2015/08/30

モミの木形態変化/原因徹底究明し逐一説明を

2015年8月30日 福島民友
http://www.minyu-net.com/shasetsu/syasetu/150830s.html

国は東京電力福島第1原発事故との因果関係を含めて原因を徹底究明し、結果を正確に公表しなければならない。

放射線医学総合研究所(放医研)が、帰還困難区域の山林で、自生するモミの木の幹が途中から伸びない形態変化が確認されたと発表した調査結果のことだ。

環境省の依頼を受けた放医研の研究グループがまとめたものだ。調査は今年1月に大熊町と浪江町の計3地点で実施され、空間放射線量が高い地点ほど、上に伸びるはずの主幹が欠損している形態変化の発生頻度が高いとされた。

発生割合は福島第1原発との距離が近い地点から98%、44%、27%で、比較対象として調査した茨城県北茨城市では6%だった。

形態変化が現れた時期については、事故翌年の2012年から13年にかけて急増し、14年には減少に転じている。

モミの幹や枝は毎年春から夏にかけて成長する。主幹になる基(原基)の部分が成長して幹が伸びるのか、伸びないのかが確認できるまで2、3年かかるとされることから、放射線量の推移との相関関係を解明することが必要だ。

環境省は事故後、福島第1原発周辺で約80種類の野生動植物を対象に放射線の影響を調べているが、モミの木以外では、形態変化などの異常は確認されていない。

モミのような針葉樹が放射線の影響を受けやすいことは、これまでの実験やチェルノブイリ原発事故の事例などで分かっていた。

放射線生物学が専門の丹羽太貫放射線影響研究所(放影研)理事長によると、放射線の影響に大きさが関係するゲノムサイズ(生殖細胞に含まれるDNAの総量)が針葉樹の場合、ヒトの7倍ほどあるからだ。

ただ仮に放射線の影響から形態が変化したとしても、今回のケースでは発生頻度が減少していることなどから突然変異を示すものではないとの見方ができるという。

モミの主幹欠損は気象的な影響や動物による食害でも起きるとされる。放医研は実験施設内で人為的にモミの木に放射線を照射し、同様の形態変化が起きるかを調べる必要性を指摘している。

因果関係の究明に重要なのは、原発事故直後にモミの木が受けた被ばく線量がどの程度だったのかを正確に把握することだ。

事故直後と比べると線量は下がってきている。風評を広げたり生活空間への影響を過剰に心配することがないよう、国は原因究明を急ぎ、分かったことを逐一説明することが求められる。 


 

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