帰還困難区域のモミの木に変化、環境省が調査
2015年8月28日 TBSニュース
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2573628.html
福島第一原発近くの帰還困難区域内にあるモミの木の形に変化が見られるという調査結果を環境省が発表しました。
中心となる幹が枝分かれしたモミの木。これは、福島県の帰還困難区域内で見つかったものです。正常なモミの木はまっすぐ幹が伸びているのに対し、形が変化しています。
環境省は今年1月、帰還困難区域内の3か所でモミの木を調査しました。その結果、3地点全てで、高い割合で木の形の変化が見られたということです。また、形が変化したモミの数は、空間線量が高い地域ほど多かったということです。
「放射線の影響も可能性の一つだとわかった。放射線によって起きているかどうかは現時点では不明」(分析した放射線医学総合研究所 吉田聡工学博士)
これまでの環境省の調査では、他の野生動植物に形態変化は確認されていないということで、変化が確認されたのはモミの木が初めてです。環境省は今後、モミの木が受けた被ばく線量を調べるなどして、放射線の影響との因果関係を明らかにしていきたいとしています。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2573628.html
福島第一原発近くの帰還困難区域内にあるモミの木の形に変化が見られるという調査結果を環境省が発表しました。
中心となる幹が枝分かれしたモミの木。これは、福島県の帰還困難区域内で見つかったものです。正常なモミの木はまっすぐ幹が伸びているのに対し、形が変化しています。
環境省は今年1月、帰還困難区域内の3か所でモミの木を調査しました。その結果、3地点全てで、高い割合で木の形の変化が見られたということです。また、形が変化したモミの数は、空間線量が高い地域ほど多かったということです。
「放射線の影響も可能性の一つだとわかった。放射線によって起きているかどうかは現時点では不明」(分析した放射線医学総合研究所 吉田聡工学博士)
これまでの環境省の調査では、他の野生動植物に形態変化は確認されていないということで、変化が確認されたのはモミの木が初めてです。環境省は今後、モミの木が受けた被ばく線量を調べるなどして、放射線の影響との因果関係を明らかにしていきたいとしています。
放射線で成長止まる?=原発避難区域のモミ—放医研
2015 年 8 月 28 日 時事ドットコム
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201508/2015082800873&g=soc
放射線医学総合研究所は28日、東京電力福島第1原発事故の避難指示区域に自生するモミの一部について、放射線の影響で成長が止まった可能性があると発表した。検証を依頼した環境省は今後、詳細な再検証を検討する。避難指示区域の動植物の形態変化が見つかったのは初めて。
環境省によると、放射線量が最も高い福島県大熊、浪江両町の「帰還困難区域」で昨年12月、主幹の成長が止まっているモミが多数見つかった。3地点で計441本を調べたところ、空間放射線量が高い地点の順に98、44、27%の出現率だった。
変化は12年以降に多く発生し、14年には減少していた。比較のため茨城県で実施した118本の調査では、6%の出現率だったという。
放医研によると、モミなどの針葉樹は放射線の影響を受けやすいほか、風害や食害などによっても形態変化が起きるという。
原発事故が原因? モミの木の形に異常
2015/08/28 よみうりテレビ
http://www.ytv.co.jp/press/mainnews/TI20184095.html
福島第一原発事故の放射性物質によって、モミの木の形に異常が生じた可能性があるとする論文が28日、イギリスの科学誌のウェブサイトに掲載された。
環境省の依頼で放射線医学総合研究所(放医研)がまとめた論文によると、福島第一原発周辺の帰還困難区域のモミの木を調べたところ、原発から距離が近くて空間線量が高い地域ほど幹の先端部分が欠け、二股に分かれるといった形態異常の木の割合が多く、その割合は、原発事故の翌年以降に著しく増えたという。
環境省は44種類の野生動植物を調査しているが、形態の異常が明確に確認されたのはモミだけだったという。
環境省と放医研は今後、モミの木に人工的に放射線を当てるなどして放射能と形態異常に因果関係があるかさらに調べるとしている。
モミの木:福島で生育異常が増加…線量高い場所ほど多発
毎日新聞 2015年08月28日
放医研が調査したのは今年1月。第一原発から3・5キロの大熊町(毎時33・9マイクロシーベルト)、8・5キロと15キロの浪江町の2カ所(同19・6と同6・85)。放射線の影響が少ないとみられる茨城県北茨城市(同0・13)のモミと比べた。
モミは毎年、幹を上に伸ばし、横に2本程度の枝を出す。チームは幹の欠損などを「形態変化」ととらえ、それぞれの場所で100~200本を調べた。空間線量が最も高い大熊町で9割以上が変化、浪江町では4割強、3割弱と変化率が減少するものの、北茨城市でも1割弱で変化があったという。
放医研によると、チェルノブイリ事故の事例などでマツなどの針葉樹は放射線の影響を受けやすい。ただし、動物による食害や病気、冷害などによる変化の可能性もある。
環境省は原発事故後、放射線による生態系への影響を調べている。その過程でモミの木について、放医研に詳細な調査を依頼していた。環境省は44種の動植物を調べているが、ほかに目立った変化は確認されていないという。
■「貴重なデータ」
中西友子・東京大教授(放射線植物生理学)は「帰還困難区域は研究者もなかなか入れず、情報がなかった場所なので貴重なデータ。だが、ほかの要因が影響している可能性もある。モミの木の変化が本当に放射線の影響なのか、実験室で放射線を当ててどう変化が起きるのか確認する必要がある」と話した。
福島復興支援本部 環境動態・影響プロジェクト 渡辺嘉人 主任研究員
本研究のポイント
東京電力福島第一原子力発電所近くの帰還困難区域内の放射線量(空間線量率)が特に高い地域に自生するモミの木において、空間線量率が低い地域のものと比べ、主幹が欠損した二股様の形態変化を示す個体の頻度が増加
放射線被ばくとの因果関係の実証には、自生するモミの被ばく線量評価、人工的な放射線照射試験による検証など、課題は多い
国立研究開発法人放射線医学総合研究所(理事長:米倉義晴、以下、放医研)は、環境省が実施した野生動植物への放射線影響を把握するための調査のうち、モミ※1に関する結果について、環境省の依頼によりデータのとりまとめを行いました。
東京電力福島第一原子力発電所事故の影響を強く受けた、帰還困難区域内の空間線量率が特に高い地域に自生するモミ個体群を調査した結果を解析したところ、空間線量率が低い地域の個体群と比べて形態変化の発生頻度の顕著な増加が認められました。また、空間線量率に依存してその頻度が高くなっていることがわかりました。
この形態変化では木の主幹の欠損に起因した二股様の分枝が特徴的に認められました※2。主幹欠損は放射線以外の環境要因や物理的傷害(食害)などでも発生しうるため、必ずしも放射線に特異的な現象ではありませんが、一般的にモミを含む針葉樹は放射線感受性が高いことを踏まえると※3、今回の結果は、放射線が東京電力福島第一原子力発電所近くの地域におけるモミの形態変化の一因となっている可能性を示唆しています。
今後、形態変化の発生と放射線被ばくとの因果関係を明確にするためには、モミが受けた放射線被ばく線量を正確に見積もることや、実験施設内でモミに対して人為的な放射線照射を行って同様の形態変化が発生するかを調べていくことなどが必要です。
この取りまとめ結果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」に2015年8月28日18時(日本時間)に掲載されました。
Yoshito Watanabe, San'ei Ichikawa, Masahide Kubota, Junko Hoshino, Yoshihisa Kubota, Kouichi Maruyama, Shoichi Fuma, Isao Kawaguchi, Vasyl I. Yoschenko & Satoshi Yoshida, Morphological defects in native Japanese fir trees around the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant, Sci Rep. 2015 Aug 5:13232
2015 年 8 月 28 日 時事ドットコム
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201508/2015082800873&g=soc
放射線医学総合研究所は28日、東京電力福島第1原発事故の避難指示区域に自生するモミの一部について、放射線の影響で成長が止まった可能性があると発表した。検証を依頼した環境省は今後、詳細な再検証を検討する。避難指示区域の動植物の形態変化が見つかったのは初めて。
環境省によると、放射線量が最も高い福島県大熊、浪江両町の「帰還困難区域」で昨年12月、主幹の成長が止まっているモミが多数見つかった。3地点で計441本を調べたところ、空間放射線量が高い地点の順に98、44、27%の出現率だった。
変化は12年以降に多く発生し、14年には減少していた。比較のため茨城県で実施した118本の調査では、6%の出現率だったという。
放医研によると、モミなどの針葉樹は放射線の影響を受けやすいほか、風害や食害などによっても形態変化が起きるという。
原発事故が原因? モミの木の形に異常
2015/08/28 よみうりテレビ
http://www.ytv.co.jp/press/mainnews/TI20184095.html
福島第一原発事故の放射性物質によって、モミの木の形に異常が生じた可能性があるとする論文が28日、イギリスの科学誌のウェブサイトに掲載された。
環境省の依頼で放射線医学総合研究所(放医研)がまとめた論文によると、福島第一原発周辺の帰還困難区域のモミの木を調べたところ、原発から距離が近くて空間線量が高い地域ほど幹の先端部分が欠け、二股に分かれるといった形態異常の木の割合が多く、その割合は、原発事故の翌年以降に著しく増えたという。
環境省は44種類の野生動植物を調査しているが、形態の異常が明確に確認されたのはモミだけだったという。
環境省と放医研は今後、モミの木に人工的に放射線を当てるなどして放射能と形態異常に因果関係があるかさらに調べるとしている。
モミの木:福島で生育異常が増加…線量高い場所ほど多発
毎日新聞 2015年08月28日
東京電力福島第1原発事故に伴う福島県の帰還困難区域内で、2012年以降にモミの木の生育異常が増加しているとの調査結果を、放射線医学総合研究所の渡辺嘉人主任研究員らが28日、英科学誌サイエンティフィックリポーツに発表した。放射線量が高い場所ほど異常な木の割合が高く、放射線の影響の可能性がある。チームは「放射線との因果関係やメカニズムを解明するにはさらに研究が必要だ」としている。
◇幹の先端、芽が出ず
チームは大熊町と浪江町の計3カ所と、比較対象として茨城県北茨城市でそれぞれ111〜202本のモミの木を調べた。その結果、放射線量が最も高い大熊町の調査地(毎時33.9マイクロシーベルト)では97.6%で、幹の先端の「主幹」と呼ばれる芽がなかった。主幹がないと生育が止まる。放射線量が同19・6マイクロシーベルトと同6.85マイクロシーベルトの浪江町の2カ所の調査地では、それぞれ43.5%と27%に異常が見られた。一方、北茨城市(同0.13マイクロシーベルト)では5.8%にとどまった。
環境省が11年度から実施している野生動植物調査では、約80種を調べた結果、モミ以外で異常は見られないという。針葉樹は放射線の影響を受けやすいことが知られており、旧ソ連・チェルノブイリ原発事故後には、ヨーロッパアカマツなどで異常が出たという報告がある。メカニズムは分かっていない。
チェルノブイリ事故の環境影響に詳しい笠井篤・元日本原子力研究所研究室長は「チェルノブイリで木に影響が出た地域の線量は今回の調査地点よりけた違いに高い。気象条件など自然環境要因も考慮し、慎重に原因を調べる必要がある」と指摘する。【渡辺諒】
チームは大熊町と浪江町の計3カ所と、比較対象として茨城県北茨城市でそれぞれ111〜202本のモミの木を調べた。その結果、放射線量が最も高い大熊町の調査地(毎時33.9マイクロシーベルト)では97.6%で、幹の先端の「主幹」と呼ばれる芽がなかった。主幹がないと生育が止まる。放射線量が同19・6マイクロシーベルトと同6.85マイクロシーベルトの浪江町の2カ所の調査地では、それぞれ43.5%と27%に異常が見られた。一方、北茨城市(同0.13マイクロシーベルト)では5.8%にとどまった。
環境省が11年度から実施している野生動植物調査では、約80種を調べた結果、モミ以外で異常は見られないという。針葉樹は放射線の影響を受けやすいことが知られており、旧ソ連・チェルノブイリ原発事故後には、ヨーロッパアカマツなどで異常が出たという報告がある。メカニズムは分かっていない。
チェルノブイリ事故の環境影響に詳しい笠井篤・元日本原子力研究所研究室長は「チェルノブイリで木に影響が出た地域の線量は今回の調査地点よりけた違いに高い。気象条件など自然環境要因も考慮し、慎重に原因を調べる必要がある」と指摘する。【渡辺諒】
福島で放医研調査
2015年8月29日 朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11937171.html
東京電力福島第一原発事故によって帰還困難区域になっている福島県内の山林で、幹が上に伸びていないモミの木が見つかったと放射線医学総合研究所などのチームが28日、明らかにした。空間線量が高いと、伸びない木が多い傾向があった。「放射線が原因か不明だが、可能性の一つ」と説明している。
2015年8月29日 朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11937171.html
東京電力福島第一原発事故によって帰還困難区域になっている福島県内の山林で、幹が上に伸びていないモミの木が見つかったと放射線医学総合研究所などのチームが28日、明らかにした。空間線量が高いと、伸びない木が多い傾向があった。「放射線が原因か不明だが、可能性の一つ」と説明している。
放医研が調査したのは今年1月。第一原発から3・5キロの大熊町(毎時33・9マイクロシーベルト)、8・5キロと15キロの浪江町の2カ所(同19・6と同6・85)。放射線の影響が少ないとみられる茨城県北茨城市(同0・13)のモミと比べた。
モミは毎年、幹を上に伸ばし、横に2本程度の枝を出す。チームは幹の欠損などを「形態変化」ととらえ、それぞれの場所で100~200本を調べた。空間線量が最も高い大熊町で9割以上が変化、浪江町では4割強、3割弱と変化率が減少するものの、北茨城市でも1割弱で変化があったという。
放医研によると、チェルノブイリ事故の事例などでマツなどの針葉樹は放射線の影響を受けやすい。ただし、動物による食害や病気、冷害などによる変化の可能性もある。
環境省は原発事故後、放射線による生態系への影響を調べている。その過程でモミの木について、放医研に詳細な調査を依頼していた。環境省は44種の動植物を調べているが、ほかに目立った変化は確認されていないという。
■「貴重なデータ」
中西友子・東京大教授(放射線植物生理学)は「帰還困難区域は研究者もなかなか入れず、情報がなかった場所なので貴重なデータ。だが、ほかの要因が影響している可能性もある。モミの木の変化が本当に放射線の影響なのか、実験室で放射線を当ててどう変化が起きるのか確認する必要がある」と話した。
変化が現れたモミの木。まっすぐ上に伸びるはずの幹がない |
帰還困難区域、モミの木伸びず…放射線影響か
2015年08月29日 読売新聞
2015年08月29日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/science/20150828-OYT1T50129.html
環境省と放射線医学総合研究所は28日、東京電力福島第一原子力発電所から15キロ以内の帰還困難区域の山林で、モミの木の幹が途中から伸びない形態変化が確認されたと発表した。
チェルノブイリ原発事故でも周辺の針葉樹に同様の変化が出ており、同省などは原発事故の影響もあるとみて、因果関係を詳しく調べる。
同省は2011年度以降、福島第一原発周辺で、野ウサギやヒノキなど計79種の動植物について放射線の影響を調査している。モミ以外の78種に異常は確認されなかった。
モミは、福島県大熊町(原発から3・5キロ)と浪江町(同8・5キロ、同15キロ)の計3地点で、事故前から生えていた計441本を調査。いずれも居住や農業ができない帰還困難区域内で、幹が伸びない変化は、距離が近い順に98%、44%、27%の割合で見つかった。比較のため、放射線の影響がないとみられる茨城県内で調査した188本では、形態変化は6%にとどまった。
環境省と放射線医学総合研究所は28日、東京電力福島第一原子力発電所から15キロ以内の帰還困難区域の山林で、モミの木の幹が途中から伸びない形態変化が確認されたと発表した。
チェルノブイリ原発事故でも周辺の針葉樹に同様の変化が出ており、同省などは原発事故の影響もあるとみて、因果関係を詳しく調べる。
同省は2011年度以降、福島第一原発周辺で、野ウサギやヒノキなど計79種の動植物について放射線の影響を調査している。モミ以外の78種に異常は確認されなかった。
モミは、福島県大熊町(原発から3・5キロ)と浪江町(同8・5キロ、同15キロ)の計3地点で、事故前から生えていた計441本を調査。いずれも居住や農業ができない帰還困難区域内で、幹が伸びない変化は、距離が近い順に98%、44%、27%の割合で見つかった。比較のため、放射線の影響がないとみられる茨城県内で調査した188本では、形態変化は6%にとどまった。
モミの木、生育異常 大熊、浪江の帰還困難区域で増加
2015年8月29日 福島民友
http://www.minyu-net.com/news/news/0829/news10.html
(これらのニュースソースは、放医研による下記の調査ですので、放医研HPよりコピーしておきます。 子ども全国ネット)
http://www.nirs.go.jp/information/event/report/2015/0828.shtml
平成27年8月28日
放射線量が特に高い地域でモミの形態変化を調査
国立研究開発法人放射線医学総合研究所
東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域となった大熊、浪江両町の山林に自生するモミの木について、幹が伸びない異常が増えていることが28日、放射線医学総合研究所(放医研)などの研究チームの調査で分かった。放射線量が高い地点ほど形が変わったモミが多く見つかり、放射線の影響による可能性がある。研究グループは同日付の英科学誌電子版に結果を発表した。
研究を依頼した環境省は2011(平成23)年から避難区域で約80種類の野生動植物について放射線の影響を調べているが、実際に影響がうかがわれる事例が確認されたのは初めて。同省は「放射線との因果関係を解明するには、被ばく線量を正確に見積もったり、実験施設内でモミに放射線を照射したりする必要がある」と再調査を検討する。
研究グループが1月、大熊、浪江両町の3地点で1地点当たり100~200本程度を調べた結果、大熊町の地点(放射線量は毎時33.9マイクロシーベルト)は98%、浪江町の地点(同19.6マイクロシーベルト)は44%、同町の別地点(同6.85マイクロシーベルト)は27%に形の変化が見つかった。比較のため、茨城県北茨城市(同0.13マイクロシーベルト)で調査したところ、異常は6%だった。
大熊、浪江両町の3地点のモミは12年以降に変化が多く発生、14年には減少した。
放医研によると、モミなどの針葉樹は放射線の影響を受けやすいとされる。一方、風害や食害、病気でも異常が起きるという。
(これらのニュースソースは、放医研による下記の調査ですので、放医研HPよりコピーしておきます。 子ども全国ネット)
http://www.nirs.go.jp/information/event/report/2015/0828.shtml
平成27年8月28日
放射線量が特に高い地域でモミの形態変化を調査
国立研究開発法人放射線医学総合研究所
(理事長:米倉義晴)
福島復興支援本部 環境動態・影響プロジェクト 渡辺嘉人 主任研究員
本研究のポイント
東京電力福島第一原子力発電所近くの帰還困難区域内の放射線量(空間線量率)が特に高い地域に自生するモミの木において、空間線量率が低い地域のものと比べ、主幹が欠損した二股様の形態変化を示す個体の頻度が増加
放射線被ばくとの因果関係の実証には、自生するモミの被ばく線量評価、人工的な放射線照射試験による検証など、課題は多い
国立研究開発法人放射線医学総合研究所(理事長:米倉義晴、以下、放医研)は、環境省が実施した野生動植物への放射線影響を把握するための調査のうち、モミ※1に関する結果について、環境省の依頼によりデータのとりまとめを行いました。
東京電力福島第一原子力発電所事故の影響を強く受けた、帰還困難区域内の空間線量率が特に高い地域に自生するモミ個体群を調査した結果を解析したところ、空間線量率が低い地域の個体群と比べて形態変化の発生頻度の顕著な増加が認められました。また、空間線量率に依存してその頻度が高くなっていることがわかりました。
この形態変化では木の主幹の欠損に起因した二股様の分枝が特徴的に認められました※2。主幹欠損は放射線以外の環境要因や物理的傷害(食害)などでも発生しうるため、必ずしも放射線に特異的な現象ではありませんが、一般的にモミを含む針葉樹は放射線感受性が高いことを踏まえると※3、今回の結果は、放射線が東京電力福島第一原子力発電所近くの地域におけるモミの形態変化の一因となっている可能性を示唆しています。
今後、形態変化の発生と放射線被ばくとの因果関係を明確にするためには、モミが受けた放射線被ばく線量を正確に見積もることや、実験施設内でモミに対して人為的な放射線照射を行って同様の形態変化が発生するかを調べていくことなどが必要です。
この取りまとめ結果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」に2015年8月28日18時(日本時間)に掲載されました。
Yoshito Watanabe, San'ei Ichikawa, Masahide Kubota, Junko Hoshino, Yoshihisa Kubota, Kouichi Maruyama, Shoichi Fuma, Isao Kawaguchi, Vasyl I. Yoschenko & Satoshi Yoshida, Morphological defects in native Japanese fir trees around the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant, Sci Rep. 2015 Aug 5:13232
背景と目的
東京電力福島第一原子力発電所事故により環境中に放出された放射性物質の野生動植物への影響については、環境省が平成23年度より帰還困難区域内の空間線量率が特に高い地域を中心とした調査を実施しており、放医研も空間線量率測定等に関する技術支援を行い、これに協力してきました。そうした中、環境省は平成26年度の調査でモミに形態変化が見られたことから、放医研に検証を依頼、放医研はデータを取りまとめ、論文として公表しました。
研究手法と結果
事故から約4年が経過した2015年1月に、帰還困難区域内に3か所の試験区(図1のS1~S3)、また東京電力福島第一原子力発電所から離れた地域に1か所の対照区※4(図1のS4)を設定して、森林に自生するモミの個体群について樹木形態の調査を実施しました。各試験区にそれぞれ800~1200平方メートルの区画を設けて、区画内に自生するモミ(各区画でおよそ100~200個体)の幼木を中心とした高さ40cm~5mの全ての個体を観察対象にしました。
図1 観察地点
赤い星は東京電力福島第一原子力発電所の位置を示す。空間線量率の表示は2013年1月19日航空機サーベイの測定値(放射線量等分布マップ、文部科学省)。
対照区を含めて各試験区では、樹木の主幹の途中欠損を特徴とする形態変化が共通して見られました(図2のB、C)。
図2 モミの形態変化
矢印は、主幹の欠損位置を示す。 A:正常、B:変化(側枝が垂直に立ち上る)、C:変化(側枝が水平に拡がる)。
この形態変化の発生頻度は、対照区と比べて帰還困難区域内の3試験区で、明らかに増加しました(図3)。また帰還困難区域内の空間線量率が高い地域ほど、形態変化を示すモミ個体の頻度の増加が認められました。
図3 各試験区におけるモミの形態変化の発生頻度
頂端から5つの節を遡って観察した。各地点の空間線量率をカッコ内に示した。**は、各試験区と対照区の間で変化個体の頻度に統計的有意差があることを示す。図中の各試験区の空間線量率は、樹木の観察時(2015年1月)の測定値。
樹木個体ごとに主幹欠損の発生部位を同定すると、帰還困難区域内の試験区では事故前年の2010年に比べて、事故翌年の2012年から2013年の伸長部位で主幹欠損の発生頻度に顕著な増加が認められました(図4)。この様な結果となった理由については今後実験によって解明することが必要ですが、樹木では、主幹になる基(原基)が発生してから伸長するまで長い時間を要するので、事故後に原基が損傷を受けても主幹欠損が現れるまで数年かかることによると推測することができます。
図4 モミの形態変化発生頻度の経年変化
主幹欠損が一旦発生して主幹が失われた個体からは、次年度以降新たな主幹欠損は発生しないため、次年度以降の頻度計算から除外した。そのため、各年の頻度計算に使われるモミの総数は年と共に減少する。各バーに記載された数字はその年の頻度計算に使用されたモミの総数を示している。**、††、‡等の記号は、変化個体の頻度が2010年に比べて統計的に有意に高いことを示す。
本研究と今後の展望
今回の研究により、東京電力福島第一原子力発電所の事故後に空間線量率が特に高い地域のモミに高頻度で形態変化が生じていることがわかりました。
一方で、今回着目した形態変化(主幹欠損)は他の環境要因や物理的傷害(食害)などでも発生しうることから、今後、形態変化の発生と事故による放射線被ばくとの因果関係をより明確にするためには、空間線量率が特に高い地域でモミが受けた放射線被ばく線量を正確に見積もり、形態変化の発生頻度の推移を長期的に見守っていくことに加えて、実験施設内でモミに対して人為的な放射線照射を行って同様な形態変化が発生するかを調べていくことが必要です。
ここに掲載している内容は、Y. Watanabeらによる" Morphological defects in native Japanese fir trees around the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant "を元にしており、クリエイティブ・コモンズの下でライセンスされています。
用語説明
※1 モミ
マツ科モミ属の常緑針葉樹。学名はAbies firma。日本に自生するモミ属の中で最も温暖地に生育し、北は秋田県から南は屋久島まで広く分布する。
※2 モミの形態形成
モミは通常、垂直に伸びる1本の主幹を中心に側枝が輪生状に形成される(クリスマスツリーのような形状)。主幹・側枝は、前年に形成された冬芽から通常1年に一度だけ春~夏に伸長し、それぞれの先端部に新たに翌年の冬芽が形成される。冬芽には頂芽と側芽の区別があり、主幹の先端部の中央についた頂芽から当年の主幹(一年生幹)が、頂芽を囲むように配置する側芽から1~数本の当年の側枝が伸長する。
※3 針葉樹の放射線感受性
針葉樹が一般的に放射線高感受性であることは、アメリカや日本における野外放射線照射施設(ガンマフィールド)を用いて行われた樹木の放射線照射実験や、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故の事例等から知られている。チェルノブイリ原発事故後の放射能汚染地域においては、ヨーロッパアカマツ(Pinus sylvestris)とドイツトウヒ(Picea abies)の針葉樹2在来種が明瞭な生物学的障害を示したことが報告されている。
※4 対照区
放射線量による影響を調べるため、放射線影響が無いと考えられる程度に空間線量率が低い地点(S4)を対照区として選定した。
東京電力福島第一原子力発電所事故により環境中に放出された放射性物質の野生動植物への影響については、環境省が平成23年度より帰還困難区域内の空間線量率が特に高い地域を中心とした調査を実施しており、放医研も空間線量率測定等に関する技術支援を行い、これに協力してきました。そうした中、環境省は平成26年度の調査でモミに形態変化が見られたことから、放医研に検証を依頼、放医研はデータを取りまとめ、論文として公表しました。
研究手法と結果
事故から約4年が経過した2015年1月に、帰還困難区域内に3か所の試験区(図1のS1~S3)、また東京電力福島第一原子力発電所から離れた地域に1か所の対照区※4(図1のS4)を設定して、森林に自生するモミの個体群について樹木形態の調査を実施しました。各試験区にそれぞれ800~1200平方メートルの区画を設けて、区画内に自生するモミ(各区画でおよそ100~200個体)の幼木を中心とした高さ40cm~5mの全ての個体を観察対象にしました。
図1 観察地点
赤い星は東京電力福島第一原子力発電所の位置を示す。空間線量率の表示は2013年1月19日航空機サーベイの測定値(放射線量等分布マップ、文部科学省)。
対照区を含めて各試験区では、樹木の主幹の途中欠損を特徴とする形態変化が共通して見られました(図2のB、C)。
図2 モミの形態変化
矢印は、主幹の欠損位置を示す。 A:正常、B:変化(側枝が垂直に立ち上る)、C:変化(側枝が水平に拡がる)。
この形態変化の発生頻度は、対照区と比べて帰還困難区域内の3試験区で、明らかに増加しました(図3)。また帰還困難区域内の空間線量率が高い地域ほど、形態変化を示すモミ個体の頻度の増加が認められました。
図3 各試験区におけるモミの形態変化の発生頻度
頂端から5つの節を遡って観察した。各地点の空間線量率をカッコ内に示した。**は、各試験区と対照区の間で変化個体の頻度に統計的有意差があることを示す。図中の各試験区の空間線量率は、樹木の観察時(2015年1月)の測定値。
樹木個体ごとに主幹欠損の発生部位を同定すると、帰還困難区域内の試験区では事故前年の2010年に比べて、事故翌年の2012年から2013年の伸長部位で主幹欠損の発生頻度に顕著な増加が認められました(図4)。この様な結果となった理由については今後実験によって解明することが必要ですが、樹木では、主幹になる基(原基)が発生してから伸長するまで長い時間を要するので、事故後に原基が損傷を受けても主幹欠損が現れるまで数年かかることによると推測することができます。
図4 モミの形態変化発生頻度の経年変化
主幹欠損が一旦発生して主幹が失われた個体からは、次年度以降新たな主幹欠損は発生しないため、次年度以降の頻度計算から除外した。そのため、各年の頻度計算に使われるモミの総数は年と共に減少する。各バーに記載された数字はその年の頻度計算に使用されたモミの総数を示している。**、††、‡等の記号は、変化個体の頻度が2010年に比べて統計的に有意に高いことを示す。
本研究と今後の展望
今回の研究により、東京電力福島第一原子力発電所の事故後に空間線量率が特に高い地域のモミに高頻度で形態変化が生じていることがわかりました。
一方で、今回着目した形態変化(主幹欠損)は他の環境要因や物理的傷害(食害)などでも発生しうることから、今後、形態変化の発生と事故による放射線被ばくとの因果関係をより明確にするためには、空間線量率が特に高い地域でモミが受けた放射線被ばく線量を正確に見積もり、形態変化の発生頻度の推移を長期的に見守っていくことに加えて、実験施設内でモミに対して人為的な放射線照射を行って同様な形態変化が発生するかを調べていくことが必要です。
ここに掲載している内容は、Y. Watanabeらによる" Morphological defects in native Japanese fir trees around the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant "を元にしており、クリエイティブ・コモンズの下でライセンスされています。
用語説明
※1 モミ
マツ科モミ属の常緑針葉樹。学名はAbies firma。日本に自生するモミ属の中で最も温暖地に生育し、北は秋田県から南は屋久島まで広く分布する。
※2 モミの形態形成
モミは通常、垂直に伸びる1本の主幹を中心に側枝が輪生状に形成される(クリスマスツリーのような形状)。主幹・側枝は、前年に形成された冬芽から通常1年に一度だけ春~夏に伸長し、それぞれの先端部に新たに翌年の冬芽が形成される。冬芽には頂芽と側芽の区別があり、主幹の先端部の中央についた頂芽から当年の主幹(一年生幹)が、頂芽を囲むように配置する側芽から1~数本の当年の側枝が伸長する。
※3 針葉樹の放射線感受性
針葉樹が一般的に放射線高感受性であることは、アメリカや日本における野外放射線照射施設(ガンマフィールド)を用いて行われた樹木の放射線照射実験や、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故の事例等から知られている。チェルノブイリ原発事故後の放射能汚染地域においては、ヨーロッパアカマツ(Pinus sylvestris)とドイツトウヒ(Picea abies)の針葉樹2在来種が明瞭な生物学的障害を示したことが報告されている。
※4 対照区
放射線量による影響を調べるため、放射線影響が無いと考えられる程度に空間線量率が低い地点(S4)を対照区として選定した。
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