2015年8月30日 共同通信
http://www.47news.jp/47topics/e/268558.php
東京電力福島第1原発事故で福島県楢葉町に出ていた避難指示の解除が9月5日に迫った。全町避難している自治体で初となる解除だが、住民の帰還の動きは鈍い。一方、31日からは避難区域を抱える3市町村で、住民が長期間滞在できる準備宿泊が始まり、解除に向けた動きが加速している。
▽「不便はない」
8月20日、楢葉町の至る所で、住宅や道路の修繕作業が行われていた。重機を載せたトラックや、作業員の車が道路を行き交い、解除に向け準備が急ピッチで進む。
楢葉町は、ほぼ全域が比較的放射線量の低い「避難指示解除準備区域」。日中の滞在のみ認められていたが、ことし4月からは解除に向け、夜間も滞在できる準備宿泊を実施中だ。
4月に自宅での生活を始めた主婦(63)は「近所の家は帰っている人が多いし、水道や電気も通っている。あまり不便はない」と笑顔を見せた。
原発事故前に一緒に住んでいた長男夫婦と孫ら5人は、福島県いわき市の借り上げ住宅に避難したままだが、「楢葉で学校が再開すれば戻ってきたい、と言ってくれている」。
▽準備宿泊1割
とはいえ、楢葉町全体で見ると、住民の帰還はあまり進んでいないのが現状だ。
町の人口約7400人のうち、準備宿泊の申込者数は8月26日現在で778人と、約1割にとどまる。
帰還を進めようと、国は、除染後も放射線量が高い地点を中心に「フォローアップ除染」を実施。隣の広野町にある病院へ通院するためのバスの運行や、町内にあるスーパーからの宅配を始めるなど、住民サービスの拡充にも努める。
だが、住民からは解除目前になっても「水道水に使っているダムの底に放射性物質を含む泥があり不安だ」「自宅をリフォームしたいが業者が足りず、帰れる状況になっていない」との声が漏れる。
昨年4月に避難指示が解除された田村市都路地区では約54%、同10月に解除された川内村では約14%の住民しか解除区域に戻っていない。楢葉町も同様に帰還が進まないのではと懸念は強まる。
▽残る除染廃棄物
政府は8月31日から、福島県の南相馬市、川俣町、葛尾村の居住制限区域と避難指示解除準備区域でも準備宿泊を実施する。解除に向けた動きが加速するが、住民への説明会では反対する声が根強い。
南相馬市小高区で行政区長を務める 島尾清助さん(68)は「除染廃棄物が、自宅や道路脇に残されている。まだ帰還できるような状況にはなっていない」と憤る。
島尾さんの元には、小学生の子どもを持つ母親から「廃棄物を早く持って行ってほしい」といった不安の声が多く届く。
だが、同県双葉、大熊両町に建設中の除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設は、建設予定地の用地取得が大幅に遅れ、いつ廃棄物が搬出されるのかめどが立っていない。
島尾さんは「多くの住民に自宅へ戻ってほしいから、国はいずれ避難指示を解除するはず。ただ今の状況のままだと、特に若い世代の帰還は増えないだろう」と話した。
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