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「住民は誰一人賛成していないのに、国のやり方は汚いぞ」。2014(平成26)年10月、宮城県加美町の国有林へ向かう一本道で、環境省職員に対して人垣をつくり阻止する町民グループの男性(73)は怒声を上げた。
加美町は、東京電力福島第1原発事故により発生した指定廃棄物の最終処分をめぐり、政府が宮城県の処分場候補地に選んだ3カ所の一つだ。男性は「放射性廃棄物最終処分場建設に断固反対する会」の役員として運動に身を投じる。
放射性物質を含む焼却灰などで放射性セシウムの濃度が1キロ当たり8000ベクレル超の指定廃棄物について、政府は宮城など5県に1カ所ずつ処分場を整備する方針だった。しかし、住民や行政の反対により、各地で調査すらできない事態に発展。処分の行方が不透明な中、本県での集約処理を訴える声が後を絶たない。
加美町では14~15年にかけて環境省職員が現地調査を試みたが、その都度、町民が阻止した。男性は「町を放射性物質で汚したくない」と、純粋な思いを口にする。
根底に福島県は「汚染されたところ」との意識がある。「福島の汚染された場所で集約処分すべき。どこで処分しても風評被害は出るが、福島は発生元だから被害が生じても仕方がないじゃないか」
「(事故から)時間がたつほど、県外では福島の農家がどんな努力をしているか分からなくなる。だからどんどん乱暴な議論になる」。震災以降、県産品の風評払拭(ふっしょく)に取り組んでいる福島大経済経営学類教授の小山良太(41)は、他県で残る根強い風評と風化が進んでいることを実感している。放射性物質は県内外に飛散した。だからこそ「各県処分」なのに、他県では「福島の問題」と見なされる。
小山は指摘する。「(原発事故による緊急的な)事態を抑えるため、国は福島県に予算を集中させた。同時に、国内外に正しい情報を届けなければならないのに、県は積極的でも国はそう見えない。国はもっと主体的に関与すべきだ」
避難指示解除後の古里で営農を再開した田村市都路町の坪井久夫(65)は、指定廃棄物の本県への集約論に「乱暴な話だ」と憤る。風評払拭に苦労してきた経験から「いろいろな考え方があり、全ての人に理解してもらうのは難しい」というのが実感だ。ただ、現状をもどかしくも見ている。「本当に理解してもらおうとすれば『熱意』が見えるものだろう? 国からはそれが見えない」(文中敬称略)
加美町の道路脇に設置された最終処分場建設に反対するのぼり旗 |
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