を実現しました。
 

最近では健診データの長期保存を求める等の成果が形になっています。他の市でも、理系ママが継続的に測定をして数字で根拠を示したりすることなど、自治体職員との信頼関係を築くことに心を砕いてきました。我孫子市では、学校の通常の健診項目の「その他」のところに、甲状腺の視診触診を入れることがかない、それがきっかけで二次健診を受ける子もいます。学校保険法の「その他」の項目を生かすことは、医師会に話ができれば、どこの地域でも可能なのだそうです。
 

こうして見てくると、各市に共通して言えることは、行政との信頼関係を築くこと、声を届け続けること。自治体が何かやろうとするには、市民の声という後ろ盾が必要なのです。また、自治会や子ども会、学校の役員といった地域の活動に参加することで信頼関係ができていきます。結局、大事なのは人とのつながりなのだと思います。


◆渡辺愛子さん(茨城県/常総市の子ども達を守る会/放射能からこどもを守ろう関東ネット)

現在、茨城県では、9つの自治体で、甲状腺エコー検査の助成を実施しています。201210月、「放射能からいのちを守る茨城ネット」が作成した「健康調査を求める要望書のフォーマット」を、賛同した個人・団体がダウンロードして、県内21自治体に提出し、6自治体では、甲状腺エコー検査等の助成を実現できました。簡単に要望書を提出できるよう、目的別のフォーマットがあると便利です。
 
子どもの健康調査の「受診率」と「助成額」については、甲状腺エコー検査の全額助成に比べて、半額助成の場合は受診率が極端に低くなっています。特に、中学生は部活等の理由で受診できないことが多いです。
 
大子町(全額助成)のように学校行事にすると受診率が高くなります。参考までに、栃木県日光市は半額助成でも受診率が高いのですが、市から個別に封書で案内が届くこと、受診日を6日間に限定したことが功を奏しているように思います。今後、関東ネットでは、他自治体の受診率も調べ、傾向を捉え、受診率アップの要望へ繋げたいと考えています。
 

牛久市では、「子どもの未来を守ろう@うしくし」が甲状腺検査助成の実現のため、まず医師会へ検査の必要性を訴え、自治体からの依頼があった場合、検査実施が可能であることを確認、その上で請願可決に向けて、議員一人一人に交渉し賛同を求めたこともあり、甲状腺検査助成の実現につながりました。学校健診データの保存延長については、市議へ相談し、市議会の一般質問でとりあげてもらい、データの保存期間の延長(10年)が実現しました。
 
子どもの健康を守る市民ネットワークでは、H24年県内の一部地域で、心電図検査の異常が増加したことを心配し、すべての学校心臓検診結果の情報開示請求を行い、検診結果を集計しました。初期汚染のひどかった地域であるにもかかわらず、全く情報開示をしない自治体もあり、自治体により大きな差があります。被ばくの影響については、長期的に見守り、必要な施策をとっていくことが大切です。

※ 詳細は「とりで生活者ネットワーク」http://torinet1015.sakura.ne.jp/tyousakatudou.html
※ 学校健診データの保存期間延長について:心電図検査の異常については長期的な分析が必要です。学校健診データは貴重なデータです。データの長期保存は比較的要望が通りやすいため、各自治体に保存期間を確認し、長期保存に向けた働きかけをすべきと思います。


続いて、今、関東で広がる2つの活動について、報告していただきました。


◆稲垣 芳さん(関東子ども健康調査支援基金)


市民による市民のための健診が必要ということで、2013年10月に「関東子ども健康調査支援基金」を立ちあげました。エコー検査機材は基金によって購入し、健診を行う医師・お手伝いスタッフはボランティアでお願いしています。受診者は、1人1500円のカンパで受診でき、結果はその場で医師より説明され、エコー写真もそのまま渡されます。
 

2013年10月〜2015年7月まで、45日程実施。延べ3481人が受診しています。千葉と茨城がほとんどで、栃木、埼玉、神奈川も行いました。



◆石丸偉丈さん(こどもみらい測定所/みんなのデータサイト)

市民測定所27団体が協力して、「みんなのデータサイト」を運営しています。HPには食品1万検体くらいの数値を公表しています。
 
いま、「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」を進めています。測定した場所については、地図に掲載しています。先行的に進んでいるのは岩手で、すでに市民の取組みがあります。空間線量より土壌測定は大変ですが、10×20×5cm(深さ)で掘って1を測定するなど、方法を統一することで、信頼性のある数値を導きだせたらと思います。17都県全域で土壌測定をやると、たとえば甲状腺の症状などが出てきたときに、付け合わせるデータとなります。セシウム134が消える前に、何とか広げていきたいです。無料で講習会講師も引き受けて説明に行っています。ぜひご協力ください。


◆白石 草さん(OurPlanetTV 代表)


情報公開された過去の書類から、201131117時には、官邸から「放射能もれ」のなぐり書きのFAXが、315日には、母乳汚染の可能性を指摘し、ミルク調達の指示が、3月19日には、降雨中、不要不急の外出をしない、頭皮や皮膚が雨でぬれないようになど注意を促す文書が出ていたにも関わらず、これらの情報は一切、外へは知らされることがありませんでした。
 
除染基準の0.23マイクロシーベルトは、どこにもない基準で、でっちあげの日本固有のルールでしかありません。年間1ミリシーベルトはICRPがやむをえず上限として決めたもので、放射能被ばくはできるだけ受けないほうがいいというのが世界の常識なのです。そして、チェルノブイリでは事故後4年目、5年目と移住地域を広めているのですが、いま日本は基準を緩め、汚染地域に帰還させようとしているわけです。
  
チェルノブイリで保障しているのと同じくらいのことをしたら、対象者は700万人。そのうち、福島県は1,788,016人、人口が多いのが千葉で1,770,518人、茨城県1,570,137人と続きます。被害者数で比較すると、日本が7005万人、チェルノブイリ7004万人で、ほぼ同じ結果が導き出されています。
 
チェルノブイリ法は、1881年(事故後5年目)に成立しました。健診と保養は、今も継続して重点的に取り組まれていて、この2点について、誰も否定する人はいません。子ども・被災者支援法については、昨日、死亡宣告書が出たわけですが(「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針の改定(案)」、やはり当事者が声をあげてくれることが必要で、2000万人くらい被ばくしていると思えば、差別も偏見もないはずです。
 
親など子どもの周囲にいる人がモニタリングすることが大事。「やっぱり変かもしれない」と気づきを見逃さないことです。風邪が長引きすぎるといった症状が最初の気づきだったりします。白血病や悪性リンパ種なども今後は心配です。養護の先生の間にも被ばく問題に取り組む人がいらっしゃるので、東北関東の保健室の先生に広がって、保護者と結びつけば、と思います。


質疑応答のあと、6つのグループで感想シェアと意見交換の時間をもち、各グループからの発表がありました。「食のこと、土のこと、正しい数値を知り、自分で判断したい」「話し合っていくこと、違う意見も認めるということ、それが議員さんに自分たちの気持ちを届けるのには大事じゃないか」などの意見が出ました。


やはりこうして顔を合わせて、直に話を聞き合い、意見を聞き合うことで、ヒントも励ましも勇気も得ることができます。登壇者のみなさん、参加者のみなさん、ありがとうございました。来年もぜひ、7月12日のキックオフの日にあわせ、開催したいと思います。






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