2016/02/01

<検証福島の学校>地域挙げて試行錯誤

2016年02月02日 河北新報
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201602/20160202_63012.html

◎震災5年へ(中)再生途上

東京電力福島第1原発事故の避難指示が解かれ、元の校舎で再出発した学校がある。課題を抱えつつ再生へ試行錯誤を重ねている。

1月26日、福島県田村市都路地区の古道小。6年生16人がお世話になった住民を招き、感謝の気持ちを伝えた。

「都路をもっと笑顔にしたいので、これからもいろいろと教えてください」

地域との接点を増やそうと、積極的に外に出る。古里で頑張る人を紹介するビデオ制作に取り組み、この日は旅館経営の男性や、バレーボールの監督ら取材した5人に手紙を渡した。

インタビューした地域の「先生」に感謝の気持ちを伝える子どもたち
=1月26日、田村市都路の古道小

<大人の力必要>

都路地区東部の避難指示が解除された2014年4月、地区の3小中学校は元の学びやに戻った。

古道小は再開当初66人。本年度は56人に減った。震災前は99人。もともと過疎と少子化に悩んでいた。少人数でも社会性を養うため、大人を巻き込んだ授業に力を入れる。

「農業や伝統文化など多彩な経験を持つ『先生』がいる。学校が立ち直るには地域との関わりが欠かせない」と根内喜代重校長は説く。

学校で採れた野菜の新メニューを大人と一緒に考える。手芸を習うため、お年寄りを訪ねる。地区西部の岩井沢小(児童28人)との学習交流も活発化。2校は17年4月にも統合する予定だ。

ミシン縫いなどを教える今泉富代さん(67)は「子どもの未来のために、限界集落にしてはならない。一人でも多くの大人の力が必要」と力を込める。

<校庭で運動会>

一方、帰還が進めば、今後さらに子どもたちが増えると見込まれる町もある。

一時、全住民が避難した広野町は12年8月、町内で小中学校を再開した。広野小の鈴木宣雄校長は「少しずつだが、本来の姿に戻りつつある」と話す。

再開時に65人だった児童は本年度、113人に増え、町民の小学生(212人)の半数を超えた。昨年7月にはPTAが復活。放射性物質への不安などから、人工芝の広場で開いていた運動会も、本年度は事故後初めて校庭で実施した。

「休み時間に、子どもが校庭で遊ぶ姿が普通になった」と鈴木校長。今春には児童が120人を超え、1年生が全学年で初めて2クラスになる見込みだ。

広野中も生徒が66人と、再開時から倍増した。まだ町民の中学生(144人)の半数以下だが、昨年11月には剣道部が男女とも県大会で団体ベスト8に進んだ。

「小中とも活気が出てきている」(町教委)とはいえ、課題はなお残る。

小中学生の約2割は避難先のいわき市から通学する。国道6号の渋滞でスクールバスが始業に遅れる日もある。中学校は野球部やサッカー部を再開できていない。3000人超の作業員が住むなど町の環境も変わった。

広野小PTA会長の木幡昭幸さん(36)は「町の将来のためにも学校が学校らしい姿に戻ることが大切。課題や不安を挙げたら切りがないが、地域全体が手を組み、子どもを守り育てる環境を整えたい」と語る。

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