2015年8月11日 河北新報
http://www.kahoku.co.jp/column/desk/20150811_01.html
福島第1原発事故の被災地から河北歌壇に投稿を続ける一人が、深町一夫さんだ。その深町さんの作品がことし上期の河北歌壇賞に選ばれ、紙上で発表された。表彰状の伝達で先日、ご本人に会う機会を得た。
受賞作は<桃畑のいろは長距離バスの窓染めてやさしき福島に入る>。「福島の美しさ、悲しみが、読む者の心に響く」とは選者、佐藤通雅さんの評だ。深町さんは東日本大震災後、勤務先の秋田県の会社から南相馬市に派遣され、道路補修の仕事に携わっている。作業中にけがをして、今は大仙市の実家で療養中だ。
除染作業が行われている相馬地方。放射能問題について地元では「気にしないようにしている」と言う人がいれば、「分からない」「気味が悪い」と感じる人もいる。現地で思ったのは「見えざる相手との闘い」という、この問題の特異性だった。
<空き地にも仮設作業所並び立ち除染の音の暑き真夏日>。被災地の現状は、まだまだ伝え切れていない。「原発事故は、生命に直結した問題のはず。声なき声を歌に記録し、残し続けたい」と語る姿勢が印象的だった。(生活文化部副部長 佐藤昌明)
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