2016/01/08

福島・楢葉町/小中4人が車に揺られ通学 仮校舎に1時間


2016年1月8日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160108/k00/00e/040/188000c 

東京電力福島第1原発事故による全域避難指示が昨年9月に解除された福島県楢葉町から、約30キロ離れた仮校舎に1時間かけて通う小中学生がいる。2学期は2人だったが、8日に始まった3学期から4人に増えた。学校が町に戻るのは来年4月。それまでは町が用意する車に朝夕揺られながら通う日々が続く。

「おはよう!」。8日午前7時前。車の後部座席に、中学1年の立花美紗さん(13)と弟で小学4年の克磨さん(10)が乗り込んだ。「今日から4人だね」。それぞれの自宅前で児童・生徒を乗せて同県いわき市の仮校舎へ向かった。

昨年10月、最初に町に戻った子どもは立花さん姉弟だった。避難先のいわき市の借り上げアパートは、老朽化などでビー玉が転がるほど建物が傾き「気持ち悪く、寝ていると肩が痛くなる」ほど。両親が自宅周辺の空間放射線量を測ると、国が除染対象の地域を判断する際の基準となる毎時0.23マイクロシーベルトを下回っていた。「町に戻ろう」。両親の言葉に姉弟は跳び上がって喜んだ。

町は2012年4月、町民の多くが避難生活を送るいわき市に町立小中学校の仮校舎を開設。就学対象者の約2割にあたる約145人が通う。線量や医療施設の再開など帰還の環境整備が整っていないことを懸念する保護者が多いため、町に学校を戻すのは来年4月と決めた。

立花さん一家から帰還後の通学方法を相談された町は、自宅から仮校舎まで車を用意して送迎することを決定。下校時に両親が仕事から自宅に戻っていない場合も考え、町内の施設で学童保育を始めることにした。

町の対応は町民の間で話題になり、帰還を検討する保護者から「子どもを連れて楢葉に戻っても、通学に問題ないと安心した」との声も上がる。新年度には仮校舎に通う児童・生徒は最大で8人になる見通しだ。部活で帰宅の遅い生徒にも対応するため、町は車を2台使うことも検討している。

登校中の車中で姉弟ら4人は会話したり、予習したり、物語を読んだり、仮眠を取ったりとそれぞれの時間をすごす。克磨さんは「学校に通うのに時間はかかるけど、みんなでいると楽しい。だから、友達には一人でも多く町に戻ってきてほしい」と話した。【栗田慎一】

いわき市にある町立小中学校に通うため、町が用意した車に乗って登校する立花克磨さん(手前)と姉の美紗さん=福島県楢葉町で2016年1月8日午前6時53分、佐々木順一撮影

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